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【新エネルギー】

春はまだ遠い中国のバイオマス発電 (11/07/13)
2011/7/21
中国【新エネルギー】

 国家能源局が明らかにした第12次5ヵ年規画期のバイオマス発電の設備目標は1,300万kWに上り、過去5年間の550万kWから倍増を実現することになる。バイオマス発電の「春」も間もなく到来するかに見える。しかし、最近のバイオマス発電企業の現実から見ると、春の息吹はまだまだ遠い。今年初頭、皖能電力は傘下のバイオマス発電公司の株式を1,550万元で売却すると発表し、6月には華能国際が傘下の吉林生物公司を300万元で売却すると発表した。両社の発表はバイオマス産業が直面する現状を物語っており、業績は連年赤字である。産業発展の現状と壮大な計画の落差にはバイオマス業界も注視せざるを得ない。

 先般、国家能源局は第12次5ヵ年規画期に太陽光発電設備容量を現在の2倍の1,000万kWにするとの目標を打ち出したが、現実との大きな落差にこの目標が実現可能かどうか、疑問符が突きつけられている。もっとも、過去5年間の中国の太陽光発電産業の発展は風力発電よりも遅かったものの、産業発展の技術的、市場的基盤はすでに備わっており、容量拡大は必然の流れであるとする分析も多い。一方、資源の賦存、技術力、市場規模、政策環境など、様々な角度から見て、1,300万kWの設備目標を産業が受け入れることは難しいとの見方もある。

 前出の2社がバイオマス発電公司を売却する理由は次の2点に集約できる。すなわち、原材料と系統連系価格の問題である。そしてこの2つの問題は業界が一貫して指摘してきたバイオマス発電産業の最大の問題に他ならない。

 ここ2年、バイオマス発電に投資する企業はますます増えており、100キロの範囲内に5基のバイオマス発電所が建設されるケースもある。しかし、バイオマス発電の原料は、風力発電や太陽エネルギーのように自然から得られるわけではなく、一定範囲内にある1社分の原料を多くの企業で分割するという結果になる。

 バイオマス発電の総経費のうち原料は70%以上を占めるが、中国国内のバイオマス原料市場はここ数年、発展が緩慢である。例えば、第11次5ヵ年規画は2010年のバイオブリケットの年間利用量を100万トン、非穀物系エタノールの年間利用量を200万トンにする目標を打ち出していたが、2010年末時点でいずれも目標に達していない。バイオブリケットの年間利用量はわずか50万トン前後、非穀物系エタノールは20万トンしかない。バイオマス発電企業は原料不足が常態であり、そのことは産業発展の最大のネックになっている。中国のバイオマス産業はスタートが遅く、今なお政府の補助金に依存する段階に止まっている。国はバイオマス発電に対して、現地の脱硫電力価格をもとに0.25元/kWhを助成する措置を打ち出しているが、この程度の助成基準では、発電コストの上昇に起因する経営難を補うことはできない。企業のこうした声は3年前から繰り返し上がっているが、政策は後手に回り、価格引き上げの兆しは未だに見えない。政府はバイオマス発電産業が風力発電のように政府からの助成に対する依存から徐々に脱却し、企業が自主イノベーションによって発電コストを引き下げることを期待している。しかし、1元/kWhの系統連系価格では、そうした期待も現実の困難に直面することは火を見るよりも明らかである。

 (北極星電力新聞網 7月13日)