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【論説】原油調達先が依然不透明の中露天津合弁製油所 (09/10/08)
2009/10/8
中国【石油・天然ガス】

 Rosneftと中国石油天然ガス集団(CNPC)は先頃、天津1500万トン級合弁製油所の事業化可能性調査(FS)を完了したことが、ロシア側からの消息によって明らかになった。当初の計画通りだと、今年末には中国政府の承認を得て、2010年に着工、2012年に操業を開始することになる。

 しかしながら、中露双方はこの合弁製油事業をスピードアップさせているものの、製油所の原油調達先については未だに確定していない。

 RosneftとCNPCが1,000万トン超の合弁製油所を中国北部に建設することを決定したのは2年前。この事業は中露両国がエネルギー協力を拡大する一環であり、2009年2月には所謂「融資と石油の交換」協定により、同事業も加速されることになった。

 当初の計画によると、合弁製油所の総投資額は30〜40億ドル。天津市南港工業区に建設される。RosneftとCNPCは、CNPCが51%、Rosneftが49%の出資比率による中露東方石化天津有限公司(東方石化)を設立した。

 Rosneftのボグダンチコフ社長は、同製油所のFSに満足の意を表明している。製油所の年間原油精製能力は1,500万トンであるが、最終的な規模は中国及びロシア政府により決定される。

 9月16日、天津市の張高麗書記と黄興国市長はCNPCの蒋潔敏総経理(社長)と会談し、合弁製油事業も含め天津市における建設のペースを上げると表明した。

 CNPCは近年、下流事業への進出を強めており、大規模な石油・化学事業を相次いで立ち上げている。CNPCは、2015年には年間製油能力を現在の2倍に当たる2.4億トンに高め、石油製品市場において半分のシェアを占めるよう計画している。加えて、中国石油化工集団(Sinopec)も天津に製油・化学一貫プラントの建設を進めており、CNPCの天津製油所が完成すると、CNPCとSinopecの環渤海地区における競争はますます熾烈を極めるだろう。

 一方、Rosneftにとって、世界で最も大きな潜在力を備える中国市場に参入することはかねてからの悲願である。中露両国のエネルギー協力協定により、RosneftはCNPCと提携して中国国内にサービスステーションを建設する資格も有している。

 Rosneftは当初より、天津合弁製油所を、パイプラインによって輸送されるロシア産原油処理専門の製油所にするよう目論んでいる。つまり、原油と生産を一体にしたプロジェクトにしようという計画である。

 今年2月、中露間の「融資と石油の交換」協定により、ロシアは2011年から20年間、パイプラインによって総計3億トン、年平均1,500万トンの原油を中国に安定供給することになった。この1,500万トンの原油は、目下建設中のESPOパイプライン(東シベリア−太平洋パイプライン)及び中国支線によって中国に輸送される。中国支線は2010年10月に全線完成する予定である。

 しかしながら、Rosneftの計画通りだと、中国にとっては徒にコストを増やす嫌いがあり、そのため、CNPCはパイプラインによって輸送されるロシア産原油を沿線の東北地区のCNPC系製油所に分配することを希望している。今年7月、CNPCは、遼陽石化を中露石油協定の重要な戦略拠点にすると発表し、中国初の1,000万トン級ロシア原油精製専門の製油基地に着工した。遼陽石化向け以外のロシア産原油は東北地区のほかの製油企業3社に分配することになる。

 東北の各製油所もまたこの数年来、ロシア産原油をめぐって暗闘を続けてきた。彼らはロシア産原油の分け前に与ろうと希望しているが、ロシア側に一定の発言権があるため、この問題は未だに解決していない。

 天津製油所には、中露原油パイプライン以外にも、原油調達のオプションがある。ESPOパイプラインのターミナルが完成すれば、海上ルートから中国、日本、韓国へ原油を輸送することが可能になり、海上ルートで原油を天津に輸送することも出来る。そうなれば、中露間の協議による年間1,500万トンの枠に縛られるまでもない。そもそも、中露合弁石化事業を天津の臨海部に建設するのも、当初から海上ルートによる原油調達を織り込んでいたとの見方もある。

 (時代週報 10月8日)