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【石油・天然ガス】

プーチン訪中も天然ガス価格交渉は打開ならず (12/06/18)
2012/6/25
中国【石油・天然ガス】

 6月5日、ロシアのプーチン大統領は中国を訪問した。同日、プーチン大統領は《人民日報》に寄稿し、「中露協力プロジェクトはグローバルエネルギー市場を効果的に改変した。中国にとっては、エネルギー供給源の信頼性と多様性が高まり、ロシアにとっては急速に成長するアジア太平洋地区への新たな輸出の販路を切り開いた」と述べ、特に「遠くない将来にロシアの天然ガスが中国へ大量に輸出されるようになることを希望する」とした。

 2012年6月5〜7日、再度大統領に就任したプーチンは、12年前の最初の大統領就任時と同様に、中国を最初の訪問地とした。6月5日、胡錦濤主席とプーチン大統領は《平等と信頼の中露全面戦略協力パートナーシップに関する中露共同声明》に調印するとともに、両国の政府部門並びに企業間の、エネルギー、工業、観光、投資など様々な分野にわたる11件の協力文書の調印式に出席した。

 中国社会科学院の世界経済専門家である劉明氏は、プーチンの大統領就任後に中露協力の展望が開けるとの見方を示す。

 確かに、プーチンは、中露両国には広範な共通利害と高度の戦略的相互信頼があると表明した。中露協力のポテンシャルは巨大であり、見通しも広がっている。ロシア側は、両国間の貿易額を2015年には1,000億ドルに、2020年には2,020億ドルにするとの目標を達成することに自信を示している。

 「エネルギー協力はプーチン訪中のハイライトであり、柱だ。エネルギー協力事業について検討を深めることになるに違いない」と、中国国際戦略学会上級顧問であり、中国国際問題基金会エネルギー外交研究センター主任の王海運氏は指摘する。

 実際、プーチン訪中に先立つ4日間は中露エネルギー交渉が先行していた。エネルギー協力は中露全面戦略協力パートナーシップの重要な内容であり、過去の会談もすべてエネルギー協力を主要議題としてきた。

 中露原油パイプラインは昨年の輸送量が1,500万トンに達し、中露エネルギー協力の象徴的プロジェクトになっている。しかし、天然ガス分野は価格問題での隔たりが大きく、中露天然ガス協力の推進には依然大きなハードルがある。今年4月、李克強副首相はロシアを訪問し、ロシア側に革新的な天然ガス協力モデルを提案した。上流と下流を一体化し、真の互恵とウィン・ウィンの原則に基づいて、ともにリスクを負担し、ともに利益を共有しようというものである。この提案はロシア側からも前向きの反応を得た。

 新プーチン時代にロシアは対外戦略とエネルギー戦略を調整し、ユーラシア同盟を打ちたてて、中央アジア諸国、ベラルーシやウクライナとの間で旧ソ連圏を統合することになる。また、WTOの原則と衝突する国内法を修正する。中国及び上海協力機構は、ロシアがユーラシア同盟と共同経済圏の構想を実現する上で重要な地位と影響力を有する。

 2月27日、プーチンは《モスクワ新聞》において、「変化の絶えない世界とロシア」と題する論文を発表し、ロシアは繁栄し安定する中国を必要とし、中国は強大で成功するロシアを必要とすると述べた。

 目下、ロシアの対中戦略は、全方位的な戦略協力パートナーシップの下で、関係する末節分野へと広がることになる。国連及びG20において両国の協力を引き続き強化し、ロシアが打ちたてようとするユーラシア同盟と上海協力機構のジョイントを実現し、地域協力事業を実施し、エネルギー・資源、軍需工業、ハイテクや宇宙等の分野でイノベーションや人材育成で協力を深める。中露エネルギー発展戦略において、石油、天然ガス、電力、石炭及び原子力分野の戦略協力を総合的に立案することになる。

 上述の戦略協力プロジェクトは新プーチン時代に一つ一つ促進される。ロシアのエネルギー戦略にも大きな転換が生じるに違いない。

 例えば、ロシアのエネルギー輸出はこれまで東西両方向への輸出を基本戦略指針としていたが、東西には当面及び短期的には極めて大きな不均等がある。既存の輸出市場を見ると、ロシアの西方向への輸出は伝統と歴史的な起源、大きな基盤がある。石油ガス資源の面から見て、ロシアは必然的に西シベリアを西方向(欧米)への輸出の重要な基盤としている。一方、東方向への輸出は相対的にそのような基盤に乏しい。ロシアのアジア地区、特に東シベリアと極東沿海区は全体的に経済水準が低いだけでなく、人的資源やインフラも乏しい。石油ガス資源の確認度も低く、石油ガスの想定資源量を開発に供することの出来る埋蔵量に変えるにはまだまだ時間がかかる。

