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【新エネルギー】

中国太陽光発電企業上位10社の累積債務は1,000億元超 負債率は70%超 (12/08/23)
2012/8/30
中国【新エネルギー】

 中国の太陽光発電産業のリーディングカンパニーである無錫尚徳電力公司(サンテック)は、すでに債務が40億ドルを超えており、満期を迎える債務を償還する力がないため、破産の瀬戸際に立たされている。ポリシリコンの筆頭企業である賽維LDKの負債は60億ドルを超え、負債率は87%に達している。こうした企業は枚挙に暇がないほどであり、景気の良い太陽光発電企業はほとんどなきに等しい。

 8月7日に米国の投資機関Maxim Groupが発表した一連の最新データによると、中国の太陽光発電企業大手上位10社の累積債務は合計175億ドルに達しており、人民元に換算すると約1,110億元になる。太陽光発電産業全体の負債率はすでに70%を超えており、数値の高さは最早衝撃的な段階にまで上昇している。太陽光発電産業は非常に危険な状況にあり、企業は大型倒産の瀬戸際に立たされている。

 先日、太陽光発電産業第12次5ヵ年規画が公布され、2012年の設備容量を20GWにするとの希望が打ち出されたが、これでは多少なりともマーケットの信頼を高めることさえ出来ない。中国再生可能エネルギー協会の孟憲淦事務局長の試算によると、中国の太陽光発電産業の生産能力はすでに50GWに達しており、全世界の需要量を上回っている。一方、市場のキャパシティには限りがあり、企業の大量破産は必至である。さらに、債務危機はこうしたプロセスに追い討ちをかけている。

 太陽光発電企業が持ちこたえることは困難

 国内太陽光発電企業の今年第1四半期と第2四半期の財務諸表はいずれも赤字が増加していることを示している。赤字に伴って債務も膨張している。常州天合を例に挙げると、同社の第2四半期の報告から、負債が21億ドルを超えており、負債率が約70%になっていることが分かる。常州天合は業界内では比較的安定している企業と言えるにも関わらず、太陽光発電産業の負債率の高さは他のどの産業においてもほとんど見られないものである。

 記者が注目したのは、リーディングカンパニーの尚徳電力の株価が下落を続けて1ドルを割ったことである。同社の株価を0セントと評価しているアナリストもいる。他の企業の株価も似たり寄ったりであり、賽維LDKの評価額も2ドルを下回っている。米国に上場した中国太陽光発電企業の株価の下落率は85%を超えている。

 大多数の企業は製品が売れず、大量に山積みされているが、企業は敢えて生産を停止することはしない。生産停止が露見すると、債権者が返済を求めて殺到するからである。現在ほとんどの企業は賃金引下げなどの方法によってコストを引き下げているが、引き続きキャッシュを消費し、ジレンマの中でなんとか持ちこたえている。

 対外輸出は影響を受けたが、国内では打開の方法を模索しはじめた。《太陽光発電産業第12次5ヵ年発展規画》は太陽光発電産業が極めて困難な状況の中で公布されたものであり、その意図するところは市場の信頼を取り戻すことにある。しかし、業界関係者の説明によると、この規画には実行不可能な要素が多く、規画が画餅に帰すことになれば、太陽光発電産業は飢えを満たすことが難しくなる。

 同規画によると、第12次5ヵ年規画期に中国の太陽光発電設備容量は21GWに達する。この目標は何度も修正されたが、その度に引き上げられ、最終的に21GWに落ち着いた。その中で分散型発電と大規模発電がそれぞれ10GWを占める。

 しかしながら、孟憲淦氏は、この計画には実施の難しいところが多いと見ている。海外の太陽光発電はいずれも分散型発電であるが、中国では実行不可能であると見られる。その主な理由は国情の違いにある。海外の家庭の多くは一戸建てであり、太陽光発電システムの設置に適しているが、中国はいずれもビル式の集合住宅であり、太陽光発電システムの設置には適さない。そのため、太陽光発電の発展は中小都市に限られるが、太陽光発電システムの設置には1kW当たり3万元以上を要し、家庭の負担能力には限りがある。補助金を給付するにも財源問題の解決が難しい。

 企業にとっては、太陽光発電システムを設置して発電を行うことは比較的可能性が高いが、現実の条件の下では電力の系統連系が不可能である。系統連系しない太陽光発電は経済性が大幅に下がる。とりわけ重要なことは、今のところ同規画は一つの目標に過ぎず、未だにスケジュールに上っていないことである。第12次5ヵ年規画の期間は余すところわずか3年であり、目標を実現することは基本的に難しい。

