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中国
【原子力】

中国原子力発電の「走出去」をいかに進めるべきか (16/03/07)
2016/3/7
中国【原子力】

 政府工作報告は第13次5ヵ年規画期に「『一帯一路』建設で大きな進展を遂げ、生産能力をめぐる国際協力で新たな打開を実現する」ことに言及しているが、中国の原子力発電企業はすでにこうした試みを進めている。

 「華龍公司」の発足

 中国の原子力発電輸出の主役は「華龍一号」である。「華龍一号」は原子力発電企業2社が中国の30年余りにわたる原子力発電所の建設と運営のノウハウをベースに、海外の第三世代原子力発電技術の先進理念も参考にしつつ、国際的にも最も高い安全基準を採用して共同で開発を進めた第三世代原子力発電技術である。

 全国政治協商会議委員であり、中核集団核電工程公司の総経理である劉巍氏によると、「華龍一号」の世界初の実証事業である福清原子力発電所5号機は2015年5月、海外初の実証炉は2015年8月に着工され、2台目も今年着工する見通しである。

 政府主導の下で、原子力発電企業2社はそれぞれの技術要員を抽出して華龍国際核電技術有限公司を設立した。技術のさらなる融合を推進することが目的である。新公司の設立は中国独自の第三世代原子力発電技術の発展と原子力発電の「走出去」(対外進出)にとって極めて重要な意義を有すると評されている。

 華龍公司の取締役の一人でもある劉巍氏によると、6月には技術の融合を完了するとともに海外での新事業着工を目指す。

 「一帯一路」に30基の原子炉建設

 全人代代表であり中国核工業集団の董事長(会長)である孫勤氏は「2020年までに世界中で130基の原子力発電設備が新たに建設され、2030年までには300基が建設される」と述べた。新規設備の80%は「一帯一路」諸国に建設されることになる。
 原子力発電市場のパイをめぐる競争は熾烈を極めるものになる。韓国、ロシア、日本、米国等がそれぞれ策を講じるだろう。孫勤氏によると、中核集団は3030年までに「一帯一路」沿線諸国に約30基の原子炉を建設する計画である。主な戦略対象は発展途上国であり、具体的にはアルゼンチンに重点を置く南米市場、アルジェリアに重点を置くアフリカ市場、パキスタンに重点を置くアジア市場が挙げられる。

 全国政治協商会議委員であり中核新能源有限公司総経理である銭天林氏も「『一帯一路』のチャンスのうち20%でも掴むことができれば、3兆元の生産高を生む」と算段している。銭天林氏は「華龍一号」によって核燃料、原子力発電運営サービス、廃炉管理や核技術の応用など全産業チェーンの「走出去」を促すことを提言している。

 孫勤氏もまた、中国は所在国に整った原子力発電産業体系を構築して現地化を実現し、所在国での事業設計、設備製造、労働力の資質向上などをサポートする意向であり、その能力もあると表明する。

 「技術応用」の向上

 試算によると、米国の核技術の年間生産高は3,500億ドル、日本は1,500億ドルに上り、いずれもGNPの3〜4%を占める。中国も核技術産業のポテンシャルを掘り起こす必要がある。

 全人代代表であり中核蘭州ウラン濃縮有限公司総経理の朱紀氏は核燃料の専門技術を活用する民用製品の開発を建議し、「華龍一号」の「走出去」と合わせて、独自ブランドの核燃料集合体の輸出を促進し、国際市場への影響を強めるべきであると主張している。

 また、全人代代表であり中国原子力科学研究院院長である万鋼氏は、放射線医学は重大疾患の臨床診断並びに治療において重要な役割を発揮しており、放射線医学の普及と発展には人材、設備や診療に用いる放射性医薬品が必要であると指摘する。万鋼氏は「この10年、中国では放射性医薬品が新たに認可されていない」と述べ、法規を整備し有効な仕組みを確立して放射線医学の臨床応用を推進することを建議した。

 孫勤氏によると、中核集団は放射性医薬品、撮像装置、検知器やアクセラレーターといった技術でも優位を備えているが、「一帯一路」諸国の多くは核技術の応用がスタートしたばかりの段階であり、約4兆元の巨大市場に向けて早期に計画配置を進めることは「一帯一路」沿線44億の人口の民生と福祉に寄与することにもつながる。

 (中国新聞網 3月7日)