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【エネルギー全般・政治経済】

【論説】徐々に現れ始めた石油貿易「脱ドル化」の動き (09/07/16)
2009/7/17
中国【エネルギー全般・政治経済】

 邱林「徐々に現れ始めた石油貿易『脱ドル化』の動き」(『能源雑誌』所載)


 ロシア大統領メドベージェフはBRICsサミットに先立つ6月5日、中露両国が二国間貿易においてドルを使用せず自国通貨の使用を検討していることを明らかにした。また、ブラジル大統領ルーラも5月の訪中時、同様の見解を示した。

 6月16日、BRICsサミットにおいて、中露印伯4カ国は、「安定的で予測可能でより多元的な国際通貨システム」が必要との認識で一致した。

 ロシアとブラジルの首脳が「脱ドル化」を唱え、中国も含め3国が自国通貨による貿易決済を唱えていることは、石油貿易に重大な影響を与える可能性がある。ロシア、ブラジルの石油や鉄鉱石に対する中国の需要は急増している。自国通貨による決済が実施に移されれば、二国間貿易が拡大するのは必定である。

 昨年以来の国際石油価格の大きな変動は米ドルの変動の直接的な現われであり、米ドルを石油の決済通貨にしていることに大きく関係している。したがって、国際石油価格の変動に対応するには、石油決済通貨の多元化を実現すべきとする専門家もいる。

 石油貿易の「脱ドル化」傾向はすでに現れている。2007年、ロシアはペテルスブルグにルーブル決済の石油取引所を設け、2008年5月にはイランも「脱ドル化」の徹底を打ち出した。また、これより先、日本は円建て国債を中東で販売している。EUはイランに対して制裁措置を取ってはいるが、イランの石油取引においてユーロ決済を窺っており、少なくともEU、ロシア、イランの間では「脱ドル化の三角関係」が形成されている。

 アナリストは、円滑な「石油とドルの循環」を実現するには米ドルの相対的な安定と強化が前提になると見ている。しかし、米国の財政赤字と貿易赤字の双子の赤字などで米ドルの軟調が続き、ドル建て資産の魅力は次第に低下している。オイルダラーをドル建て資産に投じていた70年代はすでに昔のことであり、石油輸出国は今やユーロや円資産に投資している。

 最近、中国は複数の国と「融資と石油の交換」協議に調印した。海外のメディアは、これを、中国とその他の国による石油貿易の「脱ドル化」の重要なプロセスと見ている。

 例えば、中国とブラジルとの合意では、ブラジルが中国からの輸入商品代金に同国の通貨レアルを支払い、中国はブラジルからの石油輸入代金を人民元で支払うというのが中国の構想である。今後両国間の石油貿易において人民元とレアルが米ドルに代わって石油決済通貨になり、そうした方式がBRICsや他の新興国市場にも広がれば、国際通貨システムに対して相当大きな影響を与えるだろう。

 しかしながら、人民元を石油貿易の決済通貨にすることは、既存の国際石油システムと国際経済秩序を打破することでもあり、時間と周到な準備、計画が必要である。中国は、ロシアやブラジル等との「融資と石油の交換」協定以外にも、その他の産油国との間で人民元による決済を進めて良い。産油国もまた、米国の為替レートと通貨政策の束縛から脱却して、ユーロなど多様な通貨によって石油貿易の決済を行うことを希望している。

 石油貿易の「脱ドル化」傾向は日増しに鮮明になっている。石油は巨大国際資本の操る、投機性、独占性の高い戦略物資と化している。中国は「融資と石油の交換」方式を活用するだけでなく、石油金融戦略を科学的に策定し、地域的な石油貿易のレベルにおいて発言権と価格決定権を高めなければならない。

 (中国能源網 7月16日)