2月26日に需要家への直接供給用天然ガスシティゲート価格が自由化されたが、これを受けて政府はその天然ガスの一部を上海石油天然ガス取引センターの取引対象とし、中国の天然ガス市場価格を逐次形成していくことになる。 今年1月5日、上海市政府は上海石油天然ガス取引センターの開設に同意し、3月11日には上海石油天然ガス取引センター有限公司が陸家嘴金融貿易区に登記されたことが発表された。同センターは4月に操業を開始する見込みである。 国家エネルギー戦略において上海石油天然ガス取引センターが担う意義について、中国エネルギー戦略研究会の周大地副理事長は、「市場がエネルギー価格を決定する仕組みを形成する上で新たなカードが追加される。競争的プロセスを対象に秩序立った価格自由化を進める上で有効だ。エネルギーの商品としての属性に立ち返り、エネルギー体制改革を推進する」と述べた。 上海石油天然ガス取引センターの位置づけは、スポット取引市場であって、先物市場ではない。「つまり、新華社が多数の川上・川下企業と連携してアジアの石油と天然ガス取引価格の決定権を勝ち取る中国版Henry Hubを目指すということだ」と卓創資訊の天然ガスアナリストである王暁坤氏は表明する。米国のHenry Hubは天然ガスのスポットと先物取引が集中する米国最大の市場であり、その価格は北米天然ガス市場の基準価格と見なされ、国際影響力では世界屈指である。 2014年の中国の石油対外依存度は60%近くに上り、天然ガス対外依存度は32.2%に上昇した。 世界の天然ガスの最大の買い手であり、しかも買い手市場の優位がますます顕著になる中で、中国は主役になれず、発言権がない。アジアは今や世界の重要な石油・天然ガス輸入地区であり、対外依存度は持続的に上昇しているが、影響力を有する石油と天然ガスの取引センターが未だに形成されておらず、価格に対する発言権に乏しい。「石油と天然ガスの見掛け消費量、生産能力やパイプラインなど貯蔵輸送インフラといった様々な点から中国が石油・天然ガス取引センターを確立する条件は日増しに成熟している」と王暁坤氏は指摘する。上海は中国の複数の石油と天然ガスパイプラインの終点であり、輸入LNGが中国に入る起点の一つでもある。石油ガスパイプライン網の優位や石油製品、LNGの受入・貯蔵施設の優位は一目瞭然であり、石油・天然ガス市場の優れた基礎を備えている。また、陸家嘴は整った金融市場システム、金融インフラ、金融生態環境を有し、上海石油天然ガス取引センターも含む金融機関や金融の人材が結集する重要なプラットフォームである。 上海石油天然ガス取引センターは将来的に石油・天然ガスの取引、引渡し、決済のプラットフォームとネットワークサービスシステムを構築することになる。「中国石油天然ガス産業の『埋もれていた』発言権を掘り起こし、シンガポールや日本等の新興石油天然ガス市場との競争にも有効に対応する。また、アジア太平洋地区に中国が主導する石油と天然ガスの取引センターを確立し、中国のエネルギーの転換を推進する上でも寄与する」と業界関係者は指摘する。 一方、APECにおいて中国が提唱した「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)構想においても、アジア太平洋地区に天然ガス取引センターを積極的に構築し、相互に連結するパイプライン網を形成することは、今後中国がアジア太平洋地区はもとより世界の発展を導く上でも重点になる。 この戦略をいかにして実施に移すかについて、周大地氏は、原材料商品価格の自由化、パイプライン網等のインフラの整備、参加主体の多元化等がいずれも試金石になるとし、「取引センターは真実、客観、正確な石油と天然ガスの価格インデックスを示すことが理想的だ。その初心は良く、運用過程においては自身の影響力と吸引力を高めることに力を入れなければならない」と言う。今年の全国人民代表大会・全国政治協商会議において、《政府工作報告》は「一帯一路」の建設を地域の開発と開放に結び付けるとともに、全方位的な対外開放の新たな構造を構築する上で「一帯一路」と自由貿易区の建設を重要な内容として位置づけることを明確に打ち出した。 