中露天然ガスパイプライン東線事業には、東シベリアのチャヤンダ(Chayand)とコビクタ(Kovykta)のコンデンセートガス田開発、総延長3,000キロの「シベリアの力」(Power of Siberia)パイプラインの敷設、中国東北とロシアの国境のアムールGPP(Amur GPP)天然ガス加工施設の建設も含まれる。Kruglov氏によると、チャヤンダガス田は東線事業第1フェーズの資源的基礎になり、将来的に年間380億m3の供給量を実現する。そして、東線事業第2期はコビクタコンデンセートガス田に接続する。
ロシア天然ガス企業Gazpromは、中国石油天然ガス集団(CNPC)との間で中露天然ガスパイプライン西線事業契約の交渉はすでに成熟段階に進み、双方は間もなく基本合意に達すると表明した。
2014年5月、中露天然ガス供給契約が結ばれた。中露天然ガスパイプライン東線から最大380億m3の天然ガスを30年間中国へ供給する計画である。さらに、中露天然ガスパイプライン西線についても中露間の協議が進んでおり、合意が成立すると、中国へ年間300億m3以上の天然ガスを輸出することになる。
Gazprom副社長兼CFOのAndrey Kruglov氏は取材に対し、中露天然ガスパイプライン西線事業をめぐるCNPCとの交渉はすでに成熟段階に進んでいると表明し、遠からず実質的な結果を出すことに期待を示した。
Kruglov氏は、西線事業の契約規模は東線と同等になり、将来的にはさらに拡大すると表明し、その理由として、西シベリア天然ガス田の生産量は供給を拡大するのに十分であることを挙げた。
極東ガス輸送事業を拡張へ
中露天然ガスパイプライン東線事業には、東シベリアのチャヤンダ(Chayand)とコビクタ(Kovykta)のコンデンセートガス田開発、総延長3,000キロの「シベリアの力」(Power of Siberia)パイプラインの敷設、中国東北とロシアの国境のアムールGPP(Amur GPP)天然ガス加工施設の建設も含まれる。Kruglov氏によると、チャヤンダガス田は東線事業第1フェーズの資源的基礎になり、将来的に年間380億m3の供給量を実現する。そして、東線事業第2期はコビクタコンデンセートガス田に接続する。
Kruglov氏によると、GazpromとCNPCはパイプラインの建設をそれぞれ推進しており、ロシア国内では700キロの溶接作業が完了し、500キロ余りの敷設が完了した。2019年5月〜2021年5月の間にガス輸送を開始する計画であり、開始から5年以内に380億m3の設計上の輸送量を実現する。Gazpromの説明によると、ガス輸送開始時期は、以前発表されていた2018年から若干遅れる。契約調印から全ての許認可手続きを終えるのに約1年かかるからである。
中露間の天然ガス供給をめぐる協力は極東地区でも拡大される見込みである。今年2月中旬、Gazpromのミレル社長(Alexey Miller)が北京を訪問した際、CNPCの王宜林董事長(会長)と、ロシア極東地区のサハリンガス田からパイプラインによって中国へ天然ガスを供給する可能性について検討した。両社は2月に基本協力合意に達し、詳細についてはなお討議中であるとのことである。 Kruglov氏は、同事業のガス供給規模は未だ確定できないと表明した。
中国の2020年の天然ガス消費量は3,600億m3に達し、エネルギー消費に占める天然ガスの比率は2014年の6%足らずから10%前後に上昇することになる。2020年にはロシアから輸入する天然ガスが中国の天然ガス消費量の2割以上を占めることになる。
「アジア太平洋市場はますます重要になりつつある。この地域は我々にとって戦略的意義を備えている」とKruglov氏は強調する。
過去数十年にわたり、Gazpromの営業収入は主に欧州諸国への天然ガス輸出によるものであった。しかし、天然ガス輸出の重心はアジア太平洋地区へシフトし始めている。2009年、Gazpromは初めてアジア市場に参入し、サハリンガス田から日本や韓国等へLNGを供給することになった。中露天然ガスパイプラインが開通するまでは、「サハリン2」事業がGazpromのアジア太平洋地区への唯一のガス源であり続ける。「サハリン2」は3本目の生産ラインを拡充する計画であり、完成後に増加する生産能力の一部を上掲の極東パイプラインによって中国へ輸送し、また、一部は海路によってLNGをアジア太平洋のその他の国へ供給する公算である。
Gazpromの発表した資料によると、親会社のPJSC Gazpromは2017年の合計9,110億ルーブル(約1,081億元)の資本支出のうち、東線事業に関連するチャヤンダとコビクタガス田、ガスパイプライン及びアムールGPP天然ガス加工施設の資本支出を35%以上とする計画である。さらに2025年には、Gazpromの天然ガス事業の資本支出の3分の1以上が東シベリアと極東地区に充てられることになる。
香港での上場も検討
Gazpromの未曾有の大型パイプラインガス事業はアジア太平洋地区の協力パートナーや投資家からますます注目を集めている。Kruglov氏は「総数はまだ大きくないが、この4年間でGazpromのアジア地区の投資家の数は2倍に増えた」と述べた。
「GazpromとCNPCの協力は、投資や金融分野も含め、Gazpromのアジア太平洋における長期的発展の基礎になる。そのため、地域の金融機関や投資家との対話を推進したい」とKruglov氏は言う。
Kruglov氏によると、Gazpromはアジアをリードする株式市場に上場して株式を増発することをなお模索している。「我々はこの件について香港証券取引所と意見交換を重ねた」とKruglov氏は言う。
さらに、Kruglov氏は、Gazpromと中国の協力パートナーの間で多くの業務往来があるので、中国の投資家は業務について容易に理解できると確信していると指摘し、「この件については早い時期に上海証券取引所とも接触したことがある。しかし、今では上海と香港証券取引所の相互取引の仕組みができ、Gazpromは香港市場によって中国本土やアジア太平洋地区の投資家と接触できるようになった」と述べた。
もっとも、外部環境は変化が続いている。Kruglov氏は具体的な上場のタイムスケジュールを示すことは出来ないと表明したが、「不利な要素は存在するものの、アジア太平洋地区のいずれかの株式市場に上場する可能性はまだあると考えている」と述べた。
株式による資金調達だけでなく、Gazpromはアジアの投資家が提供する融資への依存を深めている。Gazpromの資料によると、Gazpromの2016年の新規借入金の52%はアジアの銀行が提供したものである。例えば、2016年3月には中国銀行が5年間、20億ユーロの融資をGazpromに行うことで合意した。
Kruglov氏は次のように強調した。Gazpromは未だ経済制裁の影響を受けておらず、当面の政治環境によるリスク要因もGazpromの正常な経営には影響していない。Gazpromは株主の利益を保護するため、特殊な措置を講じて、Gazpromと第三者との契約があらゆる監督管理の要件に合致することを保証する。
(21世紀経済報道 3月16日)