製油企業に対して補助金が交付されるたびに、非難の声が上がる。確かに補助金交付には弊害もあるが、しかし、国際油価の高騰が続く中では、唯一の選択と言って良い。 何よりも、補助金交付による弊害に比べると、石油企業の経営を継続することははるかに重要である。「石油パニック」が発生すると影響は一部に止まらず、経済成長に莫大な損失をもたらすからである。現在、製油企業は苦境に追い込まれており、油価高騰が製油企業の赤字を広げている。世界の平均油価が1バレル72.65ドルであった昨年の段階でも、中国石油化工(SINOPEC)の製油部門は136億元の赤字となった。さらに、今年第1四半期の平均原油価格は98ドルに達し、同時期のSINOPECの赤字は昨年の年間赤字額の80%に相当する104.5億元に達した。SINOPECの年間原油精製量を1.6億トンとして計算すると、今年の年間赤字は800億元に上るだろう。 専門家の推計では、もし油価が140〜160ドルに上昇した場合、現在の生産量で計算すると、国庫からの石油企業に対する補助金は1,500億元を超えることになる。しかし、この数字は中国の財政から言えば許容範囲内である。2007年の歳入は5兆1,304.03億元であり、前年比32.4%増加した。1,500億元は歳入の2.9%に過ぎない。 石油製品は重要な生産資材であり、十分な石油供給を確保することは中国経済の帰趨に関わる一大事である。国庫からの助成は必要性が極めて高い。また、別の角度から見ると、インフレは富が社会から政府に向かう流動過程でもあり、こうした状況の下では、石油企業に対して補助金を交付することはこの種の流動を解消し、社会全体にとっても有益になる。 インフレ圧力の下では、助成措置はほとんど唯一の選択である。中国の消費者物価(CPI)上昇率は、1月7.1%、2月8.7%、3月8.3%、4月8.5%に上った。石油製品は上流の資源的製品であり、上流のエネルギーと原材料価格の変動は直ちに下流の加工工業や生活資材に波及する。生産資材価格の高騰はCPIを押し上げ、原材料価格の高騰は工業コストを押し上げて、物価の全面的な上昇をもたらす。もし、石油製品価格を抑制しなければ、月々のCPIを直接押し上げることになる。CPIが上昇し、過剰流動性が高まり、国際収支のアンバランスが激化する中、中国の現在のマクロ経済が石油価格値上げによる重圧に耐えることは極めて困難である。 もう一方では、石油企業に対する補助金交付は、石油製品価格値上げの期待を消し去り、石油の買占めなど不法行為を抑制するのにも役立つ。国際油価が最高値を更新するたびに、国内の一部石油事業者は石油買占めに動く。油価の上昇が急速になると、こうした買占めの動きも強まる。油価の内外価格差が大きくなると、その埋め合わせが必要になるが、当面の手段から言えば、石油の値上げと補助金交付の2つしか方法がない。補助金が多くなることは、石油製品値上げの可能性が小さくなることを意味しており、買い占め業者は直ちに石油を市場に放出することになり、当面の石油製品逼迫の緩和につながる。 言うまでもなく、長期的な視点で見た場合、こうした助成措置はあくまでも特殊な時期の選択に過ぎず、決して最良の選択ではない。石油製品価格の変動が市場によって決定されない所以は、原油価格が国際市場と連動しておらず、国内石油製品価格が合理化されていないことにある。国際油価が上昇するたびに国内石油企業は本来、製油を拡大すべきであるが、価格が連動していないため、国際油価が高騰すると、製油企業は巨額のコストを自ら消化することが出来ず、メンテナンス名目の操業停止に走り、石油製品の逼迫を激化させているのである。 石油企業に対する助成措置は時間を稼ぐ上でも最良の選択になる。中国の昨年の7月期のCPI上昇率は6.5%、8月期は6.5%であり、今年7〜8月にはCPI上昇率は低下すると考えられる。国際油価の高止まりが続いたとしても、CPI上昇の圧力が軽減される中で、中国は対応の手段を増やすことが出来る。例えば、石油製品を適度に値上げして、圧力の一部を解消しつつ、補助金も交付して圧力をさらに減殺するなどである。さらに、CPI上昇率が比較的急速に低下した場合は、石油製品値上げによって、石油企業のコスト圧力を全て解消し、製油所の正常な生産を確保することも可能になるかもしれない。 (上海証券報 5月27日)
