11月19日に公布された《エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)》は、「省エネ・クリーン・安全」の戦略方針を堅持し、クリーン、高効率、安全で持続可能な現代的エネルギーシステムを構築することを打ち出している。1万字からなり、6年間に跨る今回の行動計画について、専門家に取材して整理を行った。 エネルギー消費総量の抑制とエネルギーセキュリティ 中国は今や世界最大のエネルギー消費国であり、エネルギー生産と消費の急増に伴い、環境汚染とエネルギーセキュリティ問題がますます突出するようになった。今回の行動計画は、省エネ優先、国内立脚、グリーン・低炭素、イノベーション駆動の4大戦略を打ち出している。 省エネ優先戦略とは、エネルギー効率の向上に力を入れ、エネルギー消費総量を抑制することである。2020年には一次エネルギー消費総量を約48億tce(標準炭換算トン)に抑制し、石炭消費総量を約42億トンに抑制する。 「これは実務的な目標であり、実現しなければならない目標だ」と中国工業経済連合会の李毅中会長は指摘する。中国のエネルギー消費は世界の21.5%を占めているが、GDPは世界の12.3%に止まり、単位GDP当たりのエネルギー消費は非常に高い。2020年のエネルギー消費を48億tce以下に抑えようとするなら、今後数年、一次エネルギー消費総量の年間伸び率を3.5%以下に抑えることが必要になる。 一方、中国のエネルギーセキュリティ問題はますます突出し、エネルギー対外依存度が上昇している。中国は石炭、石油、天然ガス、ウランの純輸入国であり、石油対外依存度は60%、天然ガス対外依存度は30%を超えている。 そのため、行動計画は2020年の国内エネルギー総生産量を42億tceとし、エネルギー自給率を85%前後に維持することを明確にしている。 行動計画が在来型天然ガスの探査開発を加速させ、年産100億m3以上の大型天然ガス生産基地8か所の建設を打ち出していることは要注目である。2020年には新規天然ガス確認原始埋蔵量を5.5兆m3、在来型天然ガス年産量を1,850億m3とする。同時にシェールガスと炭層ガス開発で重点的に打開を図り、2020年にはシェールガス生産量を300億m3超とし、炭層ガス生産量については300億m3を目指す。 石炭消費の抑制とエネルギー構造の最適化 中国のエネルギーの構造的な矛盾は際立っている。中国エネルギー研究会の周大地副理事長によると、中国のエネルギー構造は石炭が中心であり、開発利用方式は粗放型である。主要汚染物と温暖化ガス排出量では世界の上位グループに入っている。 そのため、行動計画は、天然ガス、原子力発電、再生可能エネルギー等のクリーン・エネルギーを積極的に発展させること、石炭消費の比率を下げること、エネルギー構造の持続的な最適化を推進することを打ち出している。2020年には一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率を15%とし、天然ガスの比率を10%以上とする。一方、石炭消費の比率は62%以下に抑える。 石炭消費の抑制については、行動計画は特に北京・天津・河北地区、長江デルタ地区、珠江デルタ地区等の石炭消費総量を削減しなければならないとしている。2020年には北京・天津・河北・山東の4つの省・直轄市の石炭消費を2012年比で1億トン純減させ、長江デルタと珠江デルタについては石炭消費総量のマイナス成長を実現する。 呉新雄国家能源局長は先日、全国第13次5ヵ年規画工作会議において次のように説明した。中国のエネルギー構造の中で化石エネルギーの比率はあまりにも高い。石炭消費の比率は66%に達し、世界平均水準を35.8ポイント上回っている。一方、エネルギー消費総量に占める非化石エネルギーの比率はわずか9.8%に過ぎない。2020年に非化石エネルギーの比率を15%にするという目標を達成することは極めて難しいものがある。 クリーン・エネルギー開発利用の具体的目標 2020年には一次エネルギーに占める天然ガスの比率を10%以上に高める。ガス化都市民生プロジェクトを実施し、2020年までに都市住民が基本的に天然ガスを利用できるようにする。 原子力発電の安全な発展を進め、国際的に最高の安全基準を採用して安全を確保することを前提に、東部沿海地区において原子力発電所の建設を適時再開するとともに、内陸部の原子力発電所建設についても研究と実証を展開する。