北京オリンピックに合わせた臨時措置であった偶数・奇数ナンバーによる運行規制を長期的に継続するかどうかが北京で問題になっている。北京市公安局交通管理局によると、非常に多くの市民が運行規制を継続すべきとの意見を寄せている。政府部門はまだ結論を出していないが、大型討論を展開して政策決定の参考とする意向である。 運行規制の利害については贅言を要しないが、継続反対意見は、反対の理由として次の点を挙げている。 ・石油価格を自由化する方が偶数・奇数で運行を制限するよりも有効。 ・制限によって新たな新車購入ブームが起き、自動車の駐車による用地占用が増える。 しかし、偶数・奇数による運行制限で核心的な問題になるのは、公衆の財産使用権の侵害である。 北京オリンピックの臨時的な運行制限措置に際して、北京市はカーオーナーの権利についても考慮を払い、車船使用税及び道路維持修理費用を3ヵ月分、総額約13億元減税した。 しかし、これはあくまで臨時措置であって、運行規制を法制化するとなると、質的に異なってくる。臨時措置であれば、公衆の理解を得られるが、法制化されると、公衆の財産使用権が侵害されることになるからである。そうなれば、北京政府が決定できることではなくなる。 カーオーナーは自動車購入に際して、関連する法規の遵守と諸税・諸費用の納付を義務付けられる一方で、自動車の所有権を合法的に保有し、毎日自動車を運転する権利を獲得する。つまり、カーオーナーの権利は法律により保護されているのであり、それは政府との契約でもある。政府はカーオーナーの権利を保護する責任と義務を有する。しかし、政府の政策が突然変わり、政府が契約を反故にすることになれば、政府自身が法律を無視し、カーオーナーから自動車使用権を剥奪することになる。 仮に、偶数・奇数ナンバーによる運行規制が全人代の討論を経て決議されたとしても、「法律不遡及」の問題がある。つまり、運行規制が法制化されたとしても、その発効後に購入した自動車にしか適用できないことになる。 確かに、法律不遡及の概念は政治理念として定着していない。例えば、1999年にジープを買った某氏は、購入後に北京市がジープに対する道路運行規制や運行時間規制、環境保護規定を制定したり、3ヵ月に1回の排ガス検査を義務付けたりしたため、ジープを泣く泣く手放したケースもある。法律や政策が堂々と過去に遡及することになれば、そのために発生した財産上の損失は誰が賠償するのか。まして、政府は内需拡大策を取っており、現行基準に適合した自動車を買ったとしても、また新たな基準が出たために、せっかく買った自動車が新基準に適合せず使用できなくなるという不安が常に付きまとうことになる。 改革開放の30年、政府は公衆に選択権を与えるとともに、公衆の財産を保護する法体系を整備してきた。「物権法」もすでに施行されている。 偶数・奇数ナンバーによる運行規制継続については、結局、反対が優勢を占めるだろう。すでに多くの北京市民が自家用車を保有しているからである。 (中国青年報 8月30日)
北京オリンピックに合わせた臨時措置であった偶数・奇数ナンバーによる運行規制を長期的に継続するかどうかが北京で問題になっている。北京市公安局交通管理局によると、非常に多くの市民が運行規制を継続すべきとの意見を寄せている。政府部門はまだ結論を出していないが、大型討論を展開して政策決定の参考とする意向である。
運行規制の利害については贅言を要しないが、継続反対意見は、反対の理由として次の点を挙げている。
・石油価格を自由化する方が偶数・奇数で運行を制限するよりも有効。
・制限によって新たな新車購入ブームが起き、自動車の駐車による用地占用が増える。
しかし、偶数・奇数による運行制限で核心的な問題になるのは、公衆の財産使用権の侵害である。
北京オリンピックの臨時的な運行制限措置に際して、北京市はカーオーナーの権利についても考慮を払い、車船使用税及び道路維持修理費用を3ヵ月分、総額約13億元減税した。
しかし、これはあくまで臨時措置であって、運行規制を法制化するとなると、質的に異なってくる。臨時措置であれば、公衆の理解を得られるが、法制化されると、公衆の財産使用権が侵害されることになるからである。そうなれば、北京政府が決定できることではなくなる。
カーオーナーは自動車購入に際して、関連する法規の遵守と諸税・諸費用の納付を義務付けられる一方で、自動車の所有権を合法的に保有し、毎日自動車を運転する権利を獲得する。つまり、カーオーナーの権利は法律により保護されているのであり、それは政府との契約でもある。政府はカーオーナーの権利を保護する責任と義務を有する。しかし、政府の政策が突然変わり、政府が契約を反故にすることになれば、政府自身が法律を無視し、カーオーナーから自動車使用権を剥奪することになる。
仮に、偶数・奇数ナンバーによる運行規制が全人代の討論を経て決議されたとしても、「法律不遡及」の問題がある。つまり、運行規制が法制化されたとしても、その発効後に購入した自動車にしか適用できないことになる。
確かに、法律不遡及の概念は政治理念として定着していない。例えば、1999年にジープを買った某氏は、購入後に北京市がジープに対する道路運行規制や運行時間規制、環境保護規定を制定したり、3ヵ月に1回の排ガス検査を義務付けたりしたため、ジープを泣く泣く手放したケースもある。法律や政策が堂々と過去に遡及することになれば、そのために発生した財産上の損失は誰が賠償するのか。まして、政府は内需拡大策を取っており、現行基準に適合した自動車を買ったとしても、また新たな基準が出たために、せっかく買った自動車が新基準に適合せず使用できなくなるという不安が常に付きまとうことになる。
改革開放の30年、政府は公衆に選択権を与えるとともに、公衆の財産を保護する法体系を整備してきた。「物権法」もすでに施行されている。
偶数・奇数ナンバーによる運行規制継続については、結局、反対が優勢を占めるだろう。すでに多くの北京市民が自家用車を保有しているからである。
(中国青年報 8月30日)