中国石油天然ガス股フェン公司(PetroChina)の株価が暴落している。3月20日にPetroChinaが年次報告を発表してからわずか4営業日後には、20元を割り込み、最高値48元であったのが、3月27日の時点で16.94元にまで下がって、発行価格の16.70元まで目前に迫っている。 PetroChinaの株価暴落は、業績が市場の予想を下回ったためであると言われている。確かにその通りであるが、問題はなぜ予想を下回ったかということにある。 2007年のPetroChinaの売上高は8兆3,503.7億元、前年比21.2%増となったが、純益は1,345.74億元で、前年比1.2%の減益となった。1株当たりの利益は0.73元である。一方、同社の総資産は22%、純資産は25.1%増えた。売上や資産が2割以上増えたにも関わらず、純益が増えるどころかむしろ減少したことに、市場が嫌気したことは間違いない。 PetroChinaの業務分野は、石油採掘、製油、化学工業、天然ガスの4つに分けられるが、石油採掘と製油が主要業務に当たる。2007年度年次報告によると、石油採掘部門は、売上高4.55兆元、純利益2.24兆元で、純利益率は49.2%に上った(純利益率は2006年の57.4%に比べ8.2ポイント下がった)。一方、製油部門は売上高6.62兆元であるが、純利益はわずか2.556億元、純利益率は3.9%となった。2007年度の営業利益1,940億元のうち、石油採掘部門が2,066億元、化学工業部門が78.31億元、天然ガス部門が124.95億元であったが、製油部門はマイナス207億元となった。すなわち、PetroChinaの業績が失望を買ったのは、主に製油部門の赤字である。その上、年次報告によると、PetroChinaの昨年原油生産量の伸びはわずか1%であり、同部門の売上が11%増えたのは、原油価格高騰のおかげである。さらに、石油製品需要が大幅に拡大したため、PetroChinaの製油業務は24%増加したものの、製油部門の赤字は2006年の290億元に比べわずか80億元余りしか減らなかった。 問題の所在は明らかである。つまり、すべてが計画的指導の招いた結果である。周知のごとく、政府はCPIの上昇を抑えるため、石油製品価格に対する統制を続けている。PetroChinaの年次報告でも言及されているように、2007年の国内石油製品価格は国際市場価格をはるかに下回っていた。例えば、ガソリンの平均出荷価格は5,071元、軽油は4,653元であったが、それに比べ、シンガポールのガソリンCIF価格は1,225元、24%も低く、軽油は1,513元、32.5%低かった。因みに軽油の内外価格差の方がより大きいため、赤字もその分大きくなり、当面の軽油逼迫の原因となっている。PetroChinaの精製する石油製品の約80%は同社の採掘したものであり、中国石油化工(SINOPEC)に比べると、当然ながらコストは低い。SINOPECの場合、製油業務がPetroChinaよりも大きいため、必然的に製油部門の赤字も一層大きくなる。SINOPECが国庫から123億元の助成を受けながら、PetroChinaが助成を受けていない理由はその辺りにある。 PetroChinaにとって(SINOPECにとっても)今は板挟みの境地にある。2007年度の業績は芳しくないとはいえ、結局、純利益は1,300億余りにまで達している。原因は他でもない、PetroChinaが中国の油田の80%以上を有しているからである。しかし、これらは本来全国民の資産であったのが、(国家が株式の86.29%を有しているとはいえ)今ではPetroChinaの株主の資産になっている。これこそが、PetroChinaが暴利を貪る独占企業として度々非難される所以である。一方、PetroChinaは企業として、市場原理に則ることを看板にしているが、企業はそもそも石油製品価格決定権を有していない。政府が経済を安定させ、消費者物価の上昇を抑制するための政策的な赤字こそがPetroChinaの業績を悪化させ株価暴落を招いているのであるが、これは、PetroChina最大の株主である国にとっても得策とは言えまい。 (環球能源網 3月27日)