上海自由貿易区がどのように「一帯一路」と連携しこれに寄与するのかについて、3月7日、全国政治協商会議常務委員を務める経済学者の?以寧氏は次のように指摘した。上海自由貿易区の経験から見て、制度革新こそが鍵になり、大規模に模倣して普及するモデルを推進しなければならない。海上と陸上の「一帯一路」はいずれも上海自由貿易区の影響の下でこそ作用を発揮することが可能だ。 上海はその地政学的優位によって、国内における「一帯一路」の中核エリアと関係国に対して強力な経済波及効果と連動作用を発揮することが出来る。 石油天然ガス取引センターが上海自由貿易区に建設されることで、必然的に貿易の便利化と金融の国際化を促進することになる。また、「一帯一路」が打ち出した円滑な貿易と貨幣の流通なども期せずして同工異曲になる。 世界最大の天然ガス輸出企業であるロシアのGazpromは世界の天然ガス市場において向こう15年間においても23〜24%のシェアを維持すると目論んでいる。このシェアを支える主要な動力源こそが堅調に増加するアジア市場の需要である。 「長期的に見て、取引センターのプラットフォーム構築には比較的高い国からの影響力があり、国家エネルギー戦略の重要な一部であるとともに、前向きに国際連動を進める重要な実践でもある」と、国家発展改革委員会能源研究所の呉研究員は言う。 先日、曹妃甸2015天然ガスサミットは、5年かけて曹妃甸に中国北方乃至は東北アジア地区最大の天然ガス取引センターを建設するという目標を明確に打ち出した。上海石油天然ガス取引センターが承認されて以来、全国の多くの地区が相次いで「天然ガス取引センター建設計画」構想を打ち出している。この点について、呉研究員は、天然ガス価格の市場化を推進する上で天然ガス取引市場を確立する重要性は推して知るべしではあるが、盲目的な追随は禁物であり、十分な市場調査と保障対策が必要であると指摘する。 (中国能源網 3月24日)
2月26日に需要家への直接供給用天然ガスシティゲート価格が自由化されたが、これを受けて政府はその天然ガスの一部を上海石油天然ガス取引センターの取引対象とし、中国の天然ガス市場価格を逐次形成していくことになる。
今年1月5日、上海市政府は上海石油天然ガス取引センターの開設に同意し、3月11日には上海石油天然ガス取引センター有限公司が陸家嘴金融貿易区に登記されたことが発表された。同センターは4月に操業を開始する見込みである。
国家エネルギー戦略において上海石油天然ガス取引センターが担う意義について、中国エネルギー戦略研究会の周大地副理事長は、「市場がエネルギー価格を決定する仕組みを形成する上で新たなカードが追加される。競争的プロセスを対象に秩序立った価格自由化を進める上で有効だ。エネルギーの商品としての属性に立ち返り、エネルギー体制改革を推進する」と述べた。
上海石油天然ガス取引センターの位置づけは、スポット取引市場であって、先物市場ではない。「つまり、新華社が多数の川上・川下企業と連携してアジアの石油と天然ガス取引価格の決定権を勝ち取る中国版Henry Hubを目指すということだ」と卓創資訊の天然ガスアナリストである王暁坤氏は表明する。米国のHenry Hubは天然ガスのスポットと先物取引が集中する米国最大の市場であり、その価格は北米天然ガス市場の基準価格と見なされ、国際影響力では世界屈指である。
2014年の中国の石油対外依存度は60%近くに上り、天然ガス対外依存度は32.2%に上昇した。
世界の天然ガスの最大の買い手であり、しかも買い手市場の優位がますます顕著になる中で、中国は主役になれず、発言権がない。アジアは今や世界の重要な石油・天然ガス輸入地区であり、対外依存度は持続的に上昇しているが、影響力を有する石油と天然ガスの取引センターが未だに形成されておらず、価格に対する発言権に乏しい。「石油と天然ガスの見掛け消費量、生産能力やパイプラインなど貯蔵輸送インフラといった様々な点から中国が石油・天然ガス取引センターを確立する条件は日増しに成熟している」と王暁坤氏は指摘する。上海は中国の複数の石油と天然ガスパイプラインの終点であり、輸入LNGが中国に入る起点の一つでもある。石油ガスパイプライン網の優位や石油製品、LNGの受入・貯蔵施設の優位は一目瞭然であり、石油・天然ガス市場の優れた基礎を備えている。また、陸家嘴は整った金融市場システム、金融インフラ、金融生態環境を有し、上海石油天然ガス取引センターも含む金融機関や金融の人材が結集する重要なプラットフォームである。
上海石油天然ガス取引センターは将来的に石油・天然ガスの取引、引渡し、決済のプラットフォームとネットワークサービスシステムを構築することになる。「中国石油天然ガス産業の『埋もれていた』発言権を掘り起こし、シンガポールや日本等の新興石油天然ガス市場との競争にも有効に対応する。また、アジア太平洋地区に中国が主導する石油と天然ガスの取引センターを確立し、中国のエネルギーの転換を推進する上でも寄与する」と業界関係者は指摘する。
一方、APECにおいて中国が提唱した「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)構想においても、アジア太平洋地区に天然ガス取引センターを積極的に構築し、相互に連結するパイプライン網を形成することは、今後中国がアジア太平洋地区はもとより世界の発展を導く上でも重点になる。
この戦略をいかにして実施に移すかについて、周大地氏は、原材料商品価格の自由化、パイプライン網等のインフラの整備、参加主体の多元化等がいずれも試金石になるとし、「取引センターは真実、客観、正確な石油と天然ガスの価格インデックスを示すことが理想的だ。その初心は良く、運用過程においては自身の影響力と吸引力を高めることに力を入れなければならない」と言う。今年の全国人民代表大会・全国政治協商会議において、《政府工作報告》は「一帯一路」の建設を地域の開発と開放に結び付けるとともに、全方位的な対外開放の新たな構造を構築する上で「一帯一路」と自由貿易区の建設を重要な内容として位置づけることを明確に打ち出した。
上海自由貿易区がどのように「一帯一路」と連携しこれに寄与するのかについて、3月7日、全国政治協商会議常務委員を務める経済学者の?以寧氏は次のように指摘した。上海自由貿易区の経験から見て、制度革新こそが鍵になり、大規模に模倣して普及するモデルを推進しなければならない。海上と陸上の「一帯一路」はいずれも上海自由貿易区の影響の下でこそ作用を発揮することが可能だ。
上海はその地政学的優位によって、国内における「一帯一路」の中核エリアと関係国に対して強力な経済波及効果と連動作用を発揮することが出来る。
石油天然ガス取引センターが上海自由貿易区に建設されることで、必然的に貿易の便利化と金融の国際化を促進することになる。また、「一帯一路」が打ち出した円滑な貿易と貨幣の流通なども期せずして同工異曲になる。
世界最大の天然ガス輸出企業であるロシアのGazpromは世界の天然ガス市場において向こう15年間においても23〜24%のシェアを維持すると目論んでいる。このシェアを支える主要な動力源こそが堅調に増加するアジア市場の需要である。
「長期的に見て、取引センターのプラットフォーム構築には比較的高い国からの影響力があり、国家エネルギー戦略の重要な一部であるとともに、前向きに国際連動を進める重要な実践でもある」と、国家発展改革委員会能源研究所の呉研究員は言う。
先日、曹妃甸2015天然ガスサミットは、5年かけて曹妃甸に中国北方乃至は東北アジア地区最大の天然ガス取引センターを建設するという目標を明確に打ち出した。上海石油天然ガス取引センターが承認されて以来、全国の多くの地区が相次いで「天然ガス取引センター建設計画」構想を打ち出している。この点について、呉研究員は、天然ガス価格の市場化を推進する上で天然ガス取引市場を確立する重要性は推して知るべしではあるが、盲目的な追随は禁物であり、十分な市場調査と保障対策が必要であると指摘する。
(中国能源網 3月24日)