1. HOME
  2. 中国 【エネルギー全般・政治経済】

中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】「石油偏重・石炭軽視」のエネルギー政策構造を改めよ (08/01/28)
2008/1/29
中国【エネルギー全般・政治経済】

 旧正月を目前にして、広範囲に及ぶ電力不足が国内を震撼させている。13の省で電力供給の停止や制限を余儀なくされ、多くの発電所では石炭在庫の低下が警戒線を超えた。発展改革委員会、鉄道部、電力監督監視委員会、中国石炭輸送販売協会は次々と通達を出して、電力と石炭供給の確保に全力を挙げるよう要請した。

 2004年以降のマクロ経済調整策を顧みると、引き締め政策が強化される中にありながら「石炭・電力・石油・輸送」部門の建設投資は拡大されてきた。それにも関わらず、依然として中国のエネルギー供給システムは脆弱ぶりをさらけ出し、大雪に打ち勝つことすら出来ないのはなぜなのか。

 今回の電力パニックの直接原因は広い範囲の大雪が発電用石炭の供給に影響を与えたことにあるが、しかし、それは表面的な原因に過ぎない。石炭と電力価格の仕組みが円滑に行っていないことこそが電力パニックの深層の原因である。つまり、石炭と電力の価格連動の仕組みがスムーズに機能していないため、発電所の積極性が欠如することになる。この種のメカニズムの欠陥に起因する電力不足は今年も引き続き発生する公算が大きい。

 価格の仕組みだけでなく、国内の石炭生産供給システムが合理化されていないことにも一因がある。政策による干渉の下では生産の変動が大きくなり、エネルギー需要の上昇を十分に見積もることも出来ない。

 国家発展改革委員会は、先頃緊急通達を発して、各省政府、鉄道部、交通部、中央系の石炭集団、電力集団に対し、石炭と電力の生産供給を適切に進めるよう求めた。また、各地方政府に対し、安全管理面に着手することで炭鉱の安全生産能力を高め、全炭鉱を一律に生産停止したり生産を停止したまま放置したりするような消極的な方法を是正して、安全条件に適っているにも関わらず生産停止となっている炭鉱の生産を直ちに回復するよう求めた。

 このような要請は、中国の石炭生産が抱える問題を浮き彫りにしている。中国経済の急成長に伴い、エネルギー需要は大幅に増加し、石炭需要も急増した。しかし、炭鉱事故が頻発したため、政府は安全生産条件に適合しない中小炭鉱を大量に閉鎖したが、その結果、石炭の供給に一定の影響を及ぼすことになった。この3年間で閉鎖された炭鉱は11,618ヵ所に上るが、その中の11,155ヵ所は小炭鉱であった。しかし、石炭供給に占める中小炭鉱の比率は高く、2006年の小炭鉱の総生産量は8億トン以上に上り、その年の石炭総生産量の34%を占めた。小炭鉱の大規模な閉鎖が進められる中、小炭鉱の担っていた生産を他の炭鉱の生産量によって補うことが出来なければ、石炭不足はますます深刻化することになる。

 中国の一次エネルギーの中で石炭の占める比率は極めて大きく、2006年の石炭消費量は11.91億toe(石油換算トン)、一次エネルギー総消費量の70.20%を占めた。一方、中国の石油対外依存度は50%近くになるが、中国のエネルギー全体の対外依存度はわずか4%に過ぎない。つまり、この大きな差額を石炭が支えているのである。それゆえ、石炭の生産と供給は中国のエネルギー消費戦略において極めて大きな位置を占め、中国のエネルギーセキュリティを左右している。

 然るに、近年、中国のエネルギー戦略において「石油偏重・石炭軽視」が存在している。国有企業の上場、対外進出戦略、国からのエネルギー投資、エネルギー戦略の重点、エネルギー外交、エネルギー利用技術投資など様々な面で、石油に対する関心は石炭に対するそれよりも大きい。確かに石炭は市場参入の面で石油に比べ開放が進んでいるが、しかし、依然として産業連鎖が短く、投資が不足している分野でもある。政策による手当ては十分とは言い難い。多くの石炭企業は煤炭部の復活を提唱したことがある。これは石炭産業の利益の代弁者を見出そうとする試みに他ならない。

 石油、原子力、水力発電等のエネルギーと比較すると、石炭は「垢抜けない」とはいえ、中国にとっては最も重要な基礎エネルギーである。中国のエネルギーセキュリティを確保するには、石炭産業の連鎖を構築し、産業の効率とレベルを高め、市場の仕組みを合理化し、市場の開放と競争を強化することが不可欠である。基礎エネルギーを充実させなければ、中国のエネルギーセキュリティは基礎を欠いたものとなろう。

 (毎日経済 1月28日)