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中国
【石炭】

国際石油価格暴落で崩壊に瀕する中国の石炭化学工業 (14/12/14)
2014/12/19
中国【石炭】

 中国の石炭化学工業はこれまで環境保護やCO2排出などの問題が悩まされていたが、最近は原油価格の暴落が加わり、産業の困難はますます大きくなっている。

 今年6月には1バレル115ドルであった原油価格は12月12日時点でブレント価格は61.85ドルに下がり、WTI価格も58ドルを割って57.81ドルにまで下がった。

 もともと原油価格が高いときに収益を上げられる石炭化学工業に対し、油価の大幅な下落は巨大な衝撃を与えている。アナリストの唐敏氏によると、油価が65ドル前後に下落すると、神華など一部企業を除いて石炭化学産業のほぼ全体が赤字になる。もし65ドル以下の水準が長期間続いた場合、設備の減価償却費や環境保護コストも勘案すると、石炭化学業界は大きな試練にさらされる。

 石炭化学工業の経済収益は石炭化学製品と石油化学製品の競争によって左右される。

 業界関係者の分析によると、原油価格が1バレル100ドルの場合、石炭化学工業の経済収益は概ね良好であるが、90ドルになると、薄利しか上げられない企業も出てくる。当面の石炭価格等の条件が変わらないことを前提にした場合、SNG(石炭由来代替天然ガス)と石炭液化の損益分岐点は油価65〜70ドルである。現在の油価はすでに石炭化学工業の損益分岐点を下回っており、石炭化学業界は利益を出せない。

 石油化学工業規画院化工技術経済研究所の牛新祥所長によると、石炭化学工業のコストは一般に2つの要素からなる。うち固定コスト(工場や設備など)が50%、変動コストが50%を占め、石炭コストはその中で30%前後を占める。一方、石油化学製品の場合、コストの中で原油が占める比率は80%近くになる。唐敏氏によると、石炭価格は下落したものの、下落の余地には限りがあり、石油価格下落による影響を相殺することは出来ない。なぜなら、石炭価格の下落幅は石油価格の下落幅よりも小さいからである。その上、石炭化学工業のコストに占める石炭の比率は、石油化学工業のコストに占める原油の比率をはるかに下回る。

 今年中頃より油価の下落が始まっているが、現在の化学工業製品の価格は基本的に油価70〜80ドルの状況が反映されており、油価の低迷が続いた場合、2〜3ヵ月後には石炭化学工業に及ぼす衝撃はより一層強烈なものになる。生産を増やせば増やすほど、赤字もますます大きくなるだろう。そうなれば、多数の石炭化学企業はキャッシュ•フロー•ブレークに直面する。

 石炭化学企業の多くはすでに収益を上げることが出来なくなったが、それにも関わらず、多くの企業にとっては「やめるにやめられず、たとえ原価を割ってでも生産しなければならない」のが現状である。唐敏氏は、企業が生産を停止できないのは巨額の減価償却費や保守費用のためであると言う。生産を停止することは負けを認めたことを意味し、赤字を挽回する余地もなくなる。現在、石炭化学企業は局面打開を油価の再上昇に賭けるしかない。
 一方、環境問題も石炭化学工業にさらなる苦難を与えている。

 2013年に政府が規制措置を緩和し、石炭価格の下落、油価の高止まりも重なったことで、各地に石炭化学事業が花開いた。

 しかしながら、中国の石炭資源と水資源の分布は逆であり、石炭資源の豊かな地区は水資源が乏しい。石炭化学工業もこの資源分布に起因する問題に直面せざるを得ない。例えば、水資源やCO2排出問題によるコスト増や世論の圧力がある。

 1,000 m3のSNGを生産するには6トンの水と3トンの石炭を要し、1トンの石炭液化油を生産するためには10〜15トンの水と5トンの石炭を要する。水が不足している地区にとって、水資源消費問題は特に重要である。

 CO2排出の面では1,000 m3のSNGを生産によって4.5〜5トンのCO2が排出される。中国石油化工集団(SINOPEC)経済技術研究所の試算によると、中国の石炭化学工業のCO2排出量は2015年には約4.7億トンになり、炭素税を1トン15元として計算すると、石炭化学業界が納付すべき炭素税は71億元に達する。また、中国の2013年のCO2排出量約100億トンのうち石炭化学工業の排出量が5%近くを占めていた。

 先日発表された米中共同声明の中で、中国は初めてCO2排出ピークを2030年にする計画を打ち出した。《瞭望》新聞週刊の報道によると、SNGと石炭液化は、石炭消費とCO2排出のピークにとって最大の不確実要因である。たとえ環境管理を厳重に行ったとしても、SNGと石炭液化の大規模開発が進めば、CO2排出が大幅に上昇し、ピーク時期も先送りになるだろう。

 業界関係者によると、石炭化学工業のスタートは奇形的なものであり、一種の政策的指針として打ち出され、それ自体様々な争論が存在していた。現在、油価の暴落によって石炭化学企業が収益を上げる余地は殆どなくなり、水資源と環境保護問題でも世論から批判を受けている。石炭化学工業の将来はますます前途多難である。

 (澎湃新聞 12月14日)