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中国
【石炭】

石炭と電力の一体化の広範囲の推進は禁物 (15/10/29)
2015/11/6
中国【石炭】

 最新統計によると、今年4月から9月末時点までに山西省発展改革委員会は低カロリー炭による発電事業22件を相次いで承認した。設備容量は合計1,985万kWになる。事業の殆どの投資主体は山西省5大石炭集団や石炭を本業とする企業である。

 石炭と電力は関連性の高い産業である。中国では電力と熱力の生産のための石炭消費が石炭消費総量の50%近くを占める。また、石炭火力発電の設備容量は発電設備全体の60%以上を占め、発電量では全国総発電量の75%近くを占める。そのため、長期的な発展の見地から、石炭企業と発電企業が協力を進めることは理に適っている。しかしながら、長年にわたって石炭と電力の2大産業は協力よりも対抗が際立っている。発電企業は石炭資源をより多く支配する必要に迫られ、石炭開発を強化し、その結果、石炭と電力の一体化が加速された。

 現在、5大発電集団が支配する石炭年産能力はすでに3億トンを超えており、概算では、5大発電集団の石炭自給率は今や30%前後に達している。それら石炭生産能力の多くは新規建設坑井の範疇にあり、そのため、発電集団企業の石炭自給率上昇と同時に石炭全体の生産能力過剰に拍車がかかっている。

 ここ2年、石炭価格の下落が続き、収益能力の面で石炭産業と電力産業の明暗が根本的に分かれ、多数の石炭企業が赤字に陥る一方で、5大発電集団の発電事業はフルに稼ぎ、2014年の5大発電集団の利益総額は800億元を超えた。同時に、赤字に陥った多くの石炭企業も石炭と電力の一体化に目を向け、石炭と電力の一体化によって石炭の販路拡大、収益能力の向上や企業の転換を図ることになった。
 しかしながら、石炭と電力の一体化を石炭産業全体に広げることは適当ではない。その理由は次の通りである。

 (1) すでに石炭火力発電設備に過剰の兆しが生じている。2014年の全国の6,000kW以上の火力発電設備の利用時間数は4,706時間に止まり、36年来の最低水準になった。2013年に比べると6.25%の低下になる。火力発電設備利用時間数の低下は主に経済発展が「新常態」に入り、電力需要の伸び率が下がっていることが原因である。今後長期間にわたって電力需要の伸び率は低い水準に止まる。また、概算では全国の建設中の石炭火力発電設備は1億kW近くに上る。こうした状況で石炭企業が石炭と電力の一体化を推進することになれば、石炭火力発電設備のさらなる過剰を招き、企業の収益能力はさらに低下することになる。

 (2) 新エネルギー発電の急速な成長が石炭火力発電を圧迫し、その過剰を激化させている。近年、中国の新エネルギー発電は急速に増加し、今年上半期には中国の火力発電の発電量が2兆879億kWh、前年同期比3.2%減になったのに対し、水力発電の発電量は4,234億kWh、前年同期比13.3%増、原子力発電は772億kWh、34.8%増、風力発電は990億kWh、26.2%増になった。また、火力発電設備の中でも天然ガス発電設備が急速に増加し、今後は石炭火力発電を一定程度圧迫することになる。

 (3) 《エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)》は、2020年の一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率を15%とし、天然ガスの比率を10%以上にすることを打ち出している。2013年の一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率は9.8%、天然ガスの比率は5.8%であった。つまり、今後長期にわたって非化石エネルギーと天然ガスは急速な発展の勢いを維持し、非化石エネルギーの絶対多数と大量の天然ガスが電力に転換され、必然的に石炭火力発電に対して圧力を形成することになる。

 (4) 政策調整の面では、昨年10月、国家能源局の関係幹部は火力発電設備の利用時間数が低すぎる地区(4,500時間以下)については火力発電の建設規模を厳重に規制すると表明した。これは将来の火力発電の生産能力過剰を防止するとともに、効率の低い投資を避け、資源浪費を防止するものである。今年の全国の6,000kW以上の火力発電設備の利用時間数は高い確率で4,500時間を下回ることになる。

 以上の分析を総合すると、火力発電の生産能力から見ても、また、将来の火力発電の需要の点から見ても、はたまた参入政策の面から見ても、たとえ石炭企業が石炭と電力の一体化を大規模に推進したとしても所期の効果を上げることは極めて難しい。石炭と電力の一体化によって石炭企業が苦境から脱却することは極めて困難であり、石炭企業は石炭と電力の一体化に対して慎重であるよう求められる。

 (中国環境網 10月29日)