国務院が先頃公布し、今年10月1日から施行される「民用建築省エネ条例」(以下、条例)について国務院法制弁公室の担当者に一問一答した。 質問:条例制定の目的は? 回答:建築のエネルギー需要は急増しており、中国の新築面積は毎年18〜20億m2に上る。建築のエネルギー消費は全国エネルギー消費総量の27.5%を占め、民用建築の省エネの余力は大きい。国務院は民用建築の省エネ対策を高度に重視しており、省エネに関する計画、措置、制度に取り組んでいる。民用建築の省エネ対策はスタートが遅かったが、新規建築の省エネ基準適合を確保することや既存建築に対する省エネ改築の面で大きな進歩を遂げている。 しかし、新たな状況や問題も発生している。第1に、新規建築のすべてが民用建築省エネ基準に適合しているわけではない。省エネ基準に基づいて建てられた民用建築は2007年でもわずか70%に過ぎない。第2に、既存建築の省エネ改築がなかなか進んでいない。所有権の多様性、構造の複雑さや、改造基準の不統一、改築費など難題は多い。第3に、公共建築の電力消費が過大であり、特に大型公共建築の単位面積当たりの電力消費量は一般公共建築の4倍に上る。第4に、暖房システムの効率が低い。集中熱供給による暖房の総合利用効率は45〜70%に過ぎず、先進国の水準をはるかに下回る。第5に、民用建築の省エネに対するインセンティブが乏しい。補助金、融資、課税面でのインセンティブは極めて限定的であり、そのため民用建築の省エネ対策を進めるのは困難である。こうした問題を解決するためには、相応の法律制度や政策を確立することが不可欠である。 質問:条例の適用範囲を民用建築に止めるのはなぜか。工業建築の省エネや省エネ活動については調整を進めないのか? 回答:今回の条例で言う民用建築とは住宅建築、政府機関のオフィスビルや商業、サービス業、教育、衛生などその他の公共建築を指し、工業建築には適用されない。工業建築のエネルギー消費は一般に生産コストに計上されるので、企業はコストを引き下げて収益を高めるため、工業建築の省エネにも前向きだ。また、工業建築のエネルギー消費が工業生産用のエネルギー消費の中で占める比率は10%足らずと極めて小さい。国際的にも工業建築の省エネは、統一的な省エネ基準になじまない。工業建築の省エネは、企業自身の省エネに対する積極的な姿勢と市場システムに依存することになる。 なお、本条例は、スイッチを切ることやエアコンの温度を調整するといった個人の省エネ行為も対象にしていない。そうした個人の省エネ行為は、省エネ意識の育成や価格による調整作用(電気を多く使えば電気代が嵩むなど)によって実現されるものであり、建築省エネとは別物である。また、そうした省エネ行為の建築省エネに対する比率は10%足らずに過ぎない。 質問:新築の際の省エネ管理について、条例はどのように全過程の監督管理を実現するのか? 回答:第1に、計画許可段階においては、地方政府の都市農村計画管理部局が計画の審査を行なうと同時に、その設計プランが民用建築省エネ基準に適合しているかどうかにつき建設主管部局に意見を求め、もし適合していない場合は、建設工事計画許可証を発給しない。 第2に、設計段階では、新規建築の設計図が省エネ基準に適合していることが要件になる。審査機関が基準に適合しているかどうかを審査する。審査に合格しない場合、建設主管部局は施工許可証を発給しない。 第3に、建設段階では、建築主は設計機関や施工機関に対して省エネ基準に違反した設計、施工を要求してはならない。設計、施工機関や工事監督機関は省エネ基準を厳格に適用しなければならない。施工機関が省エネ基準を履行しない場合、工事監督機関は施工機関に対して改善を求める権限を有する。 第4に、完了検査段階では、建築主は、その民用建築が省エネ基準に適合しているかどうかを検査内容に盛り込み、もし適合していない場合、完了検査合格の報告をしてはならない。 