中国の過去10年に及ぶ石炭輸出規制が来年1月1日から緩和される見込みである。情報によると、政策決定部門は石炭輸出への課税を来年から撤廃することを検討中である。 しかしながら、輸出規制の緩和は課税撤廃だけで実現するものではなく、より重要なことは、石炭産業の低迷が続く中、慎重かつゆっくりと輸出緩和と市場化の歩みを推進することである。さもないと、多数の中小石炭企業が次々と倒産し、産業全体に雪上霜を加えることになりかねない。 中国はかつて世界的な石炭輸出大国であり、2030年の輸出量は過去最高の9,388万トンに達した。しかし、同じ年に中国は石炭に対し厳重な輸出枠制を適用することにした。それ以前は、石炭輸出を奨励するため、基本的に必要に応じて石炭輸出枠を分配し、輸出量を制限することはなかった。その後、2006年には石炭輸出税還付制度を撤廃し、同じく2006年から石炭製品に対する輸出関税の追加課税を開始するとともに、課税幅を徐々に引き上げた。例えば、2008年8月にコークス輸出暫定税率は25%から40%に引き上げられ、原料炭輸出暫定税率は5%から10%に引き上げられた。さらに瀝青炭や褐炭等にも10%の暫定輸出関税が適用されることになった。 こうした一連の政策による影響を受けて、中国の石炭輸出量は年々減少し、2009年にはかつての石炭輸出大国から初めて石炭純輸入国に転じ、今なお純輸入状態が続いている。 叡能諮詢の首席顧問である李廷氏によると、中国が2004年以降に石炭輸出を緊縮するようになった主な原因は、中国の経済成長によって国内のエネルギー需要が急増したからである。 中投顧問のエネルギー産業研究員である任浩寧氏も、石炭は中国の一次エネルギーの70%近くを占める最も重要なエネルギーであり、国内需要を優先的に保証しなければならないと指摘した上で、過去の政策的引き締めは、石炭産業に対する外部環境からの過大な衝撃の防止を意図するものではなかったと述べた。 結局、エネルギーセキュリティの観点から、石炭輸出の制限が中国の長期的な戦略になったのである。 しかし、石炭産業の「黄金の10年」が終了し、石炭産業が長期持続的な低迷期に入ったことは争えない事実である。また、石炭の戦略的地位も最早以前ほど重要でなくなったということも直視しなければならない。石炭価格が下落し、石炭企業が未曾有の経営難に直面する中、石炭の深刻な過剰圧力をいったいどのようにして緩和すれば良いのか。多くの人は石炭輸出制限の緩和は優れた選択であると考えているが、果たしてその通りなのだろうか。 「石炭市場の供給過剰が生じた場合、企業や業界団体は国に対して石炭輸出政策を緩和するよう働きかける。しかし、輸出緩和が本当に生産能力過剰の緩和と企業経営への圧力軽減に役立つのかは別の問題だ」と李廷氏は言う。 現在石炭輸出権を有しているのは神華集団、中煤集団、五鉱集団、山西煤炭輸出入集団の4社だけであり、輸出税撤廃によって直接利益を受けるのもこの4社である。 そのため、「中国国内の石炭過剰の緩和に対する輸出税撤廃の効果は限られており、いずれにしても輸出枠は依然残っている」と任浩寧氏は言う。李廷氏もまた、「単に輸出税を撤回しても中国の石炭産業にとっては必ずしも良いことではない」と指摘する。同氏は、輸出税撤廃で利益を受けるのは輸出権を有する4社と日韓の電力企業だけであるとの見方を示し、「例えば大同の石炭は日韓の電力企業が優先的に選択する石炭源であり、多くの発電所は中国大同の石炭に基づいて設計されている。輸出税が撤廃されると、これら4社を通して石炭輸出の代理を行っている企業は『被害者』になる」と述べた。 現在、中国の石炭輸出管理は主に国営貿易、輸出枠、輸出関税といった側面に体現されている。中国は建国以来石炭輸出に対し一貫して国営貿易管理制を適用し、2001年のWTO加盟に際しても石炭輸出に国営貿易を適用することが関連条項に記載された。 李廷氏の考えでは、石炭輸出関税の撤廃に当たり、石炭輸出枠も同時に緩和して、国営貿易管理体制をさらに緩めなければならない。例えば、企業が合理的な価格で石炭輸出契約を結びさえすれば、関係政府部門は同じ数量の輸出枠を付与することで、上記の中央企業と国有企業4社以外にも一定の条件を満たす企業が一定量の石炭を輸出できるようにすべきである。「そうしてこそ、中国の各石炭企業に対し、出来る限り公平で平等な競争環境を提供することが出来る」と李廷氏は言う。 しかしながら、当面の中国経済をめぐる大きな環境の影響により、今後相当長期にわたり石炭産業の低迷が続くというのが業界関係者の普遍的な見方である。