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【エネルギー全般・政治経済】

「エネルギー部」とエネルギー管理構造の行方 (08/02/22)
2008/2/22
中国【エネルギー全般・政治経済】

 エネルギー部の新設が秒読み段階に入った。

 「エネルギー法」起草チームは、現在同法草案に対する意見を整理するとともに、専門家や関係部局と共同して法案修正作業を行っており、時機を見て国務院に上程することになる。国務院の審査を通過した後は、全人代の審議にかけられる予定である。

 「エネルギー法」草案によると、「国務院エネルギー主管部門」が全国のエネルギー行政を統一管理することになるが、その「国務院エネルギー主管部門」の名称は「エネルギー部」になると言われている。

 「エネルギー法」草案では、「国務院エネルギー主管部門」は国家エネルギー戦略の統括、エネルギー計画とエネルギー政策の策定及び実施、全国エネルギー業界の管理、エネルギー分野の開発に当たることになる。草案で言うエネルギーには、石炭、原油、天然ガス、炭層メタンガス、水力、原子力、風力、ソーラー、地熱、バイオマス等の一次エネルギー、電力、熱力、石油製品等の二次エネルギー及びその他の新エネルギー並びに再生可能エネルギーが含まれる。現行のエネルギー管理部局に中には、エネルギー法草案の中で描かれているすべての機能を担うことができる機関はなく、そのため、エネルギー部の新設は必然の成り行きになるだろう。

 なお、新設のエネルギー行政機関はエネルギー分野のほとんど全てをカバーすることになるが、しかし、現在水利部や国土資源部の担っている行政機能をこのエネルギー行政機関に移管するかどうかについては、国土資源部筋は、国土資源部の解体や統合はないとしている。また、「エネルギー法」草案はこの点についてすでに暗示しており、「国務院エネルギー主管部門は国土資源部門と合同でエネルギー・鉱物資源開発事業の参入条件及び管理方法を策定する」と規定している。

 エネルギー部の新設とエネルギー法の施行によって、中国のエネルギー管理構造は根本的に変化するだろう。エネルギー部の新設をめぐっては、エネルギー管理構造の中で「政策決定」「行政」「監督」の3つの権限は分離することになろう。

 2005年に設けられた国家エネルギー指導小組は、温家宝首相がリーダーとなり、エネルギー指導小組弁公室は発展改革委員会に設置されている。昨年12月、エネルギー指導小組弁公室専門家チームは、国家エネルギー専門家諮詢委員会に改称され、国家エネルギー指導小組の諮問機関に位置づけられることになった。国家のエネルギー戦略及び計画、重要エネルギー政策及びエネルギー分野における重要問題について研究、政策提言を行って、国のエネルギー政策決定に資するのが委員会の任務である。諮詢委員会の下には、石炭、電力・原子力、石油・天然ガス、再生可能エネルギー、省エネ、エネルギー経済の6つの専門委員会が置かれ、40名の専門家から構成される。

 エネルギー指導小組弁公室によると、エネルギー指導小組弁公室専門家チームを国家エネルギー指導小組諮詢委員会に改めたのは、エネルギー分野における重要問題の研究を強化するためである。諮詢委員会はエネルギー政策の決定過程において相当重要な役割を担うことになるだろう。諮詢委員会が設けられたことは、エネルギー部の新設後も国家エネルギー弁公室がエネルギー産業計画やエネルギー政策の研究を行い、一方、具体的な行政事務は実務機関が担当することを暗に示している。なお、このような構想は「エネルギー法」草案の中でも示唆されており、「国家エネルギー戦略とは国家のエネルギーの持続可能な発展とエネルギーセキュリティの確保を統一的に計画、指導する総合方略であり、エネルギー計画及びエネルギー政策を策定する上で基本的な根拠となる。国家エネルギー戦略は国務院が策定、公布する。国務院は関係部門又は機関に国家エネルギー戦略の評価を委託する」と規定されている。つまり、国家エネルギー戦略の策定、評価及び修正はいずれもエネルギー法草案中の「国務院エネルギー主管部門」によって完結されるものではないということである。

 さらに、エネルギーの監督管理をめぐっては、「エネルギー法」草案は、エネルギー供給分野はより一層市場化原則を体現すると指摘している。つまり、将来のエネルギー価格形成の仕組みはより一層市場化原則を体現したものになり、エネルギー監督管理行政は、電力や都市ガス等の自然独占分野の公平な開放、均一サービス、消費者の利益保護といった専門的な監督管理に向かうことになる。

 以上、要するに、中国のエネルギー管理構造は、国家エネルギー戦略並びに重要政策の決定、具体的な行政、そして監督管理の3つのレベルに整理されるだろう。

 (21世紀経済報道 2月22日)