製油企業に対して補助金が交付されるたびに、非難の声が上がる。確かに補助金交付には弊害もあるが、しかし、国際油価の高騰が続く中では、唯一の選択と言って良い。
何よりも、補助金交付による弊害に比べると、石油企業の経営を継続することははるかに重要である。「石油パニック」が発生すると影響は一部に止まらず、経済成長に莫大な損失をもたらすからである。現在、製油企業は苦境に追い込まれており、油価高騰が製油企業の赤字を広げている。世界の平均油価が1バレル72.65ドルであった昨年の段階でも、中国石油化工(SINOPEC)の製油部門は136億元の赤字となった。さらに、今年第1四半期の平均原油価格は98ドルに達し、同時期のSINOPECの赤字は昨年の年間赤字額の80%に相当する104.5億元に達した。SINOPECの年間原油精製量を1.6億トンとして計算すると、今年の年間赤字は800億元に上るだろう。
専門家の推計では、もし油価が140〜160ドルに上昇した場合、現在の生産量で計算すると、国庫からの石油企業に対する補助金は1,500億元を超えることになる。しかし、この数字は中国の財政から言えば許容範囲内である。2007年の歳入は5兆1,304.03億元であり、前年比32.4%増加した。1,500億元は歳入の2.9%に過ぎない。
石油製品は重要な生産資材であり、十分な石油供給を確保することは中国経済の帰趨に関わる一大事である。国庫からの助成は必要性が極めて高い。また、別の角度から見ると、インフレは富が社会から政府に向かう流動過程でもあり、こうした状況の下では、石油企業に対して補助金を交付することはこの種の流動を解消し、社会全体にとっても有益になる。
インフレ圧力の下では、助成措置はほとんど唯一の選択である。中国の消費者物価(CPI)上昇率は、1月7.1%、2月8.7%、3月8.3%、4月8.5%に上った。石油製品は上流の資源的製品であり、上流のエネルギーと原材料価格の変動は直ちに下流の加工工業や生活資材に波及する。生産資材価格の高騰はCPIを押し上げ、原材料価格の高騰は工業コストを押し上げて、物価の全面的な上昇をもたらす。もし、石油製品価格を抑制しなければ、月々のCPIを直接押し上げることになる。CPIが上昇し、過剰流動性が高まり、国際収支のアンバランスが激化する中、中国の現在のマクロ経済が石油価格値上げによる重圧に耐えることは極めて困難である。
もう一方では、石油企業に対する補助金交付は、石油製品価格値上げの期待を消し去り、石油の買占めなど不法行為を抑制するのにも役立つ。国際油価が最高値を更新するたびに、国内の一部石油事業者は石油買占めに動く。油価の上昇が急速になると、こうした買占めの動きも強まる。油価の内外価格差が大きくなると、その埋め合わせが必要になるが、当面の手段から言えば、石油の値上げと補助金交付の2つしか方法がない。補助金が多くなることは、石油製品値上げの可能性が小さくなることを意味しており、買い占め業者は直ちに石油を市場に放出することになり、当面の石油製品逼迫の緩和につながる。
言うまでもなく、長期的な視点で見た場合、こうした助成措置はあくまでも特殊な時期の選択に過ぎず、決して最良の選択ではない。石油製品価格の変動が市場によって決定されない所以は、原油価格が国際市場と連動しておらず、国内石油製品価格が合理化されていないことにある。国際油価が上昇するたびに国内石油企業は本来、製油を拡大すべきであるが、価格が連動していないため、国際油価が高騰すると、製油企業は巨額のコストを自ら消化することが出来ず、メンテナンス名目の操業停止に走り、石油製品の逼迫を激化させているのである。
石油企業に対する助成措置は時間を稼ぐ上でも最良の選択になる。中国の昨年の7月期のCPI上昇率は6.5%、8月期は6.5%であり、今年7〜8月にはCPI上昇率は低下すると考えられる。国際油価の高止まりが続いたとしても、CPI上昇の圧力が軽減される中で、中国は対応の手段を増やすことが出来る。例えば、石油製品を適度に値上げして、圧力の一部を解消しつつ、補助金も交付して圧力をさらに減殺するなどである。さらに、CPI上昇率が比較的急速に低下した場合は、石油製品値上げによって、石油企業のコスト圧力を全て解消し、製油所の正常な生産を確保することも可能になるかもしれない。
(上海証券報 5月27日)