中国石油天然ガス股フェン公司(PetroChina)の株価が暴落している。3月20日にPetroChinaが年次報告を発表してからわずか4営業日後には、20元を割り込み、最高値48元であったのが、3月27日の時点で16.94元にまで下がって、発行価格の16.70元まで目前に迫っている。
PetroChinaの株価暴落は、業績が市場の予想を下回ったためであると言われている。確かにその通りであるが、問題はなぜ予想を下回ったかということにある。
2007年のPetroChinaの売上高は8兆3,503.7億元、前年比21.2%増となったが、純益は1,345.74億元で、前年比1.2%の減益となった。1株当たりの利益は0.73元である。一方、同社の総資産は22%、純資産は25.1%増えた。売上や資産が2割以上増えたにも関わらず、純益が増えるどころかむしろ減少したことに、市場が嫌気したことは間違いない。
PetroChinaの業務分野は、石油採掘、製油、化学工業、天然ガスの4つに分けられるが、石油採掘と製油が主要業務に当たる。2007年度年次報告によると、石油採掘部門は、売上高4.55兆元、純利益2.24兆元で、純利益率は49.2%に上った(純利益率は2006年の57.4%に比べ8.2ポイント下がった)。一方、製油部門は売上高6.62兆元であるが、純利益はわずか2.556億元、純利益率は3.9%となった。2007年度の営業利益1,940億元のうち、石油採掘部門が2,066億元、化学工業部門が78.31億元、天然ガス部門が124.95億元であったが、製油部門はマイナス207億元となった。すなわち、PetroChinaの業績が失望を買ったのは、主に製油部門の赤字である。その上、年次報告によると、PetroChinaの昨年原油生産量の伸びはわずか1%であり、同部門の売上が11%増えたのは、原油価格高騰のおかげである。さらに、石油製品需要が大幅に拡大したため、PetroChinaの製油業務は24%増加したものの、製油部門の赤字は2006年の290億元に比べわずか80億元余りしか減らなかった。
問題の所在は明らかである。つまり、すべてが計画的指導の招いた結果である。周知のごとく、政府はCPIの上昇を抑えるため、石油製品価格に対する統制を続けている。PetroChinaの年次報告でも言及されているように、2007年の国内石油製品価格は国際市場価格をはるかに下回っていた。例えば、ガソリンの平均出荷価格は5,071元、軽油は4,653元であったが、それに比べ、シンガポールのガソリンCIF価格は1,225元、24%も低く、軽油は1,513元、32.5%低かった。因みに軽油の内外価格差の方がより大きいため、赤字もその分大きくなり、当面の軽油逼迫の原因となっている。PetroChinaの精製する石油製品の約80%は同社の採掘したものであり、中国石油化工(SINOPEC)に比べると、当然ながらコストは低い。SINOPECの場合、製油業務がPetroChinaよりも大きいため、必然的に製油部門の赤字も一層大きくなる。SINOPECが国庫から123億元の助成を受けながら、PetroChinaが助成を受けていない理由はその辺りにある。
PetroChinaにとって(SINOPECにとっても)今は板挟みの境地にある。2007年度の業績は芳しくないとはいえ、結局、純利益は1,300億余りにまで達している。原因は他でもない、PetroChinaが中国の油田の80%以上を有しているからである。しかし、これらは本来全国民の資産であったのが、(国家が株式の86.29%を有しているとはいえ)今ではPetroChinaの株主の資産になっている。これこそが、PetroChinaが暴利を貪る独占企業として度々非難される所以である。一方、PetroChinaは企業として、市場原理に則ることを看板にしているが、企業はそもそも石油製品価格決定権を有していない。政府が経済を安定させ、消費者物価の上昇を抑制するための政策的な赤字こそがPetroChinaの業績を悪化させ株価暴落を招いているのであるが、これは、PetroChina最大の株主である国にとっても得策とは言えまい。
(環球能源網 3月27日)