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EUのネットゼロ産業支援、中国依存からの脱却目指す
2024/5/6
その他地域のエネルギー

 EU域内でのネットゼロ技術の生産能力拡大という目標を達成するには、中国との競争に打ち勝つ必要がある。5月6日に発表された国際エネルギー機関 (IEA)の報告書によると、太陽光発電(PV)、バッテリー、風力発電、電解装置、ヒートポンプなどのネットゼロ技術分野への投資は昨年70%急増したが、世界の投資の4分の3を中国が占めるという。

  中国は太陽光発電モジュールの生産能力と電池生産量で世界の80%以上を占め、EV用電池の世界最大の輸出国であり、2023年には総輸出量の約70%を占めた。現在、世界の正極活物質の生産能力の90%近くを中国が握っている。正極活物質は、EVやエネルギー貯蔵システムの生産に欠かせない高品質のリチウムイオン電池を製造するための重要な電池部品である。EUと米国はそれぞれ世界の電池生産量の5%のシェアを占めるが、IEAは中国を含めたこの3地域による生産能力が2030年まで90%以上を占め続けると予想している。

  低コストや国の補助金に支えられて、中国はクリーンテクノロジー競争でトップを走り続けている。IEAの報告書によると、電池、風力、太陽光発電の製造施設は、通常、米国やヨーロッパで建設した場合、中国よりも70%から130%高くなるという。

 5月6日にパリで開かれた仏、EU、中国の3者首脳会談では、中国に対する仏とEUの厳しい姿勢が目立った。中国の習近平国家主席は、EUが警戒する中国の電気自動車(EV)などの過剰生産問題について、「中国の新エネルギー産業は気候変動問題などに大きく貢献した」と成果を強調。その上で、「比較優位と世界市場の両面から見れば、中国の過剰生産問題など存在しない」と主張した。

  一方、フォンデアライエン欧州委員長は会談後の記者会見で、「中国の電気自動車や鉄鋼など、補助金付きの製品が欧州市場に氾濫している」と指摘し、「世界は中国の過剰生産を吸収できない」と反論した。さらに、「市場へのアクセスも相互的である必要がある」と述べ、「必要があれば、我々の企業や経済を守る手段を取ることを躊躇しない」と中国側を牽制した。

  欧州議会のクリストフ・グルドラー議員は、欧州での生産促進に向けた解決策として「ネットゼロ産業法」(Net-Zero Industry Act:NZIA)に言及し、EUはこれらの戦略的技術を中国に完全に依存するわけにはいかないと述べた。同議員は「私たちは不正競争に対処しなければならない。EVや風力発電など、違法の可能性がある中国の幾つかの補助金について調査中の委員会の取り組みを称賛する」とユーロニュースに語った。

euronews.com 5月6日)