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【中露天然ガス交渉】中露ガスパイプライン西線に凍結の可能性が浮上 (15/07/28)
2015/8/3
中国【石油・天然ガス】

 経済の軟調で中露天然ガスパイプライン西線が無期限凍結の危機に瀕している。

 中国の燃料需要の低下のため、ロシア天然ガス企業Gazpromと中国石油天然ガス集団(CNPC)は「シベリアの力2」パイプライン(旧アルタイ線)をめぐる契約調印を無期限延期したとのことである。

 スプトーニクニュースによると、ロシアの専門家はその原因について、中国経済の成長率の低下や資源価格の下落に伴い、GazpromとCNPCの間で価格をめぐる隔たりが生じているからであるとの認識を示す。

 ロシアVedomostiの報道によると、ロシア連邦準備銀行(Sberbank)のアナリストValery Nesterov氏は取材に対し、経済減速のため中国の天然ガス需要が減るとともに、オーストラリア等からのLNG供給量も増加していると表明した。

 当然ながら、GazpromとCNPCは価格をめぐって膠着することになる。

 2014年11月、中国を訪問したプーチン大統領は習近平主席と天然ガスパイプライン西線の建設をめぐって枠組合意文書に調印し、2020年にはGazpromが中国の総需要の5分の1に当たる天然ガスを供給することになった。

 この合意は2014年5月に調印された東線パイプライン経由の天然ガス契約額と同じ4,000億ドルに上り、Gazpromは「シベリアの力2」パイプラインによって中国への天然ガス供給を300億m3追加することになった。

 ロシアは西線によって、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンと中国市場をめぐって競合する意向である。

 パイプラインが完成すると、中国はロシア産天然ガスの最大の消費国になる。ロシアにとって、中国との2件の巨額契約は衰退に陥っているロシア経済の成長回復に寄与するものになる。

 Gazpromにとっては中国との契約は顧客の多様性を高める上で有力な措置になる。欧州の顧客の大多数はロシアに対する依存を引き下げるため、ロシア産ガスに代わる天然ガスを求めている。ロシアの天然ガスの30%近くは西欧へ輸送され、その半分はウクライナを経由する。

 莫大な需要と支払い能力を備える中国は理想的な顧客と見なされていた。しかし、Nesterov氏によると、2012〜2013年に中国の天然ガス消費量は12〜13%増加したが、2014年の伸び率は8.5%に下がった。

 モスクワのロシア中国分析センター(Russia-China Analytical Center)Sergei Sanakoyev所長によると、中国側はパイプライン建設に関して、公開入札を行うとともに建設に参加することを希望しており、そのため工費はますます不透明になる。

 Gazpromは価格面で若干の譲歩を行うことに同意しているが、建設コストが高騰しているため、大きな譲歩を行うつもりはない。一方、中国側は、パイプラインの工費をもう少し下げることは可能であり、中国企業も参加する公開入札の実施を提案するとともに、ロシア国内区間の建設に中国の労働者と設備を使用するという条件も提示している。これに対し、Gazpromは中国側のリソースを導入する必要は認めないと回答した。

 今のところ、中国側はロシアに対して中国の提案や価格引き下げに同意を迫るチャンスを窺っている。「中国側は焦ってはいない」とSanakoyev氏は言う。

 双方の交渉は現在進んでおらず、某官僚はVedomosti紙に対し、「中国が引き続き交渉を推進するかはプーチン大統領の9月訪中まで待つ必要があろう」と表明した。

 (観察者網 7月28日)


【関連報道】

 「中国は本当にロシアの天然ガスを必要としないのか」(15/07/24)

 中露天然ガスパイプライン西線をめぐる交渉が暗礁に乗り上げたのかという点について、ロシア中国分析センターのSergei Sanakoyev所長は、次のように述べた。

 「当然ながらロシアと中国が合意に達することは可能だ。つまり、国益の見地からすれば互恵的な取引だということだ。ロシアにとって、中国に天然ガスを供給するメリットは輸出先の地理的範囲を多元化することだ。同時に、中国にとってはエネルギーバランスを図る上で安定的な供給チャンネルを有することになる。さらに、ロシアは長期的に中国という戦略パートナーに天然ガスの安定供給を保障すべきだ。GazpromとCNPCが合意に達するには政治レベルの介入が必要になるだろう」

 Sanakoyev所長は、10年がかりの東線パイプライン交渉でも同じような局面が発生したことがあったが、最終的に2014年5月のプーチン大統領と習近平主席の会談に際して契約が調印されたと指摘した。専門家はロシア大統領の次の中国訪問において西線パイプライン問題が解決を見る可能性を排除していない。中国はプーチン大統領の9月初頭の訪中に期待している。中国は同じ時期に抗日戦勝70周年式典を荘厳に開催する。

 (ロシアススプトーニクニュース 7月24日)