 孟憲淦氏がさらに憂慮しているのは、たとえ21GWが計画通りに設置出来たとしても、中国の太陽光発電産業にとっては、多少なりとも信頼を取り戻すことにすら効果がないということである。中国の太陽光発電生産能力を50GWとして試算すると、5年間の生産能力は250GWになり、20GWの設置容量では焼け石に水に過ぎない。

 卓創資訊の新エネルギーアナリストである李氏は、当面の唯一の頼りは景気の好転だけであると見ている。景気が好転しなければ、国際摩擦が産業危機に拍車をかけることになる。過去の経済危機を観察したところでは、経済衰退期から脱け出すには一般に10年前後かかり、その後ようやく上昇軌道に乗る。この期間において危機を乗り切れる企業がどれくらいあるかは未知数である。

 このような状況の下でが、太陽光発電企業が改めて投資や融資を得ることは出来ない。「実力のない太陽光発電企業は閉鎖するのが最善の策だ。株式を買うのが早ければ早いほど商品の赤字が少なくなるのと同様に、資金を温存して経済回復に期待をかける方が良い。その上、太陽光発電業界のシャッフルも避けられないだろう」と李氏は言う。

 太陽光発電産業の債務が激増

 2011年はまだ太陽光発電市場が一定の成長を示し、そのため業界内の専門家は中国の太陽光発電産業には無秩序な成長という問題はあり、そのことは完全に外国の「反ダンピング・反補助金」や経済危機に理由を求めることは出来ないと見ていた。中国の太陽光発電企業は僅々7、8年の間で2,000社に増加していたが、これは未曾有のことであった。

 太陽光発電産業の飛躍的発展には多くの不健全な要素が内在していた。そのことは、中国の太陽光発電産業の「2つの頭」が海外にあり、到る所で制約されていたことに体現される。つまり、原材料とコアテクノロジーが外国からの輸入に依存し、製品は主に輸出に依存するということである。こうした要素は経済危機の時代に一層大きくなり、欧米の保護貿易主義の台頭により中国の輸出が阻害されることになったのも、こうした構造からの必然的な帰結であった。

 新エネルギーの概念は一貫して優位を占め、欧米の太陽光発電需要の堅調が続いていた中、中国の地方政府は次々と太陽光発電事業を立ち上げ、盲目的で秩序のない拡張を進めた。孟憲淦氏の説明によると、中国の太陽光発電企業が2,000社を超えるのに時間はかからず、多くの地方には太陽光発電産業パークが開設された。各産業パークは建設に1,000億元超の規模を要し、世界最大の産業パークになるケースさえあった。

 国家能源局新エネルギー・再生可能エネルギー司の史立山副司長は、中国の太陽光発電産業は単純労働に過ぎず、何のイノベーションもないと言う。太陽光発電産業は、産業界の真理の一つを証明したとも言われた。つまり、大部分のハイテク産業はまず欧米が風穴を開け、日本が洗練させ、韓国人と台湾が手頃な価格の製品を作り、最後に中国沿海地区が駄目にし、内陸地区が徹底的に駄目にするというものである。

 しかしながら、この間、上流のポリシリコンであれ、下流の太陽光発電システムであれ、いずれも価格はジェットコースターのような変動を見た。とりわけポリシリコンはもともと1キログラム数十ドルであったのが、中国のシステムメーカーが余りにも多くなったため、投機によってキロ500ドルまで上昇したが、中国の生産能力が拡大すると、今度はキロ20ドル余りにまで下がった。「実際中国は高い買い物をして、安く売るものだ」と孟憲淦氏は慨嘆する。

 太陽光発電マーケットの主要研究機関であるIMS Researchの最新レポートによると、2012年第1四半期のポリシリコン太陽光発電システムメーカーの平均利潤は1ワット当たりわずか9セントに下がり、2012年末にはさらに下がって7セントになるとも予想されている。太陽光発電企業の収益の余地にはさらに低下の圧力がかかり、債務の償還はますます困難になるだろう。

 《太陽光発電産業第12次5ヵ年発展規画》でも、第11次5ヵ年規画期に中国の太陽電池生産量が年平均100%の伸び率で発展したことを認めている。2007〜2010年は4年連続で生産量世界第1位となり、2010年の太陽電池生産量は約10GW、世界総生産量の50%を占めた。中国の太陽電池製品は90%以上が輸出されている。