第5に、建築販売の段階では、不動産開発業者はその建築のエネルギー消費指標、省エネ措置や、保温工程の修理保証期間等について情報を明示しなければならない。 第6に、使用・修理保証段階では、施工機関は保証期間内において品質問題の発生した保温工程に対して修理の義務を負い、もし損失が生じた場合は賠償責任を負う。 質問:再生可能エネルギーの利用に対するインセンティブや支援策は? 回答:第1に、資金的支援。政府は民用建築省エネの技術研究や基準の制定、既存建築の外壁構造や熱供給システムの省エネ改築、再生可能エネルギーの応用、民用建築モデルプロジェクトや省エネプロジェクトの普及のため予算を割り当てる。 第2に、金融支援。金融機関が既存建築の省エネ改築や再生可能エネルギーの応用、民用建築省エネモデルプロジェクト等を支援するよう誘導する。 第3に、優遇課税。民用建築省エネプロジェクトには優遇税制が適用される。 質問:太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの利用に関する条例の規定は? 回答:第1に、政府は新規建築及び既存建築の省エネ改築においてソーラー、地熱等の再生可能エネルギーを採用することを奨励、支援する。ソーラーについては、利用条件の備わっている地域の地方政府は、機関や個人が温水システム、照明システム、熱供給システム、空調システム等のソーラー利用システムを設置することを奨励、支援する。 第2に、関係する地方政府は民用建築における再生可能エネルギーの応用に予算を割り当てるとともに、金融機関が再生可能エネルギー応用プロジェクトを支援するよう誘導する。 第3に、再生可能エネルギーの利用条件を備える建築については、建築主は冷暖房、照明や温水供給等に適当な再生可能エネルギーを採用しなければならない。設計機関は関連する再生可能エネルギー利用基準に基づいて設計を行なう。再生可能エネルギー利用設備は本体の建築工事と同時に設計、施工、完了検査を行うものとする。 (人民網 8月26日)
国務院が先頃公布し、今年10月1日から施行される「民用建築省エネ条例」(以下、条例)について国務院法制弁公室の担当者に一問一答した。
質問:条例制定の目的は?
回答:建築のエネルギー需要は急増しており、中国の新築面積は毎年18〜20億m2に上る。建築のエネルギー消費は全国エネルギー消費総量の27.5%を占め、民用建築の省エネの余力は大きい。国務院は民用建築の省エネ対策を高度に重視しており、省エネに関する計画、措置、制度に取り組んでいる。民用建築の省エネ対策はスタートが遅かったが、新規建築の省エネ基準適合を確保することや既存建築に対する省エネ改築の面で大きな進歩を遂げている。
しかし、新たな状況や問題も発生している。第1に、新規建築のすべてが民用建築省エネ基準に適合しているわけではない。省エネ基準に基づいて建てられた民用建築は2007年でもわずか70%に過ぎない。第2に、既存建築の省エネ改築がなかなか進んでいない。所有権の多様性、構造の複雑さや、改造基準の不統一、改築費など難題は多い。第3に、公共建築の電力消費が過大であり、特に大型公共建築の単位面積当たりの電力消費量は一般公共建築の4倍に上る。第4に、暖房システムの効率が低い。集中熱供給による暖房の総合利用効率は45〜70%に過ぎず、先進国の水準をはるかに下回る。第5に、民用建築の省エネに対するインセンティブが乏しい。補助金、融資、課税面でのインセンティブは極めて限定的であり、そのため民用建築の省エネ対策を進めるのは困難である。こうした問題を解決するためには、相応の法律制度や政策を確立することが不可欠である。
質問:条例の適用範囲を民用建築に止めるのはなぜか。工業建築の省エネや省エネ活動については調整を進めないのか?
