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【エネルギー全般・政治経済】

中国 電気自動車の電力が石炭火力発電で何か問題でも? (17/09/13)
2017/9/13
中国【エネルギー全般・政治経済】

 先日、工業情報化部が燃油車退場のタイムスケジュールについて検討を開始したことを明らかにするや瞬く間に広範な論議を呼び、シノペックのソーシャルサイトでも電気自動車時代が到来するとガソリンスタンドは閉店するのかが議題になった。

 交通の電動化が大きな流れになると考えている人は極めて多い。技術の進歩に伴って、電気自動車が燃油車に取って代わるのは必然の流れになるというものである。当然ながら、異なる意見も多い。ガソリン時代が終了するにしてはるか遠い未来の話であり、蓄エネルギー技術の欠陥や電気自動車の低効率ではガソリン車に太刀打ちできないと考える人もいる。

 もう1つの争点は電気自動車の電気はどこから来るのかという問題である。電気自動車に反対する人は、今後も長期にわたって電気は化石エネルギーに由来し、電気自動車を普及しても、発電という汚染源をそのままにであり、自動車の電動化は実際には汚染物やCO2の排出を減らすことにはつながらないと考えている。

 確かに中国の電源構造の中で石炭火力発電の比率は依然として65%を超えており、一方、水力発電、風力発電、ソーラーや天然ガス発電は合計しても3分の1にもならない。こうした状況で、電気自動車を発展させることに意義はあるのだろうか?。

 答えは当然イエスである。たとえ電力が全て石炭火力発電によるものであったとしても、電気自動車の普及の意義は依然重大である。

 (1) 石炭火力発電の汚染物は収集可能だが自動車の排ガスは収集不可能

 10億kWの石炭火力発電設備が中国で最も大きい汚染源の1つであることは疑問の余地がない。大量の粉塵、二酸化硫黄や窒素酸化物の排出はスモッグを形成する主要な原因であり、巨大なCO2排出は国際的にも中国の低炭素化にとって巨大な圧力になる。

 しかしながら、分散して収集が容易でない自動車の排ガスと比較すると、電力というクリーン・エネルギーの使用はやはり多くの面で優位に立っている。

 都市の汚染物の構成比の中で30%以上は自動車の排ガスである。北京のように火力発電所をなくした都市では50%以上が自動車排ガスになる。大量の燃油車に電気自動車が取って代わることになれば、都市の大気は大幅に改善される。

 一方、分散する自動車の排ガスと比べた場合、石炭火力発電の排出物は収集可能であり、集中処理を行うことも出来る。今や火力発電の汚染物に対する規制は極めて厳正であり、大型石炭火力発電設備の殆どは排出の面で天然ガス発電よりも優れている。

 これに対し、燃油車の排ガスは収集と集中処理が不可能であり、大気中に放出するしかない。

 加えて、大型火力発電設備は徐々に石炭資源が豊富な西部地区に移転しつつある。西部地区は広大で人口が少なく、汚染物拡散の条件は人口密度の高い地区よりも優れている。さらに、超高圧(UHV)など送電技術の進歩にともない、電気自動車用の石炭火力発電は都市の大気管理にとっては有効である。

 (2) 新エネルギーの発展は日進月歩 電気自動車が全てグリーン電力を使うようになるのも夢物語ではない

 中国のエネルギー構造は今のところ化石エネルギーが中心であり、発電電力量の中で石炭火力発電が多くを占めている。しかしながら、近年、中国のエネルギー構造は年々最適化が進み、新エネルギーが日進月歩の勢いで発展していると言っても過言ではない。

 簡単な統計を見る限りでも、2010年の中国の再生可能エネルギー設備は、水力発電2.1億kW、風力発電4,473万kW、太陽光発電がわずか90万kWであったが、2016年には、水力発電3.3億kW、風力発電1.5億kWになり、太陽光発電に到っては8,000万kWになった。わずか6年の間で、水力発電は57%増え、風力発電は3倍、太陽光発電は88倍になったのである。

 将来的にも再生可能エネルギー発展の余地は巨大であり、特に分散型エネルギーが大幅に普及して、ますます多くのグリーン電力が供給されることになり、電気自動車用の新エネルギー電力も増える。エネルギー構造の中でグリーン電力が主流を占め、全ての電力をグリーン電力にすることさえも決して夢物語ではない。

 (3) 電力産業の「ブラックテクノロジー」が次々と輩出し蓄エネルギー技術がブレークスルー

 電気自動車にとって最大のボトルネックは航続距離が十分でないことと充電に時間がかかることである。また、充電インフラは整っておらず、消費者は航続性に不安を感じている。

 しかしながら、技術の進歩を阻むことは出来ない。航続距離を制約する蓄エネルギーについては、先進的でコストも低い蓄エネルギー方式は未だブレークスルーを遂げていないが、近年、様々な技術が輩出されている。たとえ蓄エネルギーでブレークスルーがなかったとしても、ワイヤレス充電や水素エネルギーといった面で巨大な進歩を実現できれば、最終的に燃油車からの転換が可能になる。

 (能源雑誌 9月13日)