9月6日、EUが中国の太陽光発電産業に対する反ダンピング調査に着手し、10月10日、米国商務省は中国が米国に輸出する太陽光発電製品のダンピングと補助金を認定し、18.32〜249.96%の反ダンピング税率と14.78〜15.97%の最終的な反補助金税率を設定した。 一方、中国政府は太陽光発電の梃入れに着手した。国家発展改革委員会エネルギー研究所の王斯成研究員が明らかにしたところによると、分散型太陽光発電デモンストレーションパークを推進するとともに、新エネルギー都市、未電化地区の電力建設、「金太陽」プロジェクト、太陽光発電建築等の面で新たな政策をスタートさせている。政府は新規太陽光発電事業に700億元を投入する可能性もある。 反ダンピング・反補助金措置は避け難い EUの関連する法的手続きによると、反ダンピング調査の期間は15ヵ月、反補助金調査を開始するのは反ダンピング調査の開始後になる。EUが基本認定を下すのは一般に6ヵ月後であり、臨時の懲罰措置を採るのは9ヵ月後になる。当然ながら調査においてダンピングや補助金の不存在が分かる可能性も排除しない。 米国JONES DAY弁護士事務所の在ブリュッセルパートナーであるRenato Antonini氏は、「中国企業が調査の対象になったのは、積極的な輸出政策と低すぎる労働コストが主な原因だ。輸出があまりにも急速に増加したことが必然的に保護貿易主義の台頭を引き起こすことになった一方で、低い労働コストがEU企業の競争力低下を招いた」との見方を示す。「もっと重要なのは、EUが未だ中国の市場経済地位を承認しておらず、国有企業は市場経済待遇を享受できないことだ。価格決定体制において相対的に受動的な局面に置かれている。反ダンピング・反補助金に遭うのも避け難い」。但し、Renato Antonini氏は、「こうした状況も2016年には緩和される見込みがある。その頃にEUが中国の市場経済地位を承認すると、中国企業はもっと多くのEU企業並びに産業のデータを獲得することが可能になり、企業自身のリスクコントロールにも役立つ」とも指摘する。 EUの税率は若干米国を下回る可能性も Renato Antonini氏は欧州委員会と欧州裁判所において、顧客の代理人としてEUの提起した反ダンピング・反補助金調査に度々関与してきた。同氏の分析によると、「最終的な税率は米国に準拠するが、EUの損害計算の幅は米国とは全く異なる」と分析している。 米国の課税はダンピングの程度を基準とし、もし損害があればダンピング税を課税し、損害がなければ課税しない。EUの課税は損害の程度を基準とし、例えばダンピングの程度が30%で、うち15%が損害をもたらしたとすれば、課税額は15%になる。これまでの慣例では、EUは反ダンピング製品に関税を追徴することはない。一方、米国は3ヵ月間遡って追徴する。「そのため、米国の裁定する税率がEUを上回ることは間違いない」と、Renato Antonini氏は指摘する。「EUは多くの諸国から構成されているので、産業チェーン別に影響を受けたかどうかや、各加盟国の具体的な状況も含め、調査過程において様々な配慮をしなければならない。同時にEUの各主権国家は貿易調査の裁決に対して拒否権を有している。このことは中国企業にとっては有利に働く」。統計によると、2011年の中国のPV輸出額は358億ドル近くに上ったが、うち60%以上が欧州市場に輸出され、輸出額は200億ドルを超えている。 中国政府は緊急救済策を策定 反補助金調査の一方で、政府は支援政策を頻発している。この点について、首都経貿大学産業経済研究所の陳及所長は、「政府が支援政策を策定することは欧米の反補助金調査に口実を与える。しかし、短期利益に着目すべきではなく、産業の長期的発展を見据えなければならない」と指摘する。 最近、国務院は相次いで、中国の太陽光発電産業の危機を解決しなければならないと表明している。中国電力企業聯合会、国家電網公司、工業情報化部、国家発展改革委員会、国家能源局や財政部は関連事業を始動しつつある。新たな政府投資は700億元に達する可能性もある。陳及氏は、「当面の環境の下で政府が緊急救済措置を講じなければ、中国の太陽光発電産業は壊滅的な打撃を受ける可能性もある。なぜなら、太陽光発電のような新興産業は、産業発展、新エネルギー市場の争奪、中国経済の構造調整などいずれの面にとっても極めて重要だからだ」と見ている。 米国の投資銀行Maxim Groupのレポートによると、中国のソーラー大手上位10社の債務は合計175億ドルに達しているが、そのことは産業全体が破産の瀬戸際にあることを示している。 (国際金融報 10月26日)
