全人代常務委員会で審議中の「循環経済法」について、全人代環境資源保護工作委員会の馮之浚副主任は、以下のように法案の説明を行った。 法案提出の背景 中国は80年代以降高度成長を続け大きな成果を上げたが、一方では巨大な資源と環境の代償を支払うことになった。鉄鋼、セメントなどエネルギー多消費産業は製品単位当たりのエネルギー消費が先進国よりも20%高く、鉱物資源回収率、木材総合利用率は先進国よりも20%以上低い。また、総生産量に占める再生資源利用量の比率も先進水準に比べ著しく低い。こうした問題は中国の今後の発展を制約することになる。循環経済を推進することによって解決を図らなければならない。 循環経済とは? 循環経済とは、生産、流通、消費の各過程における減量化、再利用、資源化活動の総称であり、省資源と循環利用の総称でもある。 循環経済は持続可能な発展を推進する優先方式の一種である。従来の直線的成長モデルではなく、「資源−製品−再生資源」と「生産−消費−再循環」のモデルによって資源を有効に利用し、環境を保護するものであり、最小のコストで大きな経済、社会、環境収益を実現する。循環経済は経済発展と資源・環境の矛盾を解決する有効な方法となる。すなわち、省資源・環境保護と経済発展・社会の進歩とを有機的に結びつけ、資源と環境によって経済発展を支え、一方、経済発展によって省資源と環境改善を支えて、持続可能な発展戦略に適した良性循環を実現するのである。 循環経済法の原則 (1) 減量化優先 先進諸国の循環経済が一般に廃棄物のリサイクルを重視するのに対し、中国の循環経済法は減量化優先を原則とする。工業の高度成長段階にある中国は、エネルギーと資源の過度の消費が深刻であり、減量化、すなわち資源の高効率の利用と節約の余地が極めて大きいからである。 (2) 循環経済計画制度の確立 県クラス以上の地方政府は、経済社会発展計画、地域計画や都市・農村建設計画、科学技術発展計画を策定する場合、循環経済の目標と要請を明確化し、さらに資源産出率、廃物再利用率や資源化率など、具体的な目標を明確に打ち出さなければならない。 (3) 総量規制制度の確立 同法案は、「県クラス以上の地方政府は、上級政府が制定した所轄行政区域の主要汚染物総量規制指標と建設用地、生産用水総量規制指標、所轄行政区域の産業構造調整計画に基づいて、循環経済を推進しなければならない」と規定し、また、建設事業が所轄行政区域の総量規制指標に適合するよう求めている。 (4) 生産者責任制度の拡大 生産者の責任が従来は品質を担保する責任に限られていたのに対し、現代の生産者は製品廃棄後の回収、利用、処理に対しても責任を負わなければならない。すなわち、生産者の責任は、生産段階、製品使用段階から製品廃棄後の回収、利用、処理段階へと次第に拡大されるのであり、各段階の設計においてもより高度な条件が求められる。法案では、生産者が製品廃棄後に負うべき回収、利用、処理の責任について明確に規定している。 (5) 重点企業に対する重点管理 資源の消費が大きく、資源利用効率が低く、汚染物の排出が多い鉄鋼、非鉄金属、石炭、電力、石油化学、化学工業、建材、製紙等の重点産業、特に大企業に対する管理を強化する。これらの産業の中で、年間総合エネルギー消費量、用水量が国の規定を超える重点企業に対しては重点管理制度を実施する。重点企業については、一般の国家基準や業界基準よりも厳格なエネルギー消費基準及び水消費基準を適用して、検査を実施する。 (6) 産業政策の規範化 国家産業政策は循環経済発展の要請に適合しなければならない。国務院のマクロ経済調整部門は環境保護等の関係部門と連携して、奨励、制限もしくは淘汰すべき技術、工程、設備、材料や製品のリストを定期的に公表し、淘汰のリストに入れられた技術、工程、設備、材料や製品の生産、輸入、使用を禁止する。 (7) インセンティブ 循環経済発展転向基金の設立、循環経済重要科学技術開発事業に対する財政支援、循環経済促進活動に対する優遇税制の適用、循環経済事業への投資の傾斜、循環経済の発展に寄与する価格、課金政策など、合理的なインセンティブのメカニズムを確立して、各企業が積極的に循環経済に取り組むよう誘導する。 (国家環境保護総局ウェブサイト 8月27日)
全人代常務委員会で審議中の「循環経済法」について、全人代環境資源保護工作委員会の馮之浚副主任は、以下のように法案の説明を行った。
法案提出の背景
中国は80年代以降高度成長を続け大きな成果を上げたが、一方では巨大な資源と環境の代償を支払うことになった。鉄鋼、セメントなどエネルギー多消費産業は製品単位当たりのエネルギー消費が先進国よりも20%高く、鉱物資源回収率、木材総合利用率は先進国よりも20%以上低い。また、総生産量に占める再生資源利用量の比率も先進水準に比べ著しく低い。こうした問題は中国の今後の発展を制約することになる。循環経済を推進することによって解決を図らなければならない。
循環経済とは?
