北京五輪閉幕後こそエネルギー市場化改革の好機 李明旭 2007年に始まるインフレ圧力の増大は企業の生産や経営に大きな混乱を与えたが、その副産物の1つにエネルギー分野における市場化改革が放置されたことがある。さらに、発電用石炭価格に対する行政的規制など一定の後退すら生じた。しかしながら、オリンピック閉幕後には改めてエネルギー市場化改革のチャンスを迎えるだろう。 換言すれば、政府がエネルギー市場化改革を再開する前提は、インフレの減退である。エネルギーの市場化は長期的に見て経済構造の中のアンバランスな要素を是正する上で有効であるが、当面の国内エネルギー価格に対する低評価が深刻であるため、エネルギー市場化改革がエネルギー価格を押し上げ、インフレを激化させる可能性が高い。エネルギー市場化改革が放置されている所以である。しかし、現在の情勢から判断すると、インフレ水準は下半期もここ2ヶ月の低下傾向を持続する公算が極めて高く、そのためエネルギー市場化改革も可能になるだろう。 下半期にインフレが減退する主な理由として次の2点が挙げられる。第1に、上半期の通貨引き締め政策が基本的に成果を上げた。6月末の時点で金融機関の人民元各種融資残高は前年同期比14.12%増に止まった。貨幣政策が効果を上げるのにタイムラグがあることを考慮に入れると、インフレに対する引き締め政策の抑制効果は、下半期においてより一層顕著に現れるだろう。第2に、昨年下半期にCPIが次第に上昇していたため、今年下半期のCPIは好転するだろう。 一方、国内エネルギー市場の当面の混乱によって、エネルギー市場化の必要性はますます差し迫ったものになっている。国内外の石油価格の逆ザヤによって製油企業の生産に深刻な影響が及び、販売ルートにおける石油囲い込みを激化させ、国内各地で程度の差はあれ石油危機が発生している。また、石炭価格の高騰と電力価格の統制によって、全国の半分近くの省で電力供給制限が行なわれ、「電力危機」が生起している。さらに、今年上半期には国内石炭価格が驚くべき上昇を示す一方で、発電用石炭価格制限令が発令されて以降、マーケットは新たな「石炭危機」に直面しつつある。 こうした様々な「危機」は実際には本来計画経済の産物であり、自由市場では価格の高低があるだけである。石油や電力等の価格を引き上げること、さらにミクロプレイヤーに完全な価格決定の権力を付与することは、エネルギー市場化改革の第一歩である。最も根本的な措置はエネルギー市場への参入を開放することであり、そうすることこそが市場システムが十分働くための前提であり基礎になる。様々な理由で政府が国内の原油開発分野の市場を大幅に開放する可能性はないが、原油や石油製品の輸出入であれ、国内の製油や石油製品卸であれ、市場への参入を開放することこそが最も差し迫った改革目標でなければならない。 国内経済は来年と再来年に極めて深刻なインフレ反発圧力にさらされるかもしれない。このため、政府は常にインフレ抑止をマクロ調整の重要な目標に位置づけることになろう。こうした見地からすれば、今年下半期のインフレ減退の流れはエネルギー市場化改革にとって極めて得がたい間隙のチャンスになる。しかし、インフレ圧力が依然として大きいため、エネルギー市場開放等の改革を価格決定システムの市場化改革と合わせて進める必要がある。相互に交錯する矛盾を慎重かつ系統的に解決するためにはそのようにするしかない。 (中国証券報 8月11日)
北京五輪閉幕後こそエネルギー市場化改革の好機 李明旭
2007年に始まるインフレ圧力の増大は企業の生産や経営に大きな混乱を与えたが、その副産物の1つにエネルギー分野における市場化改革が放置されたことがある。さらに、発電用石炭価格に対する行政的規制など一定の後退すら生じた。しかしながら、オリンピック閉幕後には改めてエネルギー市場化改革のチャンスを迎えるだろう。
換言すれば、政府がエネルギー市場化改革を再開する前提は、インフレの減退である。エネルギーの市場化は長期的に見て経済構造の中のアンバランスな要素を是正する上で有効であるが、当面の国内エネルギー価格に対する低評価が深刻であるため、エネルギー市場化改革がエネルギー価格を押し上げ、インフレを激化させる可能性が高い。エネルギー市場化改革が放置されている所以である。しかし、現在の情勢から判断すると、インフレ水準は下半期もここ2ヶ月の低下傾向を持続する公算が極めて高く、そのためエネルギー市場化改革も可能になるだろう。
下半期にインフレが減退する主な理由として次の2点が挙げられる。第1に、上半期の通貨引き締め政策が基本的に成果を上げた。6月末の時点で金融機関の人民元各種融資残高は前年同期比14.12%増に止まった。貨幣政策が効果を上げるのにタイムラグがあることを考慮に入れると、インフレに対する引き締め政策の抑制効果は、下半期においてより一層顕著に現れるだろう。第2に、昨年下半期にCPIが次第に上昇していたため、今年下半期のCPIは好転するだろう。
一方、国内エネルギー市場の当面の混乱によって、エネルギー市場化の必要性はますます差し迫ったものになっている。国内外の石油価格の逆ザヤによって製油企業の生産に深刻な影響が及び、販売ルートにおける石油囲い込みを激化させ、国内各地で程度の差はあれ石油危機が発生している。また、石炭価格の高騰と電力価格の統制によって、全国の半分近くの省で電力供給制限が行なわれ、「電力危機」が生起している。さらに、今年上半期には国内石炭価格が驚くべき上昇を示す一方で、発電用石炭価格制限令が発令されて以降、マーケットは新たな「石炭危機」に直面しつつある。
こうした様々な「危機」は実際には本来計画経済の産物であり、自由市場では価格の高低があるだけである。石油や電力等の価格を引き上げること、さらにミクロプレイヤーに完全な価格決定の権力を付与することは、エネルギー市場化改革の第一歩である。最も根本的な措置はエネルギー市場への参入を開放することであり、そうすることこそが市場システムが十分働くための前提であり基礎になる。様々な理由で政府が国内の原油開発分野の市場を大幅に開放する可能性はないが、原油や石油製品の輸出入であれ、国内の製油や石油製品卸であれ、市場への参入を開放することこそが最も差し迫った改革目標でなければならない。
国内経済は来年と再来年に極めて深刻なインフレ反発圧力にさらされるかもしれない。このため、政府は常にインフレ抑止をマクロ調整の重要な目標に位置づけることになろう。こうした見地からすれば、今年下半期のインフレ減退の流れはエネルギー市場化改革にとって極めて得がたい間隙のチャンスになる。しかし、インフレ圧力が依然として大きいため、エネルギー市場開放等の改革を価格決定システムの市場化改革と合わせて進める必要がある。相互に交錯する矛盾を慎重かつ系統的に解決するためにはそのようにするしかない。
(中国証券報 8月11日)