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【エネルギー全般・政治経済】

権威人士「L」字型経済について専門家が解説 「断崖式墜落」は発生しない (16/05/16)
2016/5/16
中国【エネルギー全般・政治経済】

 先日、「権威人士」が人民日報で3回目の発言を行い、中国経済の今後の動向について「L」字型になるとの判断を明確に示した。そのため、「L」という字はかつてなく炎上し、「L」字型について4つの解釈を示したネチズンもいる。すなわち、「階段落ち」式、「寝そべったL」式、「断崖墜落」式、「底なし」式である。中国経済が今後「L」字型の流れになるとするなら、論理的にはこの4種類のいずれかになることは間違いない。

 中国経済は4つの「L」のうちどの形をたどるのか

 「権威人士」は今後の中国経済が「L」字型の道筋をたどるとともに、この「L」字型は一つの段階であり、1年や2年で終わるものはないと指摘している。今後数年、総需要の低迷と生産能力過剰が併存する構造を根本的に改めることは難しく、以前のようにいったん回復すると上昇傾向が持続し数年間の高成長を実現するようなことはあり得ない。

 ネチズンが指摘する「断崖墜落」の可能性について、元国務院発展研究センター副主任であり、第13次5ヵ年計画専門家委員会の委員である劉世錦氏は明確に否定する。劉世錦氏は取材に対し、中国経済は底入れ後に「L」字型になり、長期にわたって「L」字型の底部が続くが、小さい「W」型の波が発生する可能性があると指摘した。

 この数年、中国経済は徐々に鈍化する傾向を示している。中国経済の成長率は2010年を最後に二けた成長が終了、2011年は9%に下がり、2012年からは7%台で安定していたが、2015年第3四半期からは7%以下に下がり、ここ6年間で経済成長率は3〜4ポイント下がったことになる。

 劉世錦氏によると、中国経済は過去6年の低下を経て、すでに高成長から中成長に転じ、将来は中成長になる可能性が高い。すでに底に近づいており、中国経済にはまだ比較的大きい成長ポテンシャルがあるので、再び低下することはあっても果てしなく落ち続けることはない。「L」字型の鍵は徐々に新たな成長のステージに進むかどうかにかかっている。「L」の横棒は一定期間持続するが、「予測もできない落下」や「断崖墜落」が発生することはない。

 劉世錦氏は今年と来年の2年間が底入れの鍵になると強調する。もし新たな成長速度のステージに進むことが出来れば、5〜10年ほどの成長期を維持することが出来る、しかし、経済の底入れ過程が順調に進まなければ、今後一定時期の変動は極めて大きなものになり、反復を繰り返す。底入れの到来が明確になるまで、何回かの変動を経過しなければならない。

 一方、民生証券研究院の管清友執行院長は中国経済網の取材に対し「階段落ち」の「L」字型の可能性も高くないと述べた。数年間の中国経済のボトムラインは依然6.5%前後に水準になる。中国経済は今後極めて長期にわたって「L」字型が続き、四半期別では反発や反落があるにせよ、その幅はあまり大きなものにはならず、全体的に平穏であり、変動は短期的なものに止まる。

 国泰君安の首席マクロアナリストの任澤平氏は、経済は短中期的には「W」字型になり、長期的には「L」字型になると判断している。

 「L」字型が供給側構造改革を迫る

 中国経済が現在及び今後一定時期において供給側、需要側のいずれにおいて問題に直面することになるが、主要な矛盾は供給側に存する。当面の苦境から脱出する根本的な策は構造改革にある。「権威人士」は、供給側構造改革は当面及び今後一定時期における中国の経済対策の主軸になる。また、長期的に見ても、供給側構造改革は中進国の罠を飛び越える「生命線」になり、これは負けることの出来ない戦争である。

 劉世錦氏は、需要側政策、特に刺激的な政策が最早大きな作用を発揮できず市場の需要を誤誘導することは事実が証明していると強調する。刺激的政策については極めて慎重であるべきであり、供給側構造改革の推進に重点を置く必要がある。供給側改革に当たっては重点を明確にし、全要素生産率や企業収益の向上を中核目標に据え、要素改革を適正に推進し、特に投資の増加を推進すると同時に効力を高められる改革を優先的に推進しなければならない。

 「当面の経済の主要な矛盾はやはり供給側にあり、引き続き供給側改革を強化しなければならない」と管清友氏は述べ、中国には構造改革を行う余地と条件があり、大規模な刺激策を再び取ることはないと指摘する。

 供給側構造改革を推進するには、生産側から手を付け、過剰生産能力の解消、産業の最適化と再編、企業コストの引き下げ、戦略的新興産業並びに現代的サービス業の発展、公共製品とサービス供給の増加、需要の変化に対する供給構造の適応性と臨機応変性の向上を重点的に促進しなければならない。要するに、「脱生産能力・脱在庫・デレバレッジ・コスト引き下げ・不足部分の充実」である。

 「権威人士」の指摘するところによると、供給側構造改革の5大任務は一つのシステム設計であり、各任務の間の相互連携と相互補完の作用を統一的に計画し、動態的に最適化を進めなければならない。

 国務院発展研究センターマクロ経済部の張立群研究員によると、経済の「L」字型の流れによって、供給側構造改革の促進を迫る圧力が形成される。安定的で必要な経済成長を保ち、企業が構造調整に投じる最低限の財力を持てるようにする一方、企業に苦しい「修養」を迫る。「構造調整は痛みを伴うものであり、企業が高成長の中でぬるま湯に浸っていれば構造調整のエンジンがかからないが、かといって企業が困難に打ちのめされれば構造調整の主体を失うことになる」。

 国家統計局中国経済景気監測センターの潘建成副主任は次のように強調する。いささかもぶれることなく「キョンシー企業」の処理を進めることが必要であり、「捨て駒」によって新たな活路をもたらし、困難にある産業と企業が苦難の中から再生するよう促すのである。

 (中国経済網 5月16日)