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【石油・天然ガス】

中国のLNG産業が予想よりも早く「冬入り」(15/10/28)
2015/11/6
中国【石油・天然ガス】

 今年に入って以来、経済成長の鈍化や油価下落の影響で、LNG価格が下がり、上流・中流・下流のいずれも収益を上げることが難しくなった。業界はサバイバルの余地が狭まり、予想よりも早く「冬入り」している。

 中国工業ガス協会の特別招聘専門家である蒋春輝氏によると、LNG産業の中でも特に上流の液化施設が最も大きいインパクトを受けている。原料のガス価格は発展改革委員会の調節によって高止まりしている一方で、低価格の輸入LNGのインパクトが大きくなっている。現在、中国国内の液化施設の稼動率は40%足らずであり、多くの企業は原価割れである。また、中流のLNG物流については、在来のタンクローリーの輸送半径が大幅に縮小し、大容量の車両はすでに優位を失っている。グローバルLNG価格の下落によって恩恵を受けるはずの末端市場は、石油・天然ガス価格改革が進んでいないため、収益を上げることが困難であり、投資家はほとんど諦め状態にある。

 中国工業ガス協会の●春幹事務局長の見方によると、LNG価格の大幅な下落は、供給量が大幅に増加する一方で、需要量が油価の暴落や経済減速のために縮小していることに原因がある。

 習近平主席の英国訪問中に中国華電とBPは100億ドルに上るLNG売買契約に調印し、BPは中国華電へ毎年100万トンのLNGを20年間供給することになった。一方、石油大手3社は2008〜2014年に年間3,840万トンの長期LNG供給契約を結んだ。これらの契約の大多数は2015〜2017年にかけて供給が開始される。一方、国内のLNG生産能力は過去数年間の急速な拡大を経て、昨年にはすでに顕著な過剰傾向を呈するようになった。

 然るに、国内の天然ガス消費量の伸びは下がり続けている。2014年の中国の天然ガス消費量は1,830億m3、伸び率は8.9%に止まり、10年ぶりの1ケタ台になった。今年上半期の消費量は906億m3で、伸び率は2.1%と過去最低を記録した。工業需要家のガス化施設は殆どが休眠状態になり、「煤改気」(石炭焚きボイラーの天然ガス燃料への転換)についても、北京・天津・河北では引き続き拡大しているものの、これまで「煤改気」を進めてきた企業が石炭燃料に逆戻りするケースも発生している。期待を集めていた交通用燃料についても、軽油消費量が経済減速によって大幅に下がり、加えて油価の下落によりLNGと軽油の価格差が殆どなくなって、LNGに転換しても経済性がなく、需要は停滞している。

 しかしながら、業界関係者の多くは、中国のLNG産業は長期的には依然有望であると見ている。蒋春輝氏によると、世界の一次エネルギーに占める天然ガスの比率は24%近いが、中国はわずか5.8%に止まっている。LNGは依然成長期にあり、徐々に市況が回復するに違いない。

 多くの業界関係者は政府に対し、エネルギー価格改革を加速して、より多くの企業に国際市場で低価格のガスを獲得するチャンスを与えるよう訴えている。業界関係者の見方によると、LNG市場は目下高度調整期にあり、新たな商業モデルを模索する一方、規模を拡大することは適切ではない。また、LNG下流市場の開発は交通分野を優先すると同時に、パイプラインガスを引くことが難しい小都市をLNGの主要市場にすべきである。

 (中国石化新聞中心 10月28日)

 ●…サンズイに「伏」