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中国
【石油・天然ガス】

【論説】補助金は石油メジャーではなく消費者に与えよ (08/03/26)
2008/3/27
中国【石油・天然ガス】

 「補助金は石油メジャーではなく消費者に与えよ」
 アモイ大学エネルギー経済研究センター主任・林伯強

 中国石油化工(SINOPEC)は製油部門の巨額の赤字を理由に国から123億元の助成を獲得し、中国石油天然ガス集団(CNPC)は政府の石油製品価格市場化の方針に基づいて石油製品価格の引き上げを請求している。国際油価が高騰を続け、一部地区の深刻な石油不足が再発する中、今年のエネルギー政策がどうなるかに注目が集まっている。

 SINOPECに対して今回123億元の補助金が給付されることになったが、どのような形で補助金を給付するかによって、全く異なる結果が生じる。石油メジャーよりも、消費者の側に補助金を給付する方がより合理的である。消費者を助成することによって、弱者層のエネルギー料金の負担(例えばタクシー、バスや農業関連の電気料金など)をサポートし、社会の公平性を支えることが出来るとともに、石油価格の資源の希少性や環境コストを反映させてエネルギー使用効率を高めることが可能になる。

 確かに消費者に対する助成には技術的な困難が付きまとうが、持続可能な発展をめぐる問題を解決する上では支持すべきである。政府は、石油製品価格システムの改革を進める上でも、消費者に直接助成することによって、インフレ圧力を緩和するとともに、公平な負担を実現することが可能になるのである。政府は、石油製品価格を一定の水準に抑えることが必要であると考えるのなら、消費者に対する透明性の高い助成によって石油製品価格を抑制できるし、またそうすべきである。資源税や国有石油企業の収益はいずれもそのための確実な財源になるだろう。

 中国は依然として社会負担と弱者集団の問題を抱えているので、エネルギー消費に対する過渡的な助成は合理的であり、場合によっては必要でもある。政府が石油製品価格を抑えるために補助金を交付することが必要であると考えることにも道理がある。しかしながら、SINOPECに対する財政補助にはやはり問題がある。助成方式が問題なのであり、生産者に対する助成は消費効率と公平性に反する。生産者に対する助成では末端の消費に影響を与えることが出来ない。国際油価の高騰が続くにも関わらず、国内の消費が従来のままでは、消費効率の向上に役立たないのである。国有石油企業が獲得した利益を消費者に還元すべきであるが、還元するだけでは効率の原則に背くことになる。また、SINOPECという生産者に対する助成だと、本来目標とすべき消費者集団以外の手に補助金が渡ることになる。つまり、「金持ちが貧乏人の挽く車に乗る」ことになる。例えば、石油製品価格を抑えることはカー・オーナーに対する補助につながるが、今の中国でカー・オーナーは弱者集団ではない。然るに、補助金は貧乏人も含む国民全体のカネであり、クルマを持たない一般庶民のカネによってカー・オーナーに助成するのは全く不公平である。

 さらに、庶民にとっては、石油輸入で赤字が出ているからといって、毎年巨額の利益を上げている国有石油企業がなぜ石油製品価格を値上げしようとするのか、なぜ補助金を獲得しようとするのか、疑義を呈しないわけには行かない。国有石油企業が稼いでいるのは国有のエネルギー資源のおかげであり、その上、赤字を政府が負担することになれば、効率が犠牲にされ、最終的には全国民にツケが回されることになる。

 SINOPECとCNPCは国有企業であり、補助金は突き詰めれば、会計の透明化という問題に帰着する。国際油価が高騰する一方で、石油製品価格が変わらない中、国有石油企業は、一方では暴利税(石油特別収益金)を課せられて利益を吸い取られ、もう一方では政策に起因する赤字のおかげで補助金が入る。これは会計の透明性を高めるためなのである。さらに言えば、SINOPECとCNPCは行政的な独占企業であり、会計を透明にしなければ、政府は企業の効率性を客観的に計ることも、それを国際水準と比較することも出来ず、政府や市民にとっても、またSINOPECとCNPCにとっても益するところがない。

 (中国能源網 3月26日)