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中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】エネルギー危機の下で中国の経済成長は持続不可能 (08/01/25)
2008/1/28
中国【エネルギー全般・政治経済】

発電用石炭の不足により全国の電力不足分は6,963万kWに達し、すでに13もの省級電力網が電力供給の停止や制限を行っている。発電所の石炭在庫は警戒線以下にまで減少した。中国は石炭埋蔵大国であるにも関わらず、石油や天然ガスのみならず、石炭に起因する電力パニックまで発生したのであり、このことは深刻に受け止めるべきである。

 省エネ・排出削減が打ち出されたのはまだ昨年のことであり、中国は欧米や日本等に比べはるかに遅れている。中国のGDPは数年連続で2ケタ台の成長を続けているが、中国は単位GDP当たりのエネルギー消費が最も高い国の1つとなった。重点鉄鋼企業のトン当たりエネルギー消費は国際水準を40%上回り、火力発電では30%上回る。GDP1万元当たりの水消費量は国際水準の6倍、GDP1万元当たりのエネルギー消費は世界平均の3倍である。

 中国の鋼材やセメントの生産は巨大なエネルギーを浪費している。一方、2007年の鋼材輸出量は鋼材総生産量の約4分の3を占めた。なぜ、これほど多くの鋼材を輸出する必要があるのか。結局、この問題は中国国内の鍛造業が未熟で、鋼材生産の技術水準を高めて自動車や造船等の高付加価値産業に使用することが未だに不可能であることに帰結する。さらに、重要な点は、このような状況にありながら、各クラスの政府は未だに環境保護を無視し、GDP依存症が深刻なことである。このことは幹部の昇進問題が関わっていることも背景にある。

 日本を例に取ると、早くも1979年に公布された「省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」によって、国民も企業もエネルギー使用効率を高めるよう叱咤されている。この間、日本の省エネ技術、とりわけ電気製品の省エネ技術は飛躍的な発展を遂げた。日本のエアコンの電力消費量は10年前の30〜50%に下がっている。松下電器の新型省エネ冷蔵庫の省エネ効率は政府規定の2倍以上であり、同社の10年前の製品のわずか7分の1である。日本のメーカーはAV製品の待機電力を現在の1%にまで下げることまで計画している。しかし、これらの製品の付加価値は高く、2003年末の中国の発電設備容量は3.7億kWであったが、日本はわずか2.2億kWで中国の4倍ものGDPを生み出した。このことは中国の科学技術水準がいかに低いかを如実に示している。

 2007年も中国の最大の輸入相手国は日本であった。なぜ日本製品を輸入する必要があるかという問いは、なぜ中国がこうした製品を生産できないという問いにつながる。中国は科学技術水準が低く、エネルギー消費が大きく、汚染の深刻な製品を輸出して外貨を稼いでいる。低廉な労働力を利用して、日常雑貨、衣類、靴、玩具等の小物を生産している。さらには、技術を持つ外国企業が中国に工場を建設する場合、技術と資本は彼等の物であり、中国は工場の建物と低廉な労働力を提供して加工するに過ぎず、利益の大部分は彼等の物となり、中国の労働者が得るのはほんの一部である。中国人は一文の価値もないと言うべきであろう。

 『ウォールストリートジャーナル』紙は2006年に中国のエネルギーに関して次のように報道した。この10年、中国政府は石炭や石油に代え天然ガスへと転換するよう図ってきたが、天然ガス価格の高騰によってこの種の計画はうまく行っていない。中国のエネルギーの多様化には困難が伴うため、もともと悪化していた環境をさらに破壊する上、国際油価のさらなる高騰をもたらすだろう。

 大気汚染を初めとして、環境汚染も深刻化した。昨年のアモイPXプロジェクトに対する抗議事件は環境と汚染に対する民意と政府の溝を象徴するものであった。政府は、PXプロジェクトは低投資で高生産を実現できる収益良好な事業であるとし、民意の方は、危険が大きく極めて不利であると判断した。結局、アモイPXプロジェクトは昨年末、民意の圧力のため、立地を再検討することになった。しかし、アモイ市民にとっては行動によって自己の権利を守ったことになるが、これが果たして民意の勝利なのか。中国全体にとっては、誇るべきことでもない。なぜなら、建設地を変更したらその地区の住民に危害を及ぼさないという保証はないからである。アモイが要らないものは他の場所でも要らない。結局は中国以外の場所に建設するのが最上になる。環境に危害を及ぼす万分の一の可能性がある限り、通らないのである。

 『亜太経済時報』は次のような論文を掲載した。「メイド・イン・チャイナ」は中国経済急成長の強力な推進器であるが、一部の「メイド・イン・チャイナ」が中国のエネルギーセキュリティを深刻に脅かしていることは知られていない。エネルギー多消費事業の多くは主要市場が国外にあり、中国は資源と環境を犠牲にすることを惜しまず、国内のエネルギーの逼迫を顧みず、外国のためにエネルギー多消費製品の提供に努めているが、実際には全く割が合わないことを続けているのである。結局、その原因は中国経済成長の欠陥に帰結する。エネルギー多消費、高汚染、低付加価値によって中国という巨大な経済大国の台頭を支えてきたものの、その反面、科学技術開発率、応用率は極端に低く、先進的な技術生産力によって省エネ・排出削減を達成してGDPを高めることは出来ていない。こうした悪循環こそが、当面のエネルギー危機という現実をもたらしているのである。

 対外環境の不確実性の点から見て、エネルギー多消費・高汚染・低付加価値産業の輸出の先行きは楽観を許さない。一方、こうした産業に依存して中国の経済成長を牽引していた前提は最早存在し得なくなる。こうして見てくると、今回の石炭不足に起因する電力不足という事件は、単なるエネルギー危機ではない。エネルギー危機の下で中国経済の成長は持続不可能であることを突きつけているのである。では、それでどうすればいいのか。結局はマクロ経済の運営を見直すしかあるまい。

 (光明観察 1月25日)