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【石油・天然ガス】

【論説】石油・天然ガスをめぐる中国・カザフスタン・ロシアの三国志 (2007/12/10)
2007/12/11
中国【石油・天然ガス】

 中露の石油・天然ガス交渉は価格をめぐる隔たりが大きいため、出口が見えず、一方、中国がますます重視するようになった中央アジア地域は、石油・天然ガス資源の埋蔵が依然不透明である上、各国の勢力が進入し、石油・天然ガス競争は一層熾烈を極めている。12月5日から7日に北京で開催された中国・カザフスタン・ロシア石油フォーラムは石油・天然ガス資源をめぐる3国及び中央アジアの葛藤を浮き彫りにした。

 中国とロシアがイルクーツク州のコビクタガス田から中国への天然ガス供給で合意してからすでに18年になるが、中国への天然ガス輸出は未だに実現せず、同ガス田から欧州への供給計画も浮上している。ロシア政府は中国への天然ガス供給を再三にわたって承認してきたが、確実なガス源すらないのが現状である。ロシアは依然中国にとって信頼できる長期的なエネルギー協力パートナーではない。

 中露石油・天然ガス交渉が始まって久しいが、ロシアから中国への石油輸送は依然として鉄道に頼っている。中国現代国際関係研究院の夏義善研究員によると、鉄道による石油輸送は年間1,700万トンであるが、2009年に中露石油パイプライン(タイシェト−ナホトカ支線)が運転を開始すると、中露石油貿易量は年間3,000万トンになると中国側は期待を寄せる。

 しかし、建設をめぐって中露間の協議が続く天然ガスパイプラインは決して楽観を許さない。ロシアは西シベリアと東シベリアの2本の中国向け天然ガスパイプラインを建設して、年間600〜800億m3のガスを供給することになっているが、交渉が長引くばかりで、未だに結果が出ていない。

 協議が難航している原因は価格をめぐる隔たりにある。ロシアの天然ガス会社ガスプロムの副会長顧問Alexey Mastepanovによると、ガスプロムは2006年以降、天然ガス輸出価格の市場化を進めており、今後は石油価格を参考にして天然ガス契約価格を決定することになる。しかし、ロシアの欧州向け天然ガス輸出価格が250$/千m3であるのに対し、CNPCの希望価格は100$/千m3である。当然ながらこの価格はガスプロムにより拒絶された。

 中国とロシアの天然ガス価格をめぐる隔たりは、実質的には価格決定基準をめぐる隔たりである。ロンドンの研究機関Chatham HouseのKeun-Wook Paik研究員が明らかにしたところによると、ガスプロムがCNPCの希望価格を拒絶した理由は、CNPCの希望価格が液化天然ガス(LNG)価格ではなく、石炭価格を基準として決定されているからである。中国の広東LNG価格を基準にした場合はわずか3$/BTUであるが、上海LNG事業の価格で計算すると、6〜7$/BTUになり、さらにオーストラリアLNGの現在の価格は10$/BTUに上る。このような高い価格を基準にしたのでは、中国は支払うことは出来ない。

 価格の隔たり以外にも、政治的要因がからむ。ロシア国家エネルギー安全基金会長のKonstantin Simonovは、価格問題は極めて重要であるものの、最も根本的な要因は中露両国の相互の政治信頼が得られていないことにあると指摘し、ロシアが中国を戦略パートナーと見なせば、価格は問題ではなくなると説く。Paikもまた同じ見方をしており、ガスプロムは政策決定権を持たず、中露エネルギー協力はあくまで国家レベルの事項であり、クレムリンの態度を観察する必要があるとしている。

 問題は価格をめぐる隔たりだけではない。中国はロシアの天然ガス供給が需要に追いつかないのではないかと懸念している。ガスプロムの新事業には、Nord Stream、South Stream、コビクタ、サハリン2があるが、その中でNord StreamとSouth Streamは欧州向けであり、サハリン2の天然ガスはシェル、韓国及び日本に販売することが確定している。一方、コビクタは東シベリアで生産コストが最も安いガス田であり、ロシアは輸出に回すつもりはない。前出のPaikは、ロシアにとって極めて有利な価格での輸出が実現しない限り、コビクタから中国への天然ガス輸送の可能性はない。

