原油市場にとっては、当面のグローバルリスクを押し上げている英国のEU離脱よりも、むしろ中国