回答:今回の条例で言う民用建築とは住宅建築、政府機関のオフィスビルや商業、サービス業、教育、衛生などその他の公共建築を指し、工業建築には適用されない。工業建築のエネルギー消費は一般に生産コストに計上されるので、企業はコストを引き下げて収益を高めるため、工業建築の省エネにも前向きだ。また、工業建築のエネルギー消費が工業生産用のエネルギー消費の中で占める比率は10%足らずと極めて小さい。国際的にも工業建築の省エネは、統一的な省エネ基準になじまない。工業建築の省エネは、企業自身の省エネに対する積極的な姿勢と市場システムに依存することになる。
なお、本条例は、スイッチを切ることやエアコンの温度を調整するといった個人の省エネ行為も対象にしていない。そうした個人の省エネ行為は、省エネ意識の育成や価格による調整作用(電気を多く使えば電気代が嵩むなど)によって実現されるものであり、建築省エネとは別物である。また、そうした省エネ行為の建築省エネに対する比率は10%足らずに過ぎない。
質問:新築の際の省エネ管理について、条例はどのように全過程の監督管理を実現するのか?
回答:第1に、計画許可段階においては、地方政府の都市農村計画管理部局が計画の審査を行なうと同時に、その設計プランが民用建築省エネ基準に適合しているかどうかにつき建設主管部局に意見を求め、もし適合していない場合は、建設工事計画許可証を発給しない。
第2に、設計段階では、新規建築の設計図が省エネ基準に適合していることが要件になる。審査機関が基準に適合しているかどうかを審査する。審査に合格しない場合、建設主管部局は施工許可証を発給しない。
第3に、建設段階では、建築主は設計機関や施工機関に対して省エネ基準に違反した設計、施工を要求してはならない。設計、施工機関や工事監督機関は省エネ基準を厳格に適用しなければならない。施工機関が省エネ基準を履行しない場合、工事監督機関は施工機関に対して改善を求める権限を有する。
第4に、完了検査段階では、建築主は、その民用建築が省エネ基準に適合しているかどうかを検査内容に盛り込み、もし適合していない場合、完了検査合格の報告をしてはならない。
第5に、建築販売の段階では、不動産開発業者はその建築のエネルギー消費指標、省エネ措置や、保温工程の修理保証期間等について情報を明示しなければならない。
第6に、使用・修理保証段階では、施工機関は保証期間内において品質問題の発生した保温工程に対して修理の義務を負い、もし損失が生じた場合は賠償責任を負う。
質問:再生可能エネルギーの利用に対するインセンティブや支援策は?
回答:第1に、資金的支援。政府は民用建築省エネの技術研究や基準の制定、既存建築の外壁構造や熱供給システムの省エネ改築、再生可能エネルギーの応用、民用建築モデルプロジェクトや省エネプロジェクトの普及のため予算を割り当てる。
第2に、金融支援。金融機関が既存建築の省エネ改築や再生可能エネルギーの応用、民用建築省エネモデルプロジェクト等を支援するよう誘導する。
第3に、優遇課税。民用建築省エネプロジェクトには優遇税制が適用される。
質問:太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの利用に関する条例の規定は?
回答:第1に、政府は新規建築及び既存建築の省エネ改築においてソーラー、地熱等の再生可能エネルギーを採用することを奨励、支援する。ソーラーについては、利用条件の備わっている地域の地方政府は、機関や個人が温水システム、照明システム、熱供給システム、空調システム等のソーラー利用システムを設置することを奨励、支援する。
第2に、関係する地方政府は民用建築における再生可能エネルギーの応用に予算を割り当てるとともに、金融機関が再生可能エネルギー応用プロジェクトを支援するよう誘導する。
第3に、再生可能エネルギーの利用条件を備える建築については、建築主は冷暖房、照明や温水供給等に適当な再生可能エネルギーを採用しなければならない。設計機関は関連する再生可能エネルギー利用基準に基づいて設計を行なう。再生可能エネルギー利用設備は本体の建築工事と同時に設計、施工、完了検査を行うものとする。
(人民網 8月26日)