重慶市では、今年に入って以来、特に夏季に入ってから、ガス需要量が激増し、深刻な天然ガス不足が発生している。特にCNG(圧縮天然ガス)サービスステーションでは品切れが目立ち、ガス補給のためCNG車は何時間も行列せざるを得ない「CNG補給難」に陥っていた。 今回の天然ガス不足は、原油高によって石油製品と天然ガスの価格差が拡大し、そのため、CNG需要量が急増したことが原因である。また、今年の天然ガス生産量の伸びが頭打ちになったことも需給ギャップを激化させた原因に当たる。 6月のガソリン値上げにより、重慶市の中心市街地区におけるオクタン価93ガソリンは1リッター0.86元上がって6.12元となった。一方、CNG価格は1m3当たり1.98元でしかない。同じ車両の場合、ガソリン1リッターとCNG1m3の走行距離に大差はなく、結局、ガソリン価格はCNGの3倍余りに相当する。 重慶市は1998年からCNG自動車の普及を本格化し、現在、市バスの92%、タクシーの97%がCNGを使用している。その上、天然ガスの価格上の優位がますます際立つ中、多くの自家用車がCNG使用可能なハイブリッド車への改造を進めており、ここ数年、CNG使用量は毎年20%のペースで拡大している。 そのため、重慶市当局はガソリン車からガス燃料車への転換を一時的に禁止し、規則に違反してCNG車への改造を施した場合、処罰に付している。結局、原油高に端を発したCNG補給難は政府の強力な干渉によって相当程度緩和されたものの、重慶乃至は中国の天然ガス不足という根本問題の解決には時間がかかる。今回の重慶の措置も当面の天然ガス需要を押さえ込んだだけであり、有効需要を削減するものではない。需要が再び急激に膨張すれば、一層大きなCNG補給難の発生は避けられない。 西南天然ガス生産エリアである重慶がなぜ深刻な天然ガス不足に見舞われるのか。 重慶の第二次産業、第三次産業や民生部門は天然ガスに大きく依存している。前述のように市バスやタクシーのほとんどはCNGを燃料としている。また、重慶は中国最大の天然ガス化学企業である四川維尼侖廠を抱えている。重慶の天然ガス化学工業は近年急速に台頭し、重慶の高度成長を支えてきた。多くの多国籍企業も重慶に次々と化学工業拠点を建設しているが、それも重慶の天然ガスの豊かな資源と低廉な価格が理由である。こうした化学工業の投資拡大によって重慶の天然ガス需要はますます大きくなるだろう。 一方、供給面では、重慶市当局は、来年にペトロチャイナやシノペックの新規ガス井が操業を開始して、重慶市の天然ガス不足も緩和が進むとしているが、楽観は出来ない。ペトロチャイナ、シノペックのいずれも、より多くの利益を上げるため西部地区の天然ガスを東部地区に販売するよう望んでおり、西部地区が天然ガスを独り占めすることは許さない。その上、天然ガスは再生可能エネルギーではなく、天然ガス開発に起因する地質災害や生態危機もますます注目を集めるようになっている。 結局、重慶市の天然ガス不足を需給関係の面から根本的に解決することは難しい。再生可能な新エネルギーや新エネルギー車の開発を待つしか、石油不足、天然ガス不足解決の道はあるまい。 (経済参考報 8月5日)
重慶市では、今年に入って以来、特に夏季に入ってから、ガス需要量が激増し、深刻な天然ガス不足が発生している。特にCNG(圧縮天然ガス)サービスステーションでは品切れが目立ち、ガス補給のためCNG車は何時間も行列せざるを得ない「CNG補給難」に陥っていた。
今回の天然ガス不足は、原油高によって石油製品と天然ガスの価格差が拡大し、そのため、CNG需要量が急増したことが原因である。また、今年の天然ガス生産量の伸びが頭打ちになったことも需給ギャップを激化させた原因に当たる。
6月のガソリン値上げにより、重慶市の中心市街地区におけるオクタン価93ガソリンは1リッター0.86元上がって6.12元となった。一方、CNG価格は1m3当たり1.98元でしかない。同じ車両の場合、ガソリン1リッターとCNG1m3の走行距離に大差はなく、結局、ガソリン価格はCNGの3倍余りに相当する。
重慶市は1998年からCNG自動車の普及を本格化し、現在、市バスの92%、タクシーの97%がCNGを使用している。その上、天然ガスの価格上の優位がますます際立つ中、多くの自家用車がCNG使用可能なハイブリッド車への改造を進めており、ここ数年、CNG使用量は毎年20%のペースで拡大している。
そのため、重慶市当局はガソリン車からガス燃料車への転換を一時的に禁止し、規則に違反してCNG車への改造を施した場合、処罰に付している。結局、原油高に端を発したCNG補給難は政府の強力な干渉によって相当程度緩和されたものの、重慶乃至は中国の天然ガス不足という根本問題の解決には時間がかかる。今回の重慶の措置も当面の天然ガス需要を押さえ込んだだけであり、有効需要を削減するものではない。需要が再び急激に膨張すれば、一層大きなCNG補給難の発生は避けられない。
西南天然ガス生産エリアである重慶がなぜ深刻な天然ガス不足に見舞われるのか。
重慶の第二次産業、第三次産業や民生部門は天然ガスに大きく依存している。前述のように市バスやタクシーのほとんどはCNGを燃料としている。また、重慶は中国最大の天然ガス化学企業である四川維尼侖廠を抱えている。重慶の天然ガス化学工業は近年急速に台頭し、重慶の高度成長を支えてきた。多くの多国籍企業も重慶に次々と化学工業拠点を建設しているが、それも重慶の天然ガスの豊かな資源と低廉な価格が理由である。こうした化学工業の投資拡大によって重慶の天然ガス需要はますます大きくなるだろう。
一方、供給面では、重慶市当局は、来年にペトロチャイナやシノペックの新規ガス井が操業を開始して、重慶市の天然ガス不足も緩和が進むとしているが、楽観は出来ない。ペトロチャイナ、シノペックのいずれも、より多くの利益を上げるため西部地区の天然ガスを東部地区に販売するよう望んでおり、西部地区が天然ガスを独り占めすることは許さない。その上、天然ガスは再生可能エネルギーではなく、天然ガス開発に起因する地質災害や生態危機もますます注目を集めるようになっている。
結局、重慶市の天然ガス不足を需給関係の面から根本的に解決することは難しい。再生可能な新エネルギーや新エネルギー車の開発を待つしか、石油不足、天然ガス不足解決の道はあるまい。
(経済参考報 8月5日)