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【エネルギー全般・政治経済】

燃油車販売禁止は必然的流れも問題は山積 中国は総合的計画が必要 (17/09/20)
2017/9/20
中国【エネルギー全般・政治経済】

 辛国斌工業情報化部副部長は9月9日、天津で開催された2017中国自動車産業発展国際フォーラムで講演し、中国政府が従来型燃油車の生産と販売を停止する時間表の検討を開始したことを明らかにした。中国に先立って、インド、ノルウェー、フランス、イギリスが、燃油車を徐々に淘汰して電気自動車やハイブリッド車に取って代わらせると宣言している。ノルウェーが設定した最終期限は2025年であり、インドは2030年、英仏は2040年である。

 自動車の電動化は今や世界的な流れになっており、2030年には新エネ車の販売規模は2,000万台を超え、2040年には約40%を占めるだろう。

 しかしながら、中国が燃油車の販売を禁止すべきかどうかは、国情を見る必要がある。

 第1に、エネルギーの視点から、中国の石油対外依存度は極めて高く、戦略リスクが非常に大きい。国産石油は急増する消費需要に追い付くことが出来ず、2015年の不足は800万B/Dに達している。不足分は輸入原油によって補わなければらなず、そのため、中国の石油対外依存度は2009年に初めて50%の警戒ラインを突破し、2016年には65.5%に上昇した。2〜3年内には70%の大台に乗る公算である。これほど高い依存度は、国の安全にとって大きな脅威と言える。単一的なエネルギー消費構造を改めることが不可欠である。さらに、従来型燃油車の深刻な排ガス問題もあり、自動車産業の技術変革が求められる。中国が燃油車の販売を禁止する必要性は極めて高い。問題はいつ禁止するかである。

 燃油車販売禁止の時期については殊の外慎重にしなければならない。自動車産業はすでに中国の基幹産業の1つになっており、生産高はGDPの10%を占めている。しかも、冶金、紡績、電子など種々の産業の発展を牽引し、就業者は4,000万人以上を占め、影響は全体に及ぶ。そのため、販売禁止の時期については、供給側、需要側、消費側の視点から全般的に勘案することが必要であり、どの1つも欠けてはならない。

 (1) 供給側

 新エネ車が燃油車に全面的に取って代わるためには、政策ファクターを除けば、燃油車と同等の製品競争力に達する必要がある。この客観的条件を軽視すれば、リスク拡大の禍根を残すことになる。

 製品の見地からは、新エネ車が従来型燃油車と競争するためには、航続距離、充電時間、耐久性、製品コストの4つの面で拮抗しなければならない。ピュアEVについては、中核は依然として電池にあり、現在の電池の総合技術水準ではエンジンに太刀打ち出来ない。

 一般に電池のエネルギー密度は現在の110Wh/kgから、2030年には350Wh/kgへと大幅な上昇を実現し、コストも800元/kWh(現在は2,000元)に下がるというのが大方の見方である。

 350Wh/kgの目標を達成すると、600〜800キロの航続距離も実現出来るが、電池システムのコストは約2.5万元になり、モーター、充電時間、耐久性も勘案すると、2030年になってもピュアEVが従来型燃油車を完全に超えることは難しい。供給側から見て、2035年が分岐点になるかもしれないが、それさえも楽観的観測である。

 また、燃料電池乗用車については、現在の動力システムのコストは約37,000ドルであり、ピュアEVの3倍になる。これも2030年に大規模な代替を実現することは難しい。

 こうして見て来ると、ピュアEVであれ、燃料電池車であれ、従来型燃油車と張り合えるのは早くとも2030年以降になる。また、当面の生産能力と生産資料の点から見て、従来型燃油車は依然99%のシェアを占めており、たとえ計画に従って、2030年までに従来型燃油車の生産力と生産資材の50%以上が転換されるとした場合、転換に際して大規模な資源浪費と失業問題が付きまとう。この点については政府も心配しなければならない問題である。そのため、供給側から見た場合、2030年に燃油車の販売を全面的に禁止することは妥当でなく、時期をもっと後にずらす必要がある。

 (2) 需要側

 《省エネ車・新エネ車技術ロードマップ》は2030年の自動車販売の40〜50%を新エネ車にする計画を提示しており、2030年の新エネ車の生産販売規模は1,500〜1,800万台になる。