過去10年間の輸出と投資が牽引する経済成長方式はすでに持続不可能であり、今後比較的長期にわたり経済成長が比較的低い水準に止まる確率が高く、中国の石炭需要が急成長の勢いを取り戻すことは難しいというのが業界の共通の認識になっていると、李廷氏は指摘する。 一方、世界的な省エネ・排出削減や中国国内の環境保護圧力の拡大、代替エネルギーの急速な発展などで、将来の石炭需要の増加はますます制約を受けることになる。 李廷氏によると、中国の石炭の市場化レベルが日増しに高くなり、国内外の石炭市場の一体化も進んでいることを考えると、石炭輸出規制の緩和によって、石炭企業に公平で平等な競争環境を与え、企業が国際市場競争に自由に参加することを可能にする。 任浩寧氏もまた、中国の石炭企業のために公平で平等な競争環境を創造することが極めて重要であり、そのことは石炭産業の市場化の重要な象徴になるとして、「輸出規制の緩和や石炭価格と電力価格の連動はいずれも市場化を推進する上で正しい方向性だ」と述べた。 しかしながら、石炭産業が最も低迷している時期に政府が市場化を加速し、企業も市場化に邁進することになれば、多くの中小石炭企業は次々に倒産し、産業集中度はさらに高まることになる。 「実際、石炭産業には現在多くの問題が生じている。政府は相当大きな責任を負わなければならない。現在、企業をこぞって市場に邁進させることは極めて不公平である。その上、石炭産業の市場化の可否は、火力発電、鉄鋼、非鉄金属等の産業にかかっている。これらの産業の構造調整や老朽化生産能力の淘汰は石炭産業に直接的かつ莫大な影響を及ぼす」と任浩寧氏は言う。そのため、業界関係者の多くは、中小石炭企業が最も困難な時期を乗り切ることが出来るよう、政府はこれら企業の他業種への転換をいかにして誘導するかに重点を置いて、性急に市場化を推進しないようにしなければならない。 任浩寧氏は、「もし石炭市場を直ちに完全開放すれば、中小企業にとってますます不利になり、開放すればするほど一層深刻になる。そのため、政府は実力の低い企業が市場から退出して他の業種に転向するよう誘導する一方、優越する大中型企業を残して市場化プロセスをさらに推進するようにしなければならない」と提言した。 (中国科学報 10月23日)
中国の過去10年に及ぶ石炭輸出規制が来年1月1日から緩和される見込みである。情報によると、政策決定部門は石炭輸出への課税を来年から撤廃することを検討中である。
しかしながら、輸出規制の緩和は課税撤廃だけで実現するものではなく、より重要なことは、石炭産業の低迷が続く中、慎重かつゆっくりと輸出緩和と市場化の歩みを推進することである。さもないと、多数の中小石炭企業が次々と倒産し、産業全体に雪上霜を加えることになりかねない。
中国はかつて世界的な石炭輸出大国であり、2030年の輸出量は過去最高の9,388万トンに達した。しかし、同じ年に中国は石炭に対し厳重な輸出枠制を適用することにした。それ以前は、石炭輸出を奨励するため、基本的に必要に応じて石炭輸出枠を分配し、輸出量を制限することはなかった。その後、2006年には石炭輸出税還付制度を撤廃し、同じく2006年から石炭製品に対する輸出関税の追加課税を開始するとともに、課税幅を徐々に引き上げた。例えば、2008年8月にコークス輸出暫定税率は25%から40%に引き上げられ、原料炭輸出暫定税率は5%から10%に引き上げられた。さらに瀝青炭や褐炭等にも10%の暫定輸出関税が適用されることになった。
こうした一連の政策による影響を受けて、中国の石炭輸出量は年々減少し、2009年にはかつての石炭輸出大国から初めて石炭純輸入国に転じ、今なお純輸入状態が続いている。
叡能諮詢の首席顧問である李廷氏によると、中国が2004年以降に石炭輸出を緊縮するようになった主な原因は、中国の経済成長によって国内のエネルギー需要が急増したからである。
中投顧問のエネルギー産業研究員である任浩寧氏も、石炭は中国の一次エネルギーの70%近くを占める最も重要なエネルギーであり、国内需要を優先的に保証しなければならないと指摘した上で、過去の政策的引き締めは、石炭産業に対する外部環境からの過大な衝撃の防止を意図するものではなかったと述べた。
結局、エネルギーセキュリティの観点から、石炭輸出の制限が中国の長期的な戦略になったのである。
