10月22日、中露両国は石油、天然ガス及び電力等のエネルギー分野で一連の協力協定に調印したが、意外なことに石炭関連の協定は結ばれなかった。ロシア連邦議会エネルギー委員会のイワン・グラチョフ議長は「中国経済導報」紙記者の質問に対し、「ロシアの対中石炭輸出計画は年間1,500万トンで、この数量は確かに多くはない」としながら、「中国側はロシアに対し毎年1,000万トン以上石炭輸出を増やすよう提案したが、ロシアにとっては現有の輸送能力でこの要求に応えることは不可能だ」と述べた。 ロシア鉄道は連邦政府の資金援助を受け、5,600億ルーブル(約1,061.2億元)を投資してバイカル〜アムール河鉄道を建設し、もって石炭輸送のボトルネックを緩和することになる。 中露石炭貿易は、2008年はわずか100万トンであったのが、今や年間1,500万トンに飛躍的に拡大した。しかしながら、ロシア側から見て、これは第一歩に過ぎず、石炭の深加工輸出こそが未来の主要な方向性になる。 石炭市場のコメンテーターは「ロシアの石炭輸出には輸送面のボトルネックがある。石炭輸入においては輸送と輸送費の要素を考慮に入れる必要がある」と言う。また、石炭産業アナリストは「ロシア極東の鉄道輸送力はすでに飽和に近付いており、しかも施設は老朽化し、輸送力が不足している」と付言した。 ロシアの石炭埋蔵量は世界の石炭資源の約30%を占め、石炭確認埋蔵量は1,933億トンで世界第2位。しかもその80%は西シベリア東南部と東シベリア石炭賦存盆地に分布し、約10%は極東ヤクート南部石炭賦存盆地に分布している。つまり、ロシアの石炭生産地の大部分は極東地区であり、地理的位置から言えば中国への輸出が相対的に便利である。しかしながら、ロシア極東地区の石炭はこれまで大規模な開発が行われていなかった。 ロシア極東と東シベリア地区は広大であり、気候と地質条件が劣悪なため、鉄道建設は容易なことではない。ロシアの鉄道建設は1キロにつき150万ドルが必要であり、国際平均価格の60〜80万ドルをはるかに上回る。しかし、今年1〜10月にロシアの鉄道による石炭発送量は2.8%増え、しかも新たな鉄道路線として琿春−マハリノ線が開かれた。ロシア連邦議会エネルギー委員会のイワン・グラチョフ議長は「現在の両国間の1,500万トンという貿易量は不十分だ。将来は2,500万トンかそれ以上に増やすことが出来る。石炭物流能力を引き上げることは解決すべき課題だ」と強調した。 ロシア連邦工商会石炭事業開発委員会のアンドレイ・チューリン議長によると、ロシア鉄道会社は連邦政府の資金援助を受けてバイカル〜アムール河鉄道を建設する。総投資額は5,600億ルーブル。これより先、ロシアと中国はアムール河鉄道橋の建設で合意文書に調印した。ロシア側の建設投資は90億ルーブルになる。「中露石炭貿易にとって、最もポテンシャルと経済性がある輸送方式は鉄道だ。中国側がこの分野に参入して投資することを歓迎する」とアンドレイ・チューリン議長は述べた。石炭輸送の可能性のあるもう一つの方式は海運である。イワン・グラチョフ議長は、「ロシアは極東地区の2つの大型港湾への投資を進めている。取扱量はそれぞれ1,200万トンと2,000万トンになる。これにより、サハリン地区の石油ガスと石炭の大規模開発が急速に進む」と述べた。但し、ロシア極東地区の大型港湾は厳冬期には正常な運営が不可能になり、しかも港湾に到る鉄道状況も極東地区の石炭輸送港湾開発を制約する要因になる。 ロシアが石炭輸送力の面で積極的な動きを示しているのは、石炭の買い手を探すよう迫られていることが背景にある。米国の「シェールガス革命」の成功により、余った米国の石炭がロシアの伝統的な石炭輸出市場に割り込むことになった。同時に欧州の石炭消費量が短期間で大幅に向上する可能性はなく、ロシア炭の西への輸出は制約されている。また、環境保護のため近年の欧州には石炭消費を制限する傾向もある。石炭産業アナリストは「ロシアから輸入する石炭は主に中国東北地区と華北地区への供給が中心になる。ロシアからの大量の石炭輸入が中国の市場価格に衝撃を与えるかどうか、その鍵はロシア側の石炭価格にかかっている。ロシア炭の価格上の優位が顕著であれば、必然的に多くの川下企業が輸入することになる」と言う。実際、ロシア炭の価格は国際価格が高い場合、価格上の優位が際立っている。しかし、近年国際石炭価格の下落に伴い、特に新エネルギーの使用やシェールガスの開発により、ロシアが石炭輸出を急増させることは難しくなっている。また、ロシアが石炭貿易における自身の位置付けを転換するよう努めていることも注目に値する。ロシアが単純な初級製品の輸出国に甘んじないことは明らかであり、ロシアはもっと長期的な目標に向けて邁進している。「石炭資源を輸出するよりも、石炭を電力に転換して輸出するといった方式の方がずっと容易だ。ロシアは石炭の深加工を強化するよう希望している」とイワン・グラチョフ議長は言う。 また、ロシア石炭産業従業者独立労働組合のイワン・モハナチューク議長は「ロシアは中国資本との協力強化を望んでいるが、それよりももっと関心があるのは石炭採掘機械と精錬技術の輸入だ。ロシアは中国側がロシアの原炭を輸入するだけでなく、クリーン・エネルギー技術分野の協力強化も含めて、精錬加工の面でもより高度の協力を行うよう希望する」とした。 (中国経済導報 11月4日)