 産業発展の一般的な規律に基づくなら、ライフサイクルは通常、萌芽期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階に区分される。

 導入期の終了は一般に新しい事物のシェアが1%を突破することがメルクマールになり、こうした特徴は中国の新エネ車産業においてすでに顕現している。成熟期(ピーク)の特徴は新しい事物のシェアがほぼ100%になることであり、規律曲線と2030年の新エネ車シェア40〜50%の目標を結び付けると、成熟期は2030年から10年後になる。すなわち、2040年が成長期と成熟期の分岐点になる。

 (3) 受入れ環境側

 供給側と需要側では単にクルマとヒトの視点から問題を考察したが、受入れ環境条件も軽視することは出来ない。新エネ車の使用環境と最も密接に関連するのは充電インフラである。最新統計によると、2017年8月末時点で中国の公共充電パイルとプライベート充電パイルの数は18万本に達し、自動車と充電パイルの比は5.5:1になる。一方、単位時間内の従来型燃油車と給油口の数量の比はすでに1:1の水準に達している(智電汽車前期研究週報《インフラチェーンの徹底した開通なくして新エネ車産業の未来はない》参照)。この水準に準じるならば、中国の自動車販売量のピークを4,500万台/年とした場合、充電パイルの数も新エネ車保有量と横並びにする必要がある。

 2030年の新エネ車販売量1,710万台、保有量8,000万台を基準とし(ロードマップの数値)、2030年以降の成長期〜成熟期の平均増加率を10%(2016〜2030年は約28.6%)として試算すると、新エネ車販売量がほぼ4,500万台になった時に全国の新エネ車保有量は2.5億台前後に達し、廃車になった分を差し引いても、保有量は少なくとも2億台になる。

 1:1の比率に従うなら、所要の充電パイルは2億本になる。2020年の国の計画量でもようやく500万本である。不足は極めて大きく、膨大な資金を要する。その上、これほど膨大な充電パイルを建設することになれば、電力グリッドに対する負荷や改修、CNPCやシノペックの業態転換などにとっても厳しい試練になる。

 南方電網科学研究院の関係者の試算によると、緩速充電方式の場合で充電負荷は最大13.4kWになり、急速充電方式の場合、10.1kWになる。すなわち、10万台の電気自動車に対応するためには、電力グリッド負荷を最高14万kWとして設計しなければならない。2億台の新エネ車になると、所要の電力グリッドの負荷は2,000×14万kW=2億8,000万kWになり、電力グリッドにとって非常に大きなチャレンジになる。

 その他に電力供給量についても考慮しなければならない。電気自動車1台当たりの年平均電力消費を2,000kWhとして計算すると、2億台の1年間の電力消費は4,000億kWhになる。IEAの《2016年世界エネルギーアウトルック》の予測によると、中国の2040年の発電電力量は1兆150億kWhになり、中国の発電電力量の40%を新エネ車が消費することになる。

 中国電力企業聯合会が発表した《2016年度全国電力需給情勢分析予測報告》によると、2015年の都市農村民生用電力消費の割合はわずか13.1%であったが、それが40%に急激に上昇して、電力消費構造のバランスを突き崩す可能性が極めて高い。

 それゆえ、受入れ環境の見地から、電力設備と電力容量の平穏な移行を保証するためにも、燃油車販売の全面禁止時期を2040年以降に設定すべきである。

 以上、供給側、需要側、環境側の発展状況を総合的に検討した上で、以下のように建議する。

 (1) 燃油車販売禁止政策の策定と推進には賛同するが、時期については適切に考慮しなければならない。

 (2) 燃油車の販売禁止は様々な方面に影響が及ぶ。技術の更新や受入れ環境の見地から、2030年の販売禁止はあまりにも性急過ぎる。

 (3) 燃油車の販売禁止の時期は2040〜2050年に設定するのが比較的妥当であるが、具体的な時期についてはさらに研究と詳細な論証を進めなければならない。

 (4) 燃油車販売禁止は全局に影響を及ぼす。販売禁止に先立ち、既存の生産要素や残された問題を総合的に考慮に入れ、充電インフラと電力グリッドの容量と改修、グレードアップを前倒ししなければならない。そうしないと、電気自動車の適正な生存環境を確保することは難しい。

 (第一電動網 9月20日)