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中国
【石油・天然ガス】

欧州経済衰退と米国シェールガス大発展で中露天然ガス協力に新たな契機 (12/06/18)
2012/6/25
中国【石油・天然ガス】

 6月5日、ロシアの新大統領プーチンは中国を訪問し、両国元首は、中露天然ガスパイプラインも含むエネルギー分野の協力を主な議題として会談した。中露の今後の天然ガス協力にとっては、ロシアの天然ガス輸出の現状を十分に理解しておくことは有益であろう。

 ロシア貯蓄銀行のアナリストの予測によると、国際天然ガス市場の競争は今後さらに激しいものになる。欧州におけるロシア天然ガスの顧客は輸入を減らすとともに長期天然ガス契約の更改とガス価格の引き下げを要求している。例えばブルガリアは最近ようやくロシアからの天然ガス価格の11%引き下げにこぎつけた。他の欧州諸国も値下げを勝ち取ろうとしている。今後、ロシアの天然ガス収入はますます減少するに違いない。

 また、前出のアナリストは、今後4〜5年、シェールガスが出現し始めることもロシアの天然ガスを追い込むとともに、国際天然ガス市場を一層激化させ、もっと大きな変化をもたらすと予想する。実際、ロシアの天然ガス産業はすでに極めて厳しい情勢にある。トルコを除いて欧州諸国は軒並みロシア天然ガスの購入を減らしている。今年2月、Gazpromは欧州向け価格を10%引き下げると発表した。ロシアが欧州において競争力を維持するためには、こうした措置も止むを得ない。Gazpromはすでにイタリアと価格引下げで合意し、ドイツのエーオン・ルールガスとは依然交渉中である。

 2011年の統計によると、ロシアはブルガリアに1000m3当たり390ドルの価格で28.1億m3の天然ガスを輸出した。もっとも、ロシアの「独立新聞」の専門家は、両者の取引には利害の一致があると指摘する。ブルガリアは値下げを勝ち取り、ロシアは争点のある「サウスストリーム」ガスパイプライン問題をめぐって忠実なパートナーを獲得したからである。同様に、2011年末にはGazpromはトルコとも新たなガス契約に調印した。トルコは「サウスストリーム」ガスパイプラインの敷設を交換条件として、Gazpromから低価格でガス供給を受けることになったのである。新たなガス価格はトルコにとって極めて魅力的であり、双方は2012年からガス供給を増やすことで合意した。

ロシアのアナリストは、現在欧州の需要家の多くはロシアの高いガス価格に不満をつのらせていると指摘する。今後、Gazpromは再び譲歩を余儀なくされるだろう。Gazpromには、当面の利益と高価格を維持するために強気に出るか、それともフレキシブルな形で市場のシェアを維持するか、の二つの道しかない。Gazpromのミレル会長は前者の考え方を支持しているが、当面の条件の下では後退せざるを得ない。もっとも、Gazpromは天然ガス価格を引き下げる見返りにトルコとブルガリアから「サウスストリーム」ガスパイプラインの協力を取り付けたが、「サウスストリーム」が巨額の出費に値するかどうかは大きな問題である。

 さらに、ロシア貯蓄銀行マクロ経済センターが発表した「シェールガスフィーバーの影響」と題する分析レポートは、「シェールガスフィーバーによって米国の天然ガス価格は80%下がり、1000m3につき70ドルになった」と指摘する。そのため、ロシアの他のアナリストも、ロシアが欧州市場におけるシェアを失うことを懸念している。ロシアにとっては、もし第三国から欧州へのガス供給源が生まれると、ロシア天然ガス市場に過剰が生じることになる。米国とカナダが世界市場にシェールガス等の非在来型ガスを輸出するのも近いという見方もある。報道によると、米国の天然ガス生産量、特にシェールガス生産量が大幅に増加すると、天然ガス価格は世界水準を下回り、国内市場は苦境になる。米国国内の天然ガス生産企業やLNG輸送企業は目下争って輸出事業を開拓しようとしている。

 加えて、世界の天然ガス市場は、LNG革命後も新たな構造変動の十字路にある。ロシア貯蓄銀行の専門家は、「今後さらに4〜5年、ロシアはあらゆる潜在的な天然ガス輸入国を対象とする天然ガス輸出競争において顕著な成長を遂げるに違いない。こうした面では、ロシアはどうすれば一部企業の収益を速やかに高めることができるかを考慮するとともに、今後の天然ガス輸出戦略に調整を加えることが必要になる」と指摘する。

 (中国石油石化雑誌 6月18日)