 しかし、西側の現状が続く中で、ロシアの石油・天然ガス輸出は依然苦境にある。EUは「アラブの春」を背景に、欧州市場においてロシアの地位を圧しようとしている。欧州の多元化戦略によって追いやられるロシアは、東北アジアへの戦略転換を実施せざるを得ない。

 「ロシアと欧州市場の関係が複雑であるため、ロシアは中国市場を開拓して、輸出先の多元化を実現することを迫られている」と王海運氏は指摘する。

 ロシアの石油輸出市場の点から見て、欧州市場の飽和状態という現状の下で、一部の石油・天然ガスを東へ、特に中国へ輸出することはロシアにとって極めて魅力的である。

 中国石油大学国際石油政治研究センターのパン教授は、プーチンの今後のエネルギー戦略も東の中国へと転換すると分析する。中国とロシアは協力して相互補完的な一次エネルギー消費構造を改善し、エネルギー使用効率を高めることになる。こうした状況の下で、ロシアが東向けの戦略を強化して中国との協力を選択すれば、ロシアのエネルギー産業の全体的な発展を促進するだけでなく、長年停滞していたロシア極東地区の経済発展に活力を注入することも出来る。

 6月5日午後、プーチンの訪中に随行したRosneftのセーチン総裁とTransneftのトカレフ総裁の一行は北京到着後に中国石油天然ガス集団(CNPC)を訪問し、蒋潔敏董事長(会長)とエネルギー協力の強化について会談を行った。

 ロシアが中国への天然ガスと石油の輸出を拡大する余地は極めて大きい。2030年までにロシアの天然ガス生産量は1兆m3に達し、輸出量は4,550億m3に達するが、うちアジア太平洋地区への輸出量は20%と目される。ロシアは西ルートのアルタイパイプラインによって年間300億m3、東ルートによって380億m3の天然ガスを中国に輸出する計画である。

 中露は天然ガス価格交渉を急ぎ、力を合わせて東部天然ガスパイプラインを積極的に推進することになる。中国は互恵互利を原則として、ロシア東部油ガス田への投資と開発に参加し、南ヤクートのチャヤンダガス田とイルクーツクのコビクタガス田を東北アジア地区のガス供給基地としてインフラ建設を促進する心積もりである。

 中露の天然ガスパイプライン西ルートの協力ではすでに大きな進展を遂げており、パイプラインのルートや管径等の技術パラメータをめぐって意見は一致しているが、双方の主要な問題は、ガス価格と市場の受入能力の問題である。

 パン教授は、「ロシアが中国天然ガス市場への参入を求めるのなら、中国側と協同して東北アジア中日蒙韓朝ガスパイプライン網の計画を進め、中国へのガス供給価格を段階的に引き上げて、新しい市場の開拓と育成を図り、中国のエネルギー構造調整に参画して、2015年以降にはパイプラインによる対中天然ガス輸出を実現するようにすべきだ」との考えを示す。

 もっとも、問題を解決し、隔たりを縮めるために、双方はすでに部分的に措置を講じている。例えば、前述のように今年4月、李克強副首相はロシアを訪問した際に、天然ガス協力を推進し、隔たりを埋めるために、上流・下流を一体にした天然ガス協力モデルをロシア側に提案した。

 王海運氏の見方では、ロシア側の反応を見る限り、待望久しい天然ガス合意において、価格は最早交渉の核心問題ではなく、障害でもない。正式に合意文書に調印するには、依然非常に多くの準備プロセスを要し、機関やメカニズムなど解決すべき問題は多い。

 王海運氏はさらに、価格問題を避けることで中露双方がともにリスクを負担し、ともに利益を共有するような協力を展開することには、明るい見通しがあると表明する。一連の問題を解決しさえすれば、天然ガス協力を速やかに実施することが出来るに違いない。天然ガス協力によって中露両国のより一層緊密なエネルギー同盟が形成されるだろう。

 今回のプーチンの中国訪問において中露天然ガス交渉には大きな打開があったはずであるが、具体的な契約が調印されるのは年末かそれ以降にずれこむと業界の専門家は予想する。「今回のプーチン訪中において必ずしも直ちに中露天然ガス協力の合意が成るわけではないが、中露政府間合意の枠組みの下で、今後は大きな打開があるに違いない。いずれにせよ、中露の天然ガス分野の協力には極めて大きな展望が広がっている」とパン教授は見ている。

 (中国石油石化雑誌 6月18日)