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中国の車載電池企業に再編時代が到来 (17/12/19)
2017/12/19
中国【新エネルギー】

 「双積分」政策(省エネ車・新エネ車ポイント制度)が間もなく実施され、燃油車の生産と販売の禁止が政策レベルで日程に上り、車載電池企業にとっても希望が膨らむ。しかし、その一方で中国の車載電池産業は構造的な生産能力過剰、原材料価格の高騰、電池価格引き下げ圧力といった問題に直面せざるを得ない。先日汕頭で開催された第5回リチウム電池「ダボス」会議で、業界関係者はこうした議題について検討を進めた。

 生産能力の急拡大

 今年のリチウム電池市場の構造を概観すると、2つの際立った変化が目に付く。第1に投資と生産の拡大、合併再編のトレンドの下で大手企業間の競争が激化していることである。第2に車載電池分野で三元系リチウム電池の利用が大幅に増えたことである。

 IPOに着手した寧徳時代(CATL)の時価総額は過去半年間で高騰し、1,000億元を突破した。

 時価総額1,000億元を超えるBYDも戦略の調整に着手し、電池部門を分離して、業務の市場化を進める計画である。さらに国際市場の開拓を強化し、米国に単独出資による初の電動バス工場を建設する。

 力神電池は「双百億」目標、すなわち生産能力100億Wh、売上100億元超とする目標を立てた。

 比克電池は11月、143億元投じて山東省済寧経済開発区に比克産業パークを建設する計画を明らかにした。

 生産拡大と生産能力過剰に伴い、業界再編の動きも慌ただしい。「大量の資本が流れ込んで、現在、多くの産業に過剰が発生している」とリチウム電池「ダボス」会議学術委員会委員長を務める其魯直北京大教授は指摘する。

 リチウム電池「ダボス」会議学術委員会の墨柯事務局長によると、今年1〜10月のリチウム電池累計設置容量は18.1GWh、前年同期比31.43%増加した。

 今年リチウム電池の有効供給を行ったのは76社であり、通年で80社前後になる見通しである。業界関係者によると、昨年は109社であり、30社はこの冬を乗り切ることが出来ず、業界再編はすでに開始されている。

 中国電池研究院院長であり中関村新型電池技術イノベーション連盟理事長の呉輝氏によると、今年第3四半期時点で中国の車載電池企業上位20社の生産能力は合計102.2GWhで、リチウム電池設置容量をはるかに超えている。生産能力の過剰は疑う余地がない。「将来の車載電池産業に生き残れるのは限られた企業だけだ」と呉輝氏は言う。

 加えて、新しい新エネ車補助金政策の影響でエネルギー密度の高い三元系リチウム電池が今年爆発的に成長し、車載電池分野で三元系はすでに主流になっている。

 墨柯氏によると、1〜10月のリチウム電池設置容量18.1GWhの中で三元/マンガン系電池が9.96GWh、55.03%を占め、うちマンガン酸リチウム電池は0.9GWh足らずであった。リン酸鉄リチウム電池は7.88GWhで、43.51%、1〜9月の44.27%に比べてやや下がった。

 寧徳時代(CATL)、BYD、国軒高科など大手リン酸鉄リチウム電池企業はいずれも三元系リチウム電池の生産能力を増やしている。BYDの発表によると、すでにプラグインハイブリッド車の全てに三元系電池を採用し、今後は乗用車でもプラグインハイブリッド車とピュアEVに三元系を徐々に使用する計画である。

 コスト引き下げに向けて様々な措置を並行

 今年は新エネ車補助金引き下げの影響で電池企業は大きな圧迫を受け、いかにしてコストを引き下げるかが、リチウム電池「ダボス」会議でも大きな議題になった。青島藍科途膜材料有限公司の楊波総経理(社長)は「電池コストを引き下げるには必然的に材料コストの低減から手を加えなければならない」と述べた。

 深圳時代高科の田漢溶董事長(会長)は、企業のコスト引き下げは長期的な仕事になり、方法は様々であるが、最も重要なのはやはり大規模化であるとの見方を示した。「長期的な技術投資を堅持し、生産の大規模化を検討し、収益を高める。同時に産業チェーンの川上と川下のウィン・ウィンの協力を形成して、長期的、持続的な良性循環を形成しなければならない」と田漢溶董事長は述べた。
 
 高止まりする電池材料価格については、広東猛獅新能源の李青海副総裁は、企業が電池を生産する上で「材料価格が高いか低いかは恐れるに足りない。最も心配なのは不安定であることだ。突然の高騰や突然の下落は電池企業にとって受け入れ難い」と述べ、国家レベルあるいは産業レベルにおいてコバルト、銅、ニッケル、リチウムの備蓄市場を確立することで価格を安定させ、産業の健全な発展に寄与すべきであると提言した。

 リサイクル市場に大きなポテンシャル

 新エネ車の発展によって必然的に大量の廃棄電池が発生する。リサイクルを適正に進め、産業チェーンの循環を実現することは当面の電池産業の課題になる。リサイクルは資源不足を解決する有効な方法の1つであり、とりわけ三元系材料価格が高騰する中で、リサイクルの価値が見直されている。

 但し、呉輝氏によると、電池リサイクル産業は未だ本格化しておらず、その背景には主に経済性の問題があると指摘する。「新エネ車が大量生産を開始したのはここ2、3年だ。大量の廃棄電池の淘汰は2018〜2019年になる。電池リサイクル企業にとって、2019年が収益分岐点になる。電池工場やモーター工場の大多数はリサイクルは負担になると考えているが、実際には金を儲けるチャンスになる」と呉輝氏は言う。

 遠東福斯特新能源の蔡棟総経理はリサイクル市場のポテンシャルに期待している。蔡棟総経理によると、今後、車載電池が急速に成長すると、リサイクルの生産高は100億元クラスに達する可能性もある。また、資源リサイクルに比べ、廃棄電池の最大の価値は、蓄エネルギーや歩行補助器などの段階的利用によって発揮される。こうした市場は廃棄した車載電池に対する需要が大きく、ポテンシャルを掘り起こす余地は大きい。

 今のところ、リサイクルの経済性は低く、企業は前向きではないのが現状である。この点について、深圳雄韜電源の総工程師である衣守忠氏は、「政府は今の段階から、課税や財政補助など支援政策を適用すべきだが、長期的にはやはり技術進歩によって解決することが必要になる。将来的には、国は応分の標準を制定し、回収価値のない電池システムの生産を許可しないようにすべきだ」と提言した。

 衣守忠氏はさらに、リチウム電池のリサイクル技術の研究開発と応用を強化するだけでなく、電池の設計や生産工程においても事後のリサイクルを考慮に入れなければならないと提言した。

 (中国能源報 12月19日)