2020年には原子力発電設備容量を5,800万kWとし、建設中の設備容量を3,000万kW以上とする。 再生可能エネルギーの発展に力を入れる。在来型水力発電設備容量を3.5億kW、風力発電設備容量を2億kWとし、電力価格が石炭火力発電の系統連系価格に相当するようにする。太陽光発電設備を1億kW前後とし、価格が電力グリッドの小売電力価格に相当するようにする。地熱エネルギーの利用規模を5,000万tceとする。 エネルギー体制改革の推進 エネルギー体制改革を深化させることは、現代的エネルギーシステムを確立し、国のエネルギーセキュリティを確保する上で制度的な保障になる。国務院発展研究センター資源環境政策研究所の高世楫所長によると、エネルギー体制革命の重要な内容として、エネルギー監督管理体制や環境監督管理体制を速やかに完備すること、エネルギー監督管理の有効性と効率を高めること、エネルギー市場競争を促進すること、公正な市場秩序を維持することが挙げられる。 今回の行動計画はエネルギー価格改革を推進しなければならないとしている。石油、天然ガス、電力等の価格改革を推進し、競争的なプロセスにおいて価格を自由化する。天然ガス井戸元価格及び販売価格、売電価格及び小売電力価格が市場を通して形成されるようにする。送配電価格と石油ガスパイプラインタリフについては政府が決定する。 同時に、重点分野と重要プロセスの改革を深化させ、電力体制改革をスピードアップする。需給両サイドの直接取引を推進して、競争的な電力取引市場を構築する。 エネルギー監督管理の面については、行動計画は、エネルギーの発展戦略、計画、政策、標準等の制定と実施を強化すること、行政の簡素化と権限移管を急ぐこと、行政許認可項目の撤廃と移管を引き続き進めることを打ち出している。エネルギー監督管理を強化し、監督管理組織体系と法規体系を健全なものにする。監督管理方式を刷新し、監督管理の効能を高め、公平で構成な市場秩序を維持して、エネルギー産業の健全な発展のために良好な環境を創出する。 (中国政府網 11月19日)
11月19日に公布された《エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)》は、「省エネ・クリーン・安全」の戦略方針を堅持し、クリーン、高効率、安全で持続可能な現代的エネルギーシステムを構築することを打ち出している。1万字からなり、6年間に跨る今回の行動計画について、専門家に取材して整理を行った。
エネルギー消費総量の抑制とエネルギーセキュリティ
中国は今や世界最大のエネルギー消費国であり、エネルギー生産と消費の急増に伴い、環境汚染とエネルギーセキュリティ問題がますます突出するようになった。今回の行動計画は、省エネ優先、国内立脚、グリーン・低炭素、イノベーション駆動の4大戦略を打ち出している。
省エネ優先戦略とは、エネルギー効率の向上に力を入れ、エネルギー消費総量を抑制することである。2020年には一次エネルギー消費総量を約48億tce(標準炭換算トン)に抑制し、石炭消費総量を約42億トンに抑制する。
「これは実務的な目標であり、実現しなければならない目標だ」と中国工業経済連合会の李毅中会長は指摘する。中国のエネルギー消費は世界の21.5%を占めているが、GDPは世界の12.3%に止まり、単位GDP当たりのエネルギー消費は非常に高い。2020年のエネルギー消費を48億tce以下に抑えようとするなら、今後数年、一次エネルギー消費総量の年間伸び率を3.5%以下に抑えることが必要になる。
一方、中国のエネルギーセキュリティ問題はますます突出し、エネルギー対外依存度が上昇している。中国は石炭、石油、天然ガス、ウランの純輸入国であり、石油対外依存度は60%、天然ガス対外依存度は30%を超えている。
そのため、行動計画は2020年の国内エネルギー総生産量を42億tceとし、エネルギー自給率を85%前後に維持することを明確にしている。
行動計画が在来型天然ガスの探査開発を加速させ、年産100億m3以上の大型天然ガス生産基地8か所の建設を打ち出していることは要注目である。2020年には新規天然ガス確認原始埋蔵量を5.5兆m3、在来型天然ガス年産量を1,850億m3とする。同時にシェールガスと炭層ガス開発で重点的に打開を図り、2020年にはシェールガス生産量を300億m3超とし、炭層ガス生産量については300億m3を目指す。
