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【石油・天然ガス】

10年間にわたった中露天然ガス交渉がようやく妥結 4,000億ドルの巨額契約に調印 (14/05/22)
2014/5/23
中国【石油・天然ガス】

 5月21日、国家発展改革委員会副主任兼能源局長の呉新雄とロシア連邦エネルギー相ノヴァクは中露両国政府を代表して《中露東ルート天然ガス協力事業覚書》に調印し、また、中国石油天然ガス集団(CNPC)の周吉平董事長(会長)とロシアGazpromのミレル社長が《中露東ルート天然ガス売買契約》に調印、これにより10年もの長きにわたった中露両国間の天然ガス供給交渉はようやく妥結した。

 今回の契約に基づき、ロシアは中露天然ガスパイプライン東ルートを通して中国への天然ガス供給を開始する。ガス輸送量は年々増やしていき、最終的には年間380億m3とし、供給期間は30年とする。契約額は総額4,000億ドルに上る。

 また、今回の契約では、ロシア東シベリアのイルクーツク州にあるコビクタガス田とサハ共和国にあるチャヤンダガス田を主なガス供給源とすることも約定された。Gazpromはガス田開発、天然ガス処理施設及びロシア国内のパイプラインの建設の責務を負う。一方、CNPCは中国国内のガスパイプラインの敷設とガス貯蔵タンクなど付帯施設の建設を行う。

 中露天然ガス協力によって、ロシアは極東地区の経済社会発展並びに極東地区における石油ガス資源開発を加速し、輸出先の多元化を実現することになる。ロシア産ガスは、中国の東北、北京・天津・河北地区及び長江デルタ地区を主な市場とし、増大する中国国内のエネルギー消費を満たすとともに、大気環境の改善、エネルギー利用構造の最適化、エネルギー輸入先の多元化にも一役買う。また、パイプライン沿線地区の関連産業の発展も促進することになる。

 今回の中露協力の影響について、卓創資訊のエネルギー産業アナリストである王暁坤氏は、天然ガスに関して真っ先に影響が及ぶのはパイプラインの建設や保守等の企業であると指摘する。中露双方が天然ガス供給を実現するにはパイプラインの開通が先決条件になるからである。また、CNPCが把握するガス源の比率が上昇することになる。さらに都市ガス企業については、特に東北など天然ガスが不足している地区では、今後、民生用や工業用で「煤改気」や「油改気」(石炭、石油から天然ガスへの燃料転換)等が実現し、現地の都市ガス企業が台頭する。

 また、天然ガスが取って代わることで石炭や石油製品の消費が圧迫される可能性もあり、関連企業にも一定の影響が及ぶだろう。

 但し、中露双方の最大の争点が依然価格と天然ガスパイプラインの継続建設問題であることには注意を要する。中国への天然ガス供給価格は商業機密であり、未だ公表されていない。

 王暁坤氏は、双方が今回合意したパイプラインガス価格は1m3当たり1.9〜2.4元前後になるとの見方を示し、全国の民生用ガス価格と比較すると逆さやが生じることになり、全体として中国の天然ガスコストを押し上げると予想する。

 また、王暁坤氏によると、2013年の中国の一次エネルギー消費構造の中で天然ガスの占める比率はわずか5.7%であったが、今回のような大規模な天然ガス供給が2013年に実現していたと仮定すると、その比率は8%に達する。ロシアの天然ガスは中国のエネルギー消費構造の最適化に資することになり、当面の大気環境の改善にも大きな貢献を果たす。300億m3の天然ガス供給が実現すると、中国の一次エネルギー構造の最適化が大きく進むことになる。

 (中国経済新聞 5月22日)