 当面の太陽光発電産業の見通しに不確実性をもたらしているファクターは、EUの中国太陽光発電産業に対する「反ダンピング・反補助金」である。某太陽光発電企業の社長が記者に告げたところでは、EUの「反ダンピング・反補助金」という不確実性のため、投資家は太陽光発電所への投資を暫時見合わせている。もしEUからの「反ダンピング・反補助金」危機が無事解決すれば、太陽光発電の販売量と価格が保障され、形勢は大きく楽観出来る。

 債務が倒産ブームを加速

 生産能力の過剰は太陽光発電企業に大量死をもたらす根本的な原因になるが、債務は最終的に止めを刺す要素になるというのが業界内の共通認識である。

 太陽光発電産業は技術の更新が速く、企業の多くは自主建設を主としており、M&Aはあまり見られない。その上、M&Aでも生産能力の深刻な過剰という問題を解決することは不可能である。そのため、大規模な倒産ブームも最早遠い先の話ではないというのが業界の普遍的な認識である。

 孟憲淦氏が記者に告げたところによると、同氏が都市の地方政府の多くの官僚と意見交換を行った際、相手側はいずれも地元の太陽光発電企業が生き残ることに期待を表明したが、マーケットのキャパシティには限りがあり、今後は多数の企業が販路を得ることが出来ずに倒産するだろう。しかし、今や太陽光発電産業の長年の積弊はすでに集中爆発の時期に到っており、大規模な倒産ブームも最早遠い先の話ではないと、孟憲淦氏は認識している。

 国はその計画においても、多すぎる企業の存在を望んでいない。太陽光発電第12次5ヵ年規画もまた20社前後の基幹企業を形成して、基幹企業の拡大強化を支援することを提唱しており、2015年にはポリシリコンのリーディングカンパニーを5万トンクラスに、基幹企業を1万トンクラスのレベルにするとしている。また、太陽電池のリーディングカンパニーは5GWクラス、基幹企業は1GWクラスの水準にする。そして、年間売上高1,000億元超の太陽光発電企業を1社、500億元超の企業を3〜5社とし、年間売上高10億元の太陽光発電専用設備企業を3〜4社とする。

 業界関係者の説明によると、中国は第12次5ヵ年規画期に20社前後の太陽光発電企業を育成する意向であり、その中で1万トンクラス以上のポリシリコン企業を2社、5GWクラスの太陽光発電システム企業を2社前後、1GWクラスを10社前後形成することになる。しかしながら、同規画が最終的に公布された時にはそのリストは削除されていた。もっとも、太陽光発電企業はいずれも地方政府の利益に関わっており。中央政府の省庁がどのように関与するかも問題になっている。

 「中国の太陽光発電産業は勃興に急速に勃興したが、その滅亡も急速なものになる。僅々7年か8年で数千社が乱立し、しかも太陽光発電企業を有する都市は全国600都市の半分以上になる。このようなことは他のいかなる国にもない現象だ。結局、中国太陽光発電企業の大多数が死滅するのは必然なのだ」と、業界関係者の一人は記者に対して述べた。

 中国の家電メーカーやコンピューターメーカーを見ると、発展の当初は多くの企業を急速に生み出したが、一連の残酷な競争を経て生き残ったのは、実力の強いいくつかのリーディングカンパニーだけである。太陽光発電産業も決してその例に洩れない。他の産業と同じような発展プロセスを経ることになり、まず盲目的に発展して今度は生産能力過剰によって大量破産するという必然のコースを経た上で、然る後競争力を備える大企業が出現する。

 しかしながら、今回の調整において、業界関係者は政府に対して、自身の行為に注意するよう進言している。太陽光発電産業にこれほど大きな損失が生じたのには、政府がこれまで煽ってきた面も大きい。今は太陽光発電産業に対する過度の干渉を減らすべき時である。

 地方政府は太陽光発電産業の急速な発展を刺激してきたが、それもまたやむを得ない面があった。中央政府は地方政府に産業構造の調整やクリーン・エネルギーの開発を求めてきたが、地方政府はあれこれ見回したところ、様々な要求に適合するのが太陽光発電だけであると見て、蜂のように群がり、太陽光発電産業を大規模に発展させたのである。中央政府も全体的な思考を行うべきである。

 中央政府は当面太陽光発電産業に調整を施し、競争力を備える企業を形成しようとしているが、地方政府は誤りを正す必要があり、地元の太陽光発電企業に対して無用な輸血をすべきではない。太陽光発電市場のキャパシティは限られているのである。たとえ再輸血を行っても、全ての企業を生き残らせるのは不可能である。

(時代週報 8月23日)