10月22日、中露両国は石油、天然ガス及び電力等のエネルギー分野で一連の協力協定に調印したが、意外なことに石炭関連の協定は結ばれなかった。ロシア連邦議会エネルギー委員会のイワン・グラチョフ議長は「中国経済導報」紙記者の質問に対し、「ロシアの対中石炭輸出計画は年間1,500万トンで、この数量は確かに多くはない」としながら、「中国側はロシアに対し毎年1,000万トン以上石炭輸出を増やすよう提案したが、ロシアにとっては現有の輸送能力でこの要求に応えることは不可能だ」と述べた。
ロシア鉄道は連邦政府の資金援助を受け、5,600億ルーブル(約1,061.2億元)を投資してバイカル〜アムール河鉄道を建設し、もって石炭輸送のボトルネックを緩和することになる。
中露石炭貿易は、2008年はわずか100万トンであったのが、今や年間1,500万トンに飛躍的に拡大した。しかしながら、ロシア側から見て、これは第一歩に過ぎず、石炭の深加工輸出こそが未来の主要な方向性になる。
石炭市場のコメンテーターは「ロシアの石炭輸出には輸送面のボトルネックがある。石炭輸入においては輸送と輸送費の要素を考慮に入れる必要がある」と言う。また、石炭産業アナリストは「ロシア極東の鉄道輸送力はすでに飽和に近付いており、しかも施設は老朽化し、輸送力が不足している」と付言した。
ロシアの石炭埋蔵量は世界の石炭資源の約30%を占め、石炭確認埋蔵量は1,933億トンで世界第2位。しかもその80%は西シベリア東南部と東シベリア石炭賦存盆地に分布し、約10%は極東ヤクート南部石炭賦存盆地に分布している。つまり、ロシアの石炭生産地の大部分は極東地区であり、地理的位置から言えば中国への輸出が相対的に便利である。しかしながら、ロシア極東地区の石炭はこれまで大規模な開発が行われていなかった。
ロシア極東と東シベリア地区は広大であり、気候と地質条件が劣悪なため、鉄道建設は容易なことではない。ロシアの鉄道建設は1キロにつき150万ドルが必要であり、国際平均価格の60〜80万ドルをはるかに上回る。しかし、今年1〜10月にロシアの鉄道による石炭発送量は2.8%増え、しかも新たな鉄道路線として琿春−マハリノ線が開かれた。ロシア連邦議会エネルギー委員会のイワン・グラチョフ議長は「現在の両国間の1,500万トンという貿易量は不十分だ。将来は2,500万トンかそれ以上に増やすことが出来る。石炭物流能力を引き上げることは解決すべき課題だ」と強調した。
ロシア連邦工商会石炭事業開発委員会のアンドレイ・チューリン議長によると、ロシア鉄道会社は連邦政府の資金援助を受けてバイカル〜アムール河鉄道を建設する。総投資額は5,600億ルーブル。これより先、ロシアと中国はアムール河鉄道橋の建設で合意文書に調印した。ロシア側の建設投資は90億ルーブルになる。「中露石炭貿易にとって、最もポテンシャルと経済性がある輸送方式は鉄道だ。中国側がこの分野に参入して投資することを歓迎する」とアンドレイ・チューリン議長は述べた。石炭輸送の可能性のあるもう一つの方式は海運である。イワン・グラチョフ議長は、「ロシアは極東地区の2つの大型港湾への投資を進めている。取扱量はそれぞれ1,200万トンと2,000万トンになる。これにより、サハリン地区の石油ガスと石炭の大規模開発が急速に進む」と述べた。但し、ロシア極東地区の大型港湾は厳冬期には正常な運営が不可能になり、しかも港湾に到る鉄道状況も極東地区の石炭輸送港湾開発を制約する要因になる。
ロシアが石炭輸送力の面で積極的な動きを示しているのは、石炭の買い手を探すよう迫られていることが背景にある。米国の「シェールガス革命」の成功により、余った米国の石炭がロシアの伝統的な石炭輸出市場に割り込むことになった。同時に欧州の石炭消費量が短期間で大幅に向上する可能性はなく、ロシア炭の西への輸出は制約されている。また、環境保護のため近年の欧州には石炭消費を制限する傾向もある。石炭産業アナリストは「ロシアから輸入する石炭は主に中国東北地区と華北地区への供給が中心になる。ロシアからの大量の石炭輸入が中国の市場価格に衝撃を与えるかどうか、その鍵はロシア側の石炭価格にかかっている。ロシア炭の価格上の優位が顕著であれば、必然的に多くの川下企業が輸入することになる」と言う。実際、ロシア炭の価格は国際価格が高い場合、価格上の優位が際立っている。しかし、近年国際石炭価格の下落に伴い、特に新エネルギーの使用やシェールガスの開発により、ロシアが石炭輸出を急増させることは難しくなっている。また、ロシアが石炭貿易における自身の位置付けを転換するよう努めていることも注目に値する。ロシアが単純な初級製品の輸出国に甘んじないことは明らかであり、ロシアはもっと長期的な目標に向けて邁進している。「石炭資源を輸出するよりも、石炭を電力に転換して輸出するといった方式の方がずっと容易だ。ロシアは石炭の深加工を強化するよう希望している」とイワン・グラチョフ議長は言う。
また、ロシア石炭産業従業者独立労働組合のイワン・モハナチューク議長は「ロシアは中国資本との協力強化を望んでいるが、それよりももっと関心があるのは石炭採掘機械と精錬技術の輸入だ。ロシアは中国側がロシアの原炭を輸入するだけでなく、クリーン・エネルギー技術分野の協力強化も含めて、精錬加工の面でもより高度の協力を行うよう希望する」とした。
(中国経済導報 11月4日)