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石炭消費ピークが2020年よりも早まる可能性浮上 発展改革委員会のレポート (15/08/03)
2015/8/7
中国【石炭】

 発展改革委員会能源研究所のレポートによると、規制策が妥当であれば、石炭消費のピークが2020年よりも早まるとともに、ピークの消費水準もわずか40.6億トンになり、さらに2030年になると消費量は37億トン前後に下がる。これは規制を行わない場合の4分の3である。

 発展改革委員会能源研究所が先日発表した《産業部門の石炭消費総量規制研究》と題するレポートによると、エネルギー多消費業種の中で、石炭消費引き下げのポテンシャルが最も大きいのは電力部門であり、全国の引き下げポテンシャルの50.3%を占める。電力部門に次いで引き下げポテンシャルが大きいのは石炭化学工業部門であり、全国の14%を占める。

 発展改革委員会能源研究所の田智宇研究員によると、中国は目下製造業大国から製造業強国に向けて急速に邁進しており、産業部門の石炭消費抑制の鍵は工業の転換とグレードアップを実現し、付加価値の成長が生産量との連動から脱却できるかどうかにかかっている。

 石炭消費のピークが前倒しも

 石炭は基礎エネルギーとして高度経済成長を支えてきたが、同時に大気汚染の根源でもある。

 スモッグが最も深刻な北京・天津・河北地区地区にとって、石炭消費総量の規制はすでに焦眉の急になっている。国家発展改革委員会が昨年末に公布した《重点地区石炭消費減量代替管理暫定弁法》によると、2017年には北京市の石炭消費は2012年に比べ1,300万トン減少し、天津市は同1,000万トン、河北省は同4,000万トン、山東省は同2,000万トン減少する。

 発展改革委員会能源研究所のレポートによると、当面の状況に基づいて試算すると、中国の石炭消費量は2030年頃にピークの48.2億トンに達すると予想される。時間軸を2050年まで伸ばすと、石炭消費量は42.6億トンになり、2010年の水準を約3分の1上回ることになる。

 化石エネルギーの消費を規制することは、一つはスモッグ対策、もう一つは気候温暖化から発している。

 中国のエネルギー構造の中で石炭の比率は60%を超えており、石炭は必然的に化石エネルギー消費抑制の最優先のターゲットになる。

 発展改革委員会能源研究所のレポートは、規制策が妥当であれば、石炭消費のピークが2020年よりも早まり、ピークの消費水準もわずか40.6億トンになるとともに2030年には37億トン前後に下がると指摘している。これは規制を行わない場合の4分の3である。さらに、その20年後の2050年には石炭消費は23.5億トン、2020年のピークの58%に下がり、2014年の消費量を12.1億トン下回ることになる。

 石炭消費抑制の鍵は工業の転換とグレードアップ

 昨年公布された《エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)》は、2020年の中国の一次エネルギー消費総量を48億tce(標準炭換算)前後に抑制し、石炭消費総量を42億トン前後に抑制して、一次エネルギーに占める石炭の比率を62%に下げることを打ち出している。石炭の比率は第12次5ヵ年規画期末の65%から若干下がることになる。

 世界自然基金(WWF)地球気候変動対応計画主任の楊富強氏によると、中国の石炭消費の90%以上は電力、鉄鋼、石炭化学、セメント、建築、建材等の工業分野に集中しており、これらの分野は石炭消費削減の余地が極めて大きい。

 注目すべきは、これらの業種の多くは深刻な生産能力過剰問題が存在しており、各地方政府が経済構造調整を進める上で最も抑制に力を入れるセクターだということである。

 発展改革委員会能源研究所が今回発表したレポートは、規制シナリオの下で、鉄鋼、セメント、電力、建築等の産業の石炭消費量はいずれも大幅に低下するものの、現代的石炭化学工業については生産能力のポテンシャルが大きいため、石炭需要の不確実性も極めて高くなるとの予想を示している。

 田智宇氏は、現代的石炭化学工業には不確実要因が極めて多く、政府は石炭化学工業に対して適正に総量規制を進めるべきであると警鐘を鳴らす。

 生産能力の抑制と経済成長は決して相反するものではない。例えば、日本はエネルギー多消費産業の急成長を経て工業の転換を実施し、生産量の基本的安定と工業付加価値の持続的成長の両立を実現した。

 田智宇氏の見方によると、付加価値の成長を生産量の成長との連動から脱却させることが出来れば、石炭消費も自然に安定もしくは低下することになる。それゆえ、未来の石炭規制の大勢は投資収益率の向上であり、その核心は付加価値を高めることにある。

 (新浪財経 8月3日)