 2007年9月、ロシア産業エネルギー省はガスプロムの「東方天然ガス計画」を承認した。この計画は、ヤクータ、サハリン、イルクーツク、クラスノヤルスクの開発を目的とし、2030年までに1,000億ドル投資することが計画されている。しかし、この地区では主に現地の民生需要を賄う他に、化学工場を建設して、石油化学製品4,500万トン、天然ガス化学製品9,100万トンの年産を実現する計画もある。

 中国にとって唯一可能性があるのはサハリン3であるが、しかし、サハリン3が生産を開始するのは早くとも2016年か2017年、最も遅い場合は2020年になる。2020年の中国の予想天然ガス消費量は2,500億m3に上るが、国内の生産量は1,500億m3に過ぎず、1,000億m3不足することになる。しかし、この不足分をロシアの天然ガスに頼るのは、中露の現状から見て現実的ではない。そのため、中国はロシアとの交渉を続けながら、中央アジアでも悪くない成果を得ている。

 中国とカザフスタンの石油パイプラインはすでに開通しており、年間輸送量は1,000万トンになる。長期目標は2,000万トンである。また、中国−カザフスタン天然ガスパイプラインは2009年に竣工する予定であり、年間輸送量は100億m3。さらに、2012年には第2期が竣工して中国への年間輸送量は最終的に300億m3に達する。

 また、中国はトルクメニスタンからウズベキスタン、カザフスタンを経て中国に到るパイプラインを建設し、トルクメニスタンから年間300億m3の天然ガスを輸入することでも合意した。CNPCはすでにトルクメニスタンにおいて天然ガスの探鉱と開発に着手している。

 しかし、BGグループの国際政府企業部長のMehmet Ogutcuは、カザフスタンにおける中国の投資規模が拡大すれば、カザフスタン国内の民族主義者の抵抗を引き起こし、将来中国がカザフスタンにおいて事業を拡大する上で懸念材料になると指摘する。

 また、中央アジアは欧州やアジアの大国による争奪戦の焦点となっている。カザフスタンは天然ガス資源が少ないものの、中東地区以外では最大の石油埋蔵地であり、埋蔵量では世界第5位である。また、トルクメニスタンやウズベキスタンが天然ガスを輸出する場合、必ずカザフスタンを経由しなければならない。カザフスタンとトルクメニスタンはカスピ海に面しているが、欧州に天然ガスを輸出する場合、ロシアを通過する必要があり、その輸出価格はロシアのコントロールを受ける。そのため、中国は中央アジア諸国にとって東側の最も重要な市場であり、ロシアとの平衡を図るバランサーになり得る。

 中国の中央アジア地域における活動に対して、前出のガスプロム副会長顧問Alexey Mastepanovは意に介さないとしているが、Paikによると、中国は中央アジアにおいて出色の成果を上げ、カザフスタンとトルクメニスタンを、ロシアとの平衡を図るバランサーとして巧妙に利用しており、ロシア側は焦慮を募らせている。

 これに対して、ロシアも反撃を強めている。2007年5月、ロシア大統領プーチン大統領が中央アジアを訪問した際、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの4ヶ国は既存のロシア向け「中央アジア・中央天然ガスパイプライン」の改造を進めるとともに、このパイプラインに沿ってカスピ海沿海ガスパイプラインを新たに敷設することを決定した。これにより、中央アジアの天然ガス輸出はより一層固定化されることになる。つまり、中国が中央アジアから石油・天然ガスの獲得を続ける上で障害が一層大きくなったのである。

 しかし、前出の夏義善は楽観的な見方を取っている。夏義善によると、中国とロシアの間にも、中国とカザフスタンの間にも相互補完的な利益が存在しており、石油・天然ガス分野の協力は重要な協力事業である。道のりは長いし、困難も生じるが、見通しは明るいと夏義善は述べた。

 (国際能源網 12月10日)