循環経済とは、生産、流通、消費の各過程における減量化、再利用、資源化活動の総称であり、省資源と循環利用の総称でもある。
循環経済は持続可能な発展を推進する優先方式の一種である。従来の直線的成長モデルではなく、「資源−製品−再生資源」と「生産−消費−再循環」のモデルによって資源を有効に利用し、環境を保護するものであり、最小のコストで大きな経済、社会、環境収益を実現する。循環経済は経済発展と資源・環境の矛盾を解決する有効な方法となる。すなわち、省資源・環境保護と経済発展・社会の進歩とを有機的に結びつけ、資源と環境によって経済発展を支え、一方、経済発展によって省資源と環境改善を支えて、持続可能な発展戦略に適した良性循環を実現するのである。
循環経済法の原則
(1) 減量化優先
先進諸国の循環経済が一般に廃棄物のリサイクルを重視するのに対し、中国の循環経済法は減量化優先を原則とする。工業の高度成長段階にある中国は、エネルギーと資源の過度の消費が深刻であり、減量化、すなわち資源の高効率の利用と節約の余地が極めて大きいからである。
(2) 循環経済計画制度の確立
県クラス以上の地方政府は、経済社会発展計画、地域計画や都市・農村建設計画、科学技術発展計画を策定する場合、循環経済の目標と要請を明確化し、さらに資源産出率、廃物再利用率や資源化率など、具体的な目標を明確に打ち出さなければならない。
(3) 総量規制制度の確立
同法案は、「県クラス以上の地方政府は、上級政府が制定した所轄行政区域の主要汚染物総量規制指標と建設用地、生産用水総量規制指標、所轄行政区域の産業構造調整計画に基づいて、循環経済を推進しなければならない」と規定し、また、建設事業が所轄行政区域の総量規制指標に適合するよう求めている。
(4) 生産者責任制度の拡大
生産者の責任が従来は品質を担保する責任に限られていたのに対し、現代の生産者は製品廃棄後の回収、利用、処理に対しても責任を負わなければならない。すなわち、生産者の責任は、生産段階、製品使用段階から製品廃棄後の回収、利用、処理段階へと次第に拡大されるのであり、各段階の設計においてもより高度な条件が求められる。法案では、生産者が製品廃棄後に負うべき回収、利用、処理の責任について明確に規定している。
(5) 重点企業に対する重点管理
資源の消費が大きく、資源利用効率が低く、汚染物の排出が多い鉄鋼、非鉄金属、石炭、電力、石油化学、化学工業、建材、製紙等の重点産業、特に大企業に対する管理を強化する。これらの産業の中で、年間総合エネルギー消費量、用水量が国の規定を超える重点企業に対しては重点管理制度を実施する。重点企業については、一般の国家基準や業界基準よりも厳格なエネルギー消費基準及び水消費基準を適用して、検査を実施する。
(6) 産業政策の規範化
国家産業政策は循環経済発展の要請に適合しなければならない。国務院のマクロ経済調整部門は環境保護等の関係部門と連携して、奨励、制限もしくは淘汰すべき技術、工程、設備、材料や製品のリストを定期的に公表し、淘汰のリストに入れられた技術、工程、設備、材料や製品の生産、輸入、使用を禁止する。
(7) インセンティブ
循環経済発展転向基金の設立、循環経済重要科学技術開発事業に対する財政支援、循環経済促進活動に対する優遇税制の適用、循環経済事業への投資の傾斜、循環経済の発展に寄与する価格、課金政策など、合理的なインセンティブのメカニズムを確立して、各企業が積極的に循環経済に取り組むよう誘導する。
(国家環境保護総局ウェブサイト 8月27日)