9月6日、EUが中国の太陽光発電産業に対する反ダンピング調査に着手し、10月10日、米国商務省は中国が米国に輸出する太陽光発電製品のダンピングと補助金を認定し、18.32〜249.96%の反ダンピング税率と14.78〜15.97%の最終的な反補助金税率を設定した。
一方、中国政府は太陽光発電の梃入れに着手した。国家発展改革委員会エネルギー研究所の王斯成研究員が明らかにしたところによると、分散型太陽光発電デモンストレーションパークを推進するとともに、新エネルギー都市、未電化地区の電力建設、「金太陽」プロジェクト、太陽光発電建築等の面で新たな政策をスタートさせている。政府は新規太陽光発電事業に700億元を投入する可能性もある。
反ダンピング・反補助金措置は避け難い
EUの関連する法的手続きによると、反ダンピング調査の期間は15ヵ月、反補助金調査を開始するのは反ダンピング調査の開始後になる。EUが基本認定を下すのは一般に6ヵ月後であり、臨時の懲罰措置を採るのは9ヵ月後になる。当然ながら調査においてダンピングや補助金の不存在が分かる可能性も排除しない。
米国JONES DAY弁護士事務所の在ブリュッセルパートナーであるRenato Antonini氏は、「中国企業が調査の対象になったのは、積極的な輸出政策と低すぎる労働コストが主な原因だ。輸出があまりにも急速に増加したことが必然的に保護貿易主義の台頭を引き起こすことになった一方で、低い労働コストがEU企業の競争力低下を招いた」との見方を示す。「もっと重要なのは、EUが未だ中国の市場経済地位を承認しておらず、国有企業は市場経済待遇を享受できないことだ。価格決定体制において相対的に受動的な局面に置かれている。反ダンピング・反補助金に遭うのも避け難い」。但し、Renato Antonini氏は、「こうした状況も2016年には緩和される見込みがある。その頃にEUが中国の市場経済地位を承認すると、中国企業はもっと多くのEU企業並びに産業のデータを獲得することが可能になり、企業自身のリスクコントロールにも役立つ」とも指摘する。
EUの税率は若干米国を下回る可能性も
Renato Antonini氏は欧州委員会と欧州裁判所において、顧客の代理人としてEUの提起した反ダンピング・反補助金調査に度々関与してきた。同氏の分析によると、「最終的な税率は米国に準拠するが、EUの損害計算の幅は米国とは全く異なる」と分析している。
米国の課税はダンピングの程度を基準とし、もし損害があればダンピング税を課税し、損害がなければ課税しない。EUの課税は損害の程度を基準とし、例えばダンピングの程度が30%で、うち15%が損害をもたらしたとすれば、課税額は15%になる。これまでの慣例では、EUは反ダンピング製品に関税を追徴することはない。一方、米国は3ヵ月間遡って追徴する。「そのため、米国の裁定する税率がEUを上回ることは間違いない」と、Renato Antonini氏は指摘する。「EUは多くの諸国から構成されているので、産業チェーン別に影響を受けたかどうかや、各加盟国の具体的な状況も含め、調査過程において様々な配慮をしなければならない。同時にEUの各主権国家は貿易調査の裁決に対して拒否権を有している。このことは中国企業にとっては有利に働く」。統計によると、2011年の中国のPV輸出額は358億ドル近くに上ったが、うち60%以上が欧州市場に輸出され、輸出額は200億ドルを超えている。
中国政府は緊急救済策を策定
反補助金調査の一方で、政府は支援政策を頻発している。この点について、首都経貿大学産業経済研究所の陳及所長は、「政府が支援政策を策定することは欧米の反補助金調査に口実を与える。しかし、短期利益に着目すべきではなく、産業の長期的発展を見据えなければならない」と指摘する。
最近、国務院は相次いで、中国の太陽光発電産業の危機を解決しなければならないと表明している。中国電力企業聯合会、国家電網公司、工業情報化部、国家発展改革委員会、国家能源局や財政部は関連事業を始動しつつある。新たな政府投資は700億元に達する可能性もある。陳及氏は、「当面の環境の下で政府が緊急救済措置を講じなければ、中国の太陽光発電産業は壊滅的な打撃を受ける可能性もある。なぜなら、太陽光発電のような新興産業は、産業発展、新エネルギー市場の争奪、中国経済の構造調整などいずれの面にとっても極めて重要だからだ」と見ている。
米国の投資銀行Maxim Groupのレポートによると、中国のソーラー大手上位10社の債務は合計175億ドルに達しているが、そのことは産業全体が破産の瀬戸際にあることを示している。
(国際金融報 10月26日)