しかし、石炭産業の「黄金の10年」が終了し、石炭産業が長期持続的な低迷期に入ったことは争えない事実である。また、石炭の戦略的地位も最早以前ほど重要でなくなったということも直視しなければならない。石炭価格が下落し、石炭企業が未曾有の経営難に直面する中、石炭の深刻な過剰圧力をいったいどのようにして緩和すれば良いのか。多くの人は石炭輸出制限の緩和は優れた選択であると考えているが、果たしてその通りなのだろうか。
「石炭市場の供給過剰が生じた場合、企業や業界団体は国に対して石炭輸出政策を緩和するよう働きかける。しかし、輸出緩和が本当に生産能力過剰の緩和と企業経営への圧力軽減に役立つのかは別の問題だ」と李廷氏は言う。
現在石炭輸出権を有しているのは神華集団、中煤集団、五鉱集団、山西煤炭輸出入集団の4社だけであり、輸出税撤廃によって直接利益を受けるのもこの4社である。
そのため、「中国国内の石炭過剰の緩和に対する輸出税撤廃の効果は限られており、いずれにしても輸出枠は依然残っている」と任浩寧氏は言う。李廷氏もまた、「単に輸出税を撤回しても中国の石炭産業にとっては必ずしも良いことではない」と指摘する。同氏は、輸出税撤廃で利益を受けるのは輸出権を有する4社と日韓の電力企業だけであるとの見方を示し、「例えば大同の石炭は日韓の電力企業が優先的に選択する石炭源であり、多くの発電所は中国大同の石炭に基づいて設計されている。輸出税が撤廃されると、これら4社を通して石炭輸出の代理を行っている企業は『被害者』になる」と述べた。
現在、中国の石炭輸出管理は主に国営貿易、輸出枠、輸出関税といった側面に体現されている。中国は建国以来石炭輸出に対し一貫して国営貿易管理制を適用し、2001年のWTO加盟に際しても石炭輸出に国営貿易を適用することが関連条項に記載された。
李廷氏の考えでは、石炭輸出関税の撤廃に当たり、石炭輸出枠も同時に緩和して、国営貿易管理体制をさらに緩めなければならない。例えば、企業が合理的な価格で石炭輸出契約を結びさえすれば、関係政府部門は同じ数量の輸出枠を付与することで、上記の中央企業と国有企業4社以外にも一定の条件を満たす企業が一定量の石炭を輸出できるようにすべきである。「そうしてこそ、中国の各石炭企業に対し、出来る限り公平で平等な競争環境を提供することが出来る」と李廷氏は言う。
しかしながら、当面の中国経済をめぐる大きな環境の影響により、今後相当長期にわたり石炭産業の低迷が続くというのが業界関係者の普遍的な見方である。過去10年間の輸出と投資が牽引する経済成長方式はすでに持続不可能であり、今後比較的長期にわたり経済成長が比較的低い水準に止まる確率が高く、中国の石炭需要が急成長の勢いを取り戻すことは難しいというのが業界の共通の認識になっていると、李廷氏は指摘する。
一方、世界的な省エネ・排出削減や中国国内の環境保護圧力の拡大、代替エネルギーの急速な発展などで、将来の石炭需要の増加はますます制約を受けることになる。
李廷氏によると、中国の石炭の市場化レベルが日増しに高くなり、国内外の石炭市場の一体化も進んでいることを考えると、石炭輸出規制の緩和によって、石炭企業に公平で平等な競争環境を与え、企業が国際市場競争に自由に参加することを可能にする。
任浩寧氏もまた、中国の石炭企業のために公平で平等な競争環境を創造することが極めて重要であり、そのことは石炭産業の市場化の重要な象徴になるとして、「輸出規制の緩和や石炭価格と電力価格の連動はいずれも市場化を推進する上で正しい方向性だ」と述べた。
しかしながら、石炭産業が最も低迷している時期に政府が市場化を加速し、企業も市場化に邁進することになれば、多くの中小石炭企業は次々に倒産し、産業集中度はさらに高まることになる。
「実際、石炭産業には現在多くの問題が生じている。政府は相当大きな責任を負わなければならない。現在、企業をこぞって市場に邁進させることは極めて不公平である。その上、石炭産業の市場化の可否は、火力発電、鉄鋼、非鉄金属等の産業にかかっている。これらの産業の構造調整や老朽化生産能力の淘汰は石炭産業に直接的かつ莫大な影響を及ぼす」と任浩寧氏は言う。そのため、業界関係者の多くは、中小石炭企業が最も困難な時期を乗り切ることが出来るよう、政府はこれら企業の他業種への転換をいかにして誘導するかに重点を置いて、性急に市場化を推進しないようにしなければならない。
任浩寧氏は、「もし石炭市場を直ちに完全開放すれば、中小企業にとってますます不利になり、開放すればするほど一層深刻になる。そのため、政府は実力の低い企業が市場から退出して他の業種に転向するよう誘導する一方、優越する大中型企業を残して市場化プロセスをさらに推進するようにしなければならない」と提言した。
(中国科学報 10月23日)