石炭消費の抑制とエネルギー構造の最適化
中国のエネルギーの構造的な矛盾は際立っている。中国エネルギー研究会の周大地副理事長によると、中国のエネルギー構造は石炭が中心であり、開発利用方式は粗放型である。主要汚染物と温暖化ガス排出量では世界の上位グループに入っている。
そのため、行動計画は、天然ガス、原子力発電、再生可能エネルギー等のクリーン・エネルギーを積極的に発展させること、石炭消費の比率を下げること、エネルギー構造の持続的な最適化を推進することを打ち出している。2020年には一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率を15%とし、天然ガスの比率を10%以上とする。一方、石炭消費の比率は62%以下に抑える。
石炭消費の抑制については、行動計画は特に北京・天津・河北地区、長江デルタ地区、珠江デルタ地区等の石炭消費総量を削減しなければならないとしている。2020年には北京・天津・河北・山東の4つの省・直轄市の石炭消費を2012年比で1億トン純減させ、長江デルタと珠江デルタについては石炭消費総量のマイナス成長を実現する。
呉新雄国家能源局長は先日、全国第13次5ヵ年規画工作会議において次のように説明した。中国のエネルギー構造の中で化石エネルギーの比率はあまりにも高い。石炭消費の比率は66%に達し、世界平均水準を35.8ポイント上回っている。一方、エネルギー消費総量に占める非化石エネルギーの比率はわずか9.8%に過ぎない。2020年に非化石エネルギーの比率を15%にするという目標を達成することは極めて難しいものがある。
クリーン・エネルギー開発利用の具体的目標
2020年には一次エネルギーに占める天然ガスの比率を10%以上に高める。ガス化都市民生プロジェクトを実施し、2020年までに都市住民が基本的に天然ガスを利用できるようにする。
原子力発電の安全な発展を進め、国際的に最高の安全基準を採用して安全を確保することを前提に、東部沿海地区において原子力発電所の建設を適時再開するとともに、内陸部の原子力発電所建設についても研究と実証を展開する。2020年には原子力発電設備容量を5,800万kWとし、建設中の設備容量を3,000万kW以上とする。
再生可能エネルギーの発展に力を入れる。在来型水力発電設備容量を3.5億kW、風力発電設備容量を2億kWとし、電力価格が石炭火力発電の系統連系価格に相当するようにする。太陽光発電設備を1億kW前後とし、価格が電力グリッドの小売電力価格に相当するようにする。地熱エネルギーの利用規模を5,000万tceとする。
エネルギー体制改革の推進
エネルギー体制改革を深化させることは、現代的エネルギーシステムを確立し、国のエネルギーセキュリティを確保する上で制度的な保障になる。国務院発展研究センター資源環境政策研究所の高世楫所長によると、エネルギー体制革命の重要な内容として、エネルギー監督管理体制や環境監督管理体制を速やかに完備すること、エネルギー監督管理の有効性と効率を高めること、エネルギー市場競争を促進すること、公正な市場秩序を維持することが挙げられる。
今回の行動計画はエネルギー価格改革を推進しなければならないとしている。石油、天然ガス、電力等の価格改革を推進し、競争的なプロセスにおいて価格を自由化する。天然ガス井戸元価格及び販売価格、売電価格及び小売電力価格が市場を通して形成されるようにする。送配電価格と石油ガスパイプラインタリフについては政府が決定する。
同時に、重点分野と重要プロセスの改革を深化させ、電力体制改革をスピードアップする。需給両サイドの直接取引を推進して、競争的な電力取引市場を構築する。
エネルギー監督管理の面については、行動計画は、エネルギーの発展戦略、計画、政策、標準等の制定と実施を強化すること、行政の簡素化と権限移管を急ぐこと、行政許認可項目の撤廃と移管を引き続き進めることを打ち出している。エネルギー監督管理を強化し、監督管理組織体系と法規体系を健全なものにする。監督管理方式を刷新し、監督管理の効能を高め、公平で構成な市場秩序を維持して、エネルギー産業の健全な発展のために良好な環境を創出する。
(中国政府網 11月19日)