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【エネルギー全般・政治経済】

「李克強インデックス2.0バージョン」が示す経済の安定回復と構造調整の成果 (15/07/17)
2015/7/22
中国【エネルギー全般・政治経済】

 第2四半期の経済統計が発表された。7%のGDP成長率は第1四半期と横ばいである。「経済成長は2四半期連続で7%となった。安定回復は顕著だ」と、国家統計局の盛来運報道官は発表会において表明した。安定回復傾向はGDPだけではない。新規融資や電力消費量など「李克強インデックス」と呼ばれる一部指標も第2四半期には回復の兆しが現れている。

 中国人民大学の劉元春教授によると、伝統的な意味の「李克強インデックス」は工業の動向をより強く反映しているが、中国の第三次産業の比率の上昇に伴い、電力消費量と貨物輸送量の参照作用は相対的に低下した。

 今年の政府工作報告に記載された「李克強インデックス2.0バージョン」は何を示しているのだろうか。盛来運報道官の説明によると、今年上半期の単位GDP当たりエネルギー消費は前年同期比5.9%下がり、第1四半期に比べ減少幅は0.3ポイント上昇した。経済成長の質はやや向上している。

 全体的に見て上半期の電力消費量は決して楽観できない。国家能源局が発表した統計によると、今年上半期の電力消費の伸び率は1.3%であり、前年同期に比べ4ポイント下がり、5年来の最低になった。

 但し、詳細に分析すると、全体的に低迷する中でも、構造調整の原動力が胚胎していることが見て取れる。上半期の第二次産業の電力消費量は前年同期比0.5%の減少になったが、第三次産業の電力消費量は8.1%の増加になった。

 盛来運報道官の説明によると、こうした変化は中国の経済構造の転換が成果を上げていることを示している。上半期のGDPに占める第三次産業の比率は49.5%であり、前年同期に比べ2.1ポイント上昇した。同時に経済成長に対する消費の寄与率は60%に達し、前年同期に比べ5.7ポイント上昇した。

 6月期の統計を見ると、上半期の電力消費量の伸び率1.3%に対し、6月は1.8%であり、3ヵ月連続でプラス成長を維持している。経済の「冷暖」と直接連動する工業用電力消費量は4ヵ月連続のマイナスを経て6月にはプラスを実現した。

 「李克強インデックス」の中で新規融資の指標は企業の融資需要を反映しており、通常は企業が事業を拡大する際に融資が増えるので、新規融資は経済の先行指標と見なされる。人民銀行が7月14日に発表した統計によると、6月の人民元融資は1兆2,800億元もの大幅な増加になり、前月の増加幅を3,805億元、前年同月の増加幅を1,968億元上回った。また、6月の民間融資規模は前月比で大幅な増加を示し、M2の伸び率も予想を上回った。

 中国交通銀行の上席金融アナリストである鄂永健氏によると、6月の民間融資の増加幅が比較的大きくなった原因の一つとして、一連の重大事業が速やかに推進されたことや建設中の事業への追加融資が許可されたことなどで、企業の融資需要が回復したことがある。このことは下半期の経済の逐次安定回復に向け、金融面からの支えになるだろう。

 「李克強インデックス」の中で鉄道貨物輸送量は未だ発表されていない。鉄路総公司が今月初めに発表した上半期の鉄道貨客輸送統計では、鉄道貨物輸送量の統計はバラ貨物高速輸送量統計に取って代わられた。今年上半期のバラ貨物高速輸送量は981万トンに達し、前年同期の115倍になった。
 
 発表済みの鉄道貨物輸送統計によると、1〜5月の鉄道貨物輸送量は前年同期に比べ9.8%減少したが、5月期は前月比で2.73%のプラスを実現した。

 鉄道貨物輸送量を押し下げたのは「黒貨」と呼ばれる石炭、鉱石や鉄鋼などであり、一方、付加価値の高い「白貨」は鉄道輸送量全体の中で比率を徐々に高めている。

 北京交通大学経営学院の趙堅教授によると、2011年の鉄道貨物輸送の中で石炭と鉄鉱石の占める比率は80%に達していたが、鉄道貨物輸送需要も経済構造の調整と過剰生産能力の削減に伴って低下している。

 また、趙教授によると、中国全体の輸送量の中で鉄道の占める比率は今では10%前後に下がり、貨物輸送の多くは道路輸送が取って代わっている。鉄道貨物輸送量は最早経済動向を反映することが出来ないのではなかろうか。
 
 劉元春教授によると、伝統的な意味の「李克強インデックス」は工業の動向をより強く反映しているが、正にそれゆえに、今年の政府工作報告から電力消費量と貨物輸送量の2つのインデックスが消え、学界から「李克強インデックス2.0バージョン」と呼ばれているエネルギー強度とGDPに占める研究開発費の割合という2つの新しいデータが登場することになったのである。

 劉教授によると、GDPに占める研究開発費の割合は国際的にも幅広く採用されている指標であり、先進諸国では通常3〜4%になる。一方、エネルギー強度は産業構造調整の最適化の程度を反映している。

 盛来運報道官の説明によると、今年上半期の単位GDP当たりのエネルギー消費は前年同期に比べ5.9%下がり、第1四半期の低下幅を0.3ポイント上回った。

 (毎日経済新聞 7月17日)