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中国
【石油・天然ガス】

【論説】ロシアの輸出が大幅減 今後は天然ガス価格高騰時代へ 中国経済への影響は? (2007/11/30)
2007/12/6
中国【石油・天然ガス】

ロシアのウクライナ向け天然ガス輸出価格が来年54%もの上昇か

 ロシアとトルクメニスタンの従来の合意によると、2007〜2009年にガスプロムはトルクメニスタンから年間500億m3の天然ガスを購入し、契約価格は100$/千m3となっている。この天然ガスは主にロスウクルエネルゴ(RosUkrEnergo)社に供給され、ロスウクルエネルゴはこれを130$/千m3でウクライナに転売している。なお、2007年以前のトルクメニスタンの対露輸出価格は65$/千m3であり、ロシアはウクライナに95$/千m3で販売していた。

 しかし、11月23日のロシアとトルクメニスタンの価格交渉において、トルクメニスタンは来年の対露輸出価格を30%値上げするよう要求した。もしロシアが30%値上げの要求を呑めば、ウクライナへの転売価格が160$/千m3となるだけでなく、ウクライナへも天然ガスを販売しているカザフスタンやウズベキスタンもトルクメニスタンにならって値上げを求めることになろう。そうなれば、ウクライナの輸入価格は160$/千m3を維持するどころか、2007年比54%増の200$/千m3に近づくことになりかねない。

 ガスプロムは欧州向け天然ガス価格を最高150ユーロへ値上げすると宣告

 トルクメニスタンの天然ガスはウズベキスタン、カザフスタン及びロシアを経由する「中央アジア−中央パイプライン」によりウクライナに輸送され、一部の天然ガスはウクライナから欧州に中継されている。

 天然ガスパイプラインのルートから見て、ウクライナへの天然ガス販売価格が上昇すれば、欧州の天然ガス輸入国も大きな圧力に直面することになる。

 ガスプロムは、原油価格上昇の連鎖と、EUが推進するエネルギーの市場化によってガスプロムの収益余地が縮小していることを理由に、欧州向け天然ガス価格を現在の250ユーロ$/千m3から2008年には300〜400ユーロ$/千m3に引き上げると宣告した。この値上げに対し、欧州の一部の国はすでに受け入れを表明している。EU理事会の予測によると、EUのロシアに対する天然ガス依存度は現在の25%から、2050年には50%になるだろう。

 中国向け天然ガス価格も欧州にならうのか

 先日、ガスプロム副社長メドベージェフは訪中し、中国石油天然ガス集団(CNPC)の幹部と交渉を行った。中国への天然ガス供給をめぐっては、価格が最も重要な鍵となる条件であり、ロシア側は、中国側が欧州と同様の価格を受け入れられないため、価格交渉が行き詰っていることを再三にわたって表明していた。交渉を終えたメドベージェフは、今回の交渉が大きな進展を遂げ、価格決定方式で基本的に合意に達したことを示唆した。ロシア側にとって理想的な価格で契約が結ばれたと見られており、ロシアのメディアは対中天然ガス輸出価格を150〜190$/千m3と予想している。しかし、この価格とCNPCの受け入れ可能な価格との間には依然として大きな開きがある。もし、この価格で合意に達したとすれば、中国は天然ガスの価格高騰時代に入るだろう。中国は2010年にエネルギー市場における天然ガスのシェアを現在の2.5%から2010年には6%に、2020年には10%に増やすよう計画している。この計画通りに進展すれば、中国の輸入LNGに対する需要量は今後10年以内に年間2,000万トン以上になるだろう。

 天然ガス価格上昇の原因にロシアの石油・天然ガス輸出の大幅減

 ロシアが天然ガス輸出価格を引き上げている主な原因には、同国経済のエネルギー輸出に対する依存度が大幅に下がっていることが挙げられる。ロシア政府が打ち出した2015年までの石油化学工業発展戦略によると、ロシアの石油・天然ガス処理量は現在の総採掘量の30%から70%に引き上げられる。つまり、ロシアの石油・天然ガスの原料輸出量と処理量の比率が逆転し、石油・天然ガス輸出の比率が大幅に下がるのである。2008年から2005年の間にロシアの石油化学工業の生産量は3〜4倍に増え、高度加工製品の輸出量も拡大することになる。

 もう1つの背景には、ロシア国内で吹き荒れている環境保護の嵐がある。ロシア連邦議会は「環境マイナス影響賠償法案」を起草中であり、ロシアのエネルギーメジャーも予め対策を取っている。特に電力会社のロシア統一エネルギーシステムは天然ガスを発電用の動力として使用するなど、環境保護措置を実施している。

エネルギーの高度加工の比率を高めることによって、ロシアの輸出商品の付加価値も高まるが、世界最大の天然ガス生産国がこうした措置を取れば、天然ガス価格を再び高騰させるだけでしかないと専門家は指摘する。

 天然ガス価格高騰が中国に及ぼす影響

 石油と天然ガス価格の高騰が中国の経済成長に影響を及ぼすのか。この点について、中国社会科学院世界経済政治研究所の沈驥如研究員は、その影響は小さいと説く。この4年、高価格で原油を輸入しているが、中国は外貨準備を切り崩してはいない。中国の原油輸入コストは上昇したにも関わらず、原油消費が製造業の発展を推進し、これらの製品の輸出価格も上昇して、貿易黒字が拡大を続けているからである。

 また、高い油価によってエネルギー消費国に間接的に融資のチャンスがもたらされている。サウジ、イラン等の産油国では収入が大幅に増加し、世界のGDPに占める比率が2002年以前の1%から2006年には3.1%に上昇した巨額のオイル・マネーが世界を駆け巡り、世界の投資マーケットの繁栄と世界経済の好景気をもたしている。

 一方、エネルギー価格の高騰が中国にインフレをもたらすかどうかについて、ドイツ銀行のエコノミストであるジュン・マー氏が先頃発表された中国経済レポートの中で表明していたように、消費者物価に対するエネルギー価格の波及度は想像するよりもはるかに小さく、インフレ圧力を懸念するには及ばない。この4年と9ヶ月の間に原油、鉄鉱石、非鉄金属、原材料や石炭は毎年10〜18%のペースで価格が上昇したが、消費財の出荷価格の伸びは年平均0.4%に過ぎなかった。ジュン・マー氏によると、この7年、中国の名目労働生産率の伸びは年平均19%であり、そのため原材料やエネルギーコストが5〜10%程度上昇する程度では、価格に対する圧力にはならないのである。

 (中国経済信息網 11月30日)