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【エネルギー全般・政治経済】

石炭以外のエネルギーを発展させる上で天然ガスこそが最優先の選択肢 (15/11/03)
2015/11/9
中国【エネルギー全般・政治経済】

 環境の代償の点からも、社会的な代償や経済コスト、資源保障能力の点からも、中国のエネルギー構造は重大な転換を実現しなければならない。すなわち、石炭を主体とするエネルギー構造を石炭以外のエネルギーに転換しなければならない。そして、石炭以外のエネルギーを発展させる上で、天然ガスこそが最優先の選択肢になる。

 石炭以外のエネルギーには水力発電、原子力発電、石油、天然ガスや、風力発電、ソーラー、バイオマス等の再生可能エネルギーがある。風力発電やソーラー、バイオマス等はその技術的特性のため、現段階では大規模な開発利用を実現する技術的、経済的条件に達しておらず、補充エネルギーにしかならない。

 中国の水力発電はすでに大きな発展を遂げており、もし引き続き開発を進めるとすれば、西南地区の源流しかないが、その種の事業には巨大な環境リスクと生態系への影響が避けられない。また、水力発電は安定しているとはいえ、依然として年度と季節による変動が極めて大きい。水力発電のシェアはすでに極限に近づいている。

 石油は液体燃料であるとともに重要な化学原料になるが、エネルギーとしては運輸用燃料にしか適用できない。もし発電用燃料として利用すると、不経済であることは間違いない。そのため、石炭に大規模に取って代わるエネルギーとしては、原子力発電と天然ガスの2種類の選択肢しかない。中国はすでに原子力発電の発展に傾いているが、天然ガスは原子力発電と比べても、一種のクリーン・エネルギーとしてフィージビリティと競争力を備えている。天然ガスのメリットは次のいくつかの点に集約される。

 (1) 天然ガスは熱効率が高く、エネルギー利用効率を大幅に高め、エネルギーの浪費を減らすことが出来る。

 (2) 天然ガスは典型的なクリーン・エネルギーであり、脱硫を適正に行なえば、大気汚染物をほとんど発生せず、廃水や固体廃棄物もない。また、水力発電以外の在来型エネルギーと比べると、天然ガスは炭素含有量が最も低く、低炭素エネルギーと見なすことが出来る。

 (3) 天然ガスは家庭の炊事用や自動車燃料用、さらに発電用のエネルギーとしても技術が成熟している。操作が簡単であり、安全係数が高い。

 (4) 原子力発電は天然ガスに比べ、技術が複雑であり、コストが高く、安全リスクが潜在している。ウラン鉱の輸入も必要になる。また、原子力発電は熱発電所の付帯建設も必要であり、石炭火力発電を調節用発電所にすると、温室効果ガスや汚染物の排出も大きくなる。

 (5) 天然ガスは長期供給のポテンシャルが極めて大きく、今後天然ガス価格は比較的低い水準を維持するだろう。オーストラリア、ロシア、ノルウェー、カタール、イラン、さらには米国まで、LNGも含む天然ガス生産能力を建設中であり、欧州もシェールガス開発を進める可能性がある。国際市場への天然ガス供給は充足している。また、天然ガス価格はますます石油価格との連動からはずれるようになり、将来は石炭を下回る可能性すらある。

 (6) 天然ガス供給については、輸入資源を利用するとともに、国内天然ガス資源や、炭層ガス、タイトガス、シェールガス、酸性ガスなど各種非在来型ガスを開発するもことも可能である。輸入ルートについては、クロスボーダーのパイプラインによる輸入や海上LNGの輸入が可能である。

 (7) 天然ガスはパイプライン網の建設によって、電力網と同様に全国各地の都市と農村にクリーンで効率的で安価な高品質エネルギーを送ることが出来る。

 (8) エネルギーを天然ガスに転換することで巨大なビジネスチャンスを生み出し、関連産業の発展に波及させることが出来る。全国の都市と農村及び輸入源をカバーする天然ガスパイプライン網を建設することは、住民の生活の質とエネルギーセキュリティを大きく改善することにつながる。

 習近平総書記が提唱した「生産革命」「消費革命」「技術革命」「体制革命」やエネルギーセキュリティをめぐる国際協力の強化は、エネルギーの転換を推進する上で重要な指導的戦略になる。天然ガスの発展は、中国がクリーン・低炭素・高効率のエネルギーへと転換し、大気汚染を軽減する上ですでに必然の流れになっている。《エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)》は、2020年の目標として、一次エネルギーに占める石炭の比率を62%以下に抑えること、天然ガスの比率を10%以上に引き上げること、天然ガス基幹パイプラインの総延長を12万キロ以上にして都市住民が基本的に天然ガスを利用できるようにすることを掲げている。

 未来のエネルギー構造調整においては、東部沿海地区と四川、重慶、新疆、甘粛、陝西等の資源条件を備える地区を優先して天然ガスをエネルギーとして発展させる。スモッグ管理の重点地区では石炭火力発電所から天然ガス発電所への転換を進める。大口工業需要家の開拓、LNG専用埠頭とターミナルの建設と発展を並行して進めるとともに、天然ガス基幹パイプライン網と都市ガス網の建設を加速させる。天然ガスの発展に伴い、中国のスモッグや酸性雨問題が急速に好転するに違いない。

 (筆者:劉強 中国社会科学院計量経済技術経済研究所エネルギー研究室主任・グローバルエネルギーセキュリティシンクタンクフォーラム事務局長)

  (中国石油報 11月3日)

 ●劉強氏の論説を抜粋した。