1. HOME
  2. 中国 【石炭】

中国
【石炭】

山西省が石炭三大改革実験に着手 (13/10/08)
2013/10/11
中国【石炭】

 2012年下半期以降、全国石炭市況は低落し、山西省では今年上半期、多数の炭鉱が赤字状態に陥り、石炭産業の利潤は60%下がった。

 《瞭望》新聞週刊の記者が山西省に取材した際には、多数の炭鉱企業の幹部が、需要不足のため多くの石炭生産能力の遊休が続き、石炭産業は少なくとも今後3〜5年、苦しい時期を送らなければならないと苦衷を訴えた。

 こうした情勢を受けて、今年7月26日、山西省は「石炭産業20ヵ条」を緊急に策定し、税・消費用の整理や石炭と電力の一体化等の措置により市場の下振れに対応しようとした。8月中旬になると、山西省は「低カロリー石炭発電20ヵ条」と「炭層ガス20ヵ条」を相次いで打ち出した。

 「2009年に実施された石炭資源統廃合と炭鉱の合併再編に比べると、今回の石炭産業『60ヵ条』はさらに深層レベルの改革になり、体制の三大障害の打開に重点を置いている」と、今回取材した専門家は指摘した。第1に「中央電力企業」と「地方石炭企業」の体制的な障害を打開して石炭と電力のウィン・ウィンの協力を推進すること、第2にエネルギー許認可体制の改革を模索すること、第3に「石炭鉱業権」と「ガス鉱業権」の分置を改革して炭層ガスの大規模な開発と利用を推進すること、である。

 石炭と電力のウィン・ウィンの協力推進

 山西省は石炭大省であるとともに電力大省でもあるが、「市場化された石炭と計画下にある電力」「中央電力企業と地方石炭企業」は長年にわたる「石炭と電力の争い」をもたらし、山西省は大きな害を被った。そのため、山西省は昨年以来、「石炭と電力の争い」の逐次解消を図り、市場を紐帯とする石炭と電力の一体化、石炭と電力の複合経営及び長期協力を推進してきた。

 山西省の主力火力発電企業34社の中で、石炭と電力の複合経営を行っている企業はすでに22社に上り、山西省の主力火力発電企業の設備容量のうち66.4%を占める。また、長期契約を結んでいる企業は17社で60.4%を占める。

 7月26日、山西省は「石炭産業20ヵ条」を公布し、石炭企業が電力、鉄鋼、コーキング等の重点需要家と長期契約を結ぶことを引き続き奨励することにした。8月8日にはこの政策は実質的な進展を遂げた。山西省の大手石炭企業グループと中国5大電力集団の発電用石炭中長期供給契約に続き、山西焦煤と大唐集団は石炭電力複合経営協力枠組協定に調印した。これは山西省にとって4番目の大型石炭電力複合経営事業となった。
 
 山西省社会科学院の潘雲副院長によると、石炭と電力の複合経営によって、石炭企業と電力企業は利益を共有して、石炭価格と電力価格の変動に対応する上で有利となり、国のエネルギー供給にも深遠な影響を与える。

 エネルギー許認可体制の改革

 ボタ等の低カロリー炭については、中国は長年にわたり主に堆積・廃棄・埋設の処置を取り、全国の堆積量は50億トンを超えている。これは資源浪費のみならず、環境汚染の原因にもなっている。山西省に堆積されたボタなどの低カロリー炭は10億トンに上るが、昨年発生した1.7億トンの低カロリー炭をすべて発電に利用したならば、高カロリー原炭1億トンの節減につながる。

 しかしながら、政策支援を欠いているため、山西省の低カロリー炭発電事業の発展は遅れを取っている。山西省発展改革委員会の統計によると、省の既存の発電設備容量5,800万kWの中で低カロリー炭発電設備はわずか8.4%に過ぎない。

 今年6月、国家能源局は山西省に対し、第12次5ヵ年規画期の低カロリー炭発電事業の計画部署と許認可を委任した。これは中国の電力事業の許認可において過去最大規模の委任になり、対象事業は2,000万kW近くに上る。

 山西省発展改革委員会の王賦主任によると、「低カロリー炭発電20ヵ条」は国の基準よりも高い10項目の参入条件を規定した。燃料輸送の距離、ボイラーの技術水準、燃料のカロリー水準、脱硫・脱硝及び除塵設備などが盛り込まれ、厳正な省エネ、節水など環境保護条件を体現している。同事業の第一陣の「通行手形」(事業の事前準備作業の展開に対する同意文書)が間もなく発給されることになる。

 計画によると、今後数年以内に山西省の発電設備容量は8,000万kWから1億kWに達し、その中で低カロリー炭発電設備は5分の1から4分の1、場合によってはそれ以上を占める。

 炭層ガスは「炭鉱ガス」という俗称もあり、炭鉱の安全にとっては最大の課題であるが、同時に高カロリーのクリーン・エネルギーでもある。中国の炭層ガス埋蔵量は約31.5兆m3、世界ランキングでは第3位。うち山西省の埋蔵量は全国の3分の1を占め、昨年の回収量は全国の46%、利用量では57%を占めた。

 中国の炭層ガス資源は豊かではあるが、昨年の全国炭層ガス生産量はわずか150億m3、利用量は60億m3に過ぎなかった。このようなギャップをもたらしている重要な要因はガス鉱業権と石炭鉱業権の分置である。

 過去の経緯や鉱業権許認可体制のため、炭層ガス鉱業権は国の関係官庁が許認可を行っている。山西省の炭層ガス鉱業権の多くは中央企業が所有しているが、石炭鉱業権は山西省所属の地方企業が所有している。ガス鉱業権と石炭鉱業権が長年にわたり分置されてきた結果、炭層ガスの大規模な開発と利用が難しい状況になっている。山西省は2つの鉱業権の一本化と総合開発という原則に従って、関連管理体制の改革を徹底するよう度々建議している。

 山西省発展改革委員会の王賦主任によると、国の関係官庁は山西省が炭層ガス鉱業権の二級管理実験の準備に着手することに同意した。山西省の「炭層ガス20ヵ条」は鉱業権管理改革に対して具体的な要求を打ち出しており、炭層ガス鉱業権と石炭鉱業権の分置問題と重複問題を根本的に解決することになる。

 また、王主任によると、山西省は炭層ガス鉱業権と石炭鉱業権の分置の面で解決の道筋を模索するだけでなく、性格の異なる企業が競争に参加するよう奨励し、民間炭層ガス創業投資基金の開設支援など様々な措置によって炭層ガスの大規模商業開発を実施することになる。

 山西省は同時にハイレベルの炭層ガス総合研究開発機関や炭層ガス鉱業権改革実験区を設け、太原と晋城に2大炭層ガス設備製造業基地を建設し、6大炭層ガス探査開発基地を形成し、5大炭鉱ガス回収利用パークを構築しなければならない。

 第12次5ヵ年規画期末には山西省の炭層ガス総生産能力は195億m3に達し、ガス化人口カバー率は2,000万人に達すると予想される。2020年には天然ガス、コークス炉ガス、SNG(石炭ガス化天然ガス)並びに炭層ガスの越境普及により、民生用分野において石炭からガスへの全面的な転換を実現する。

 (瞭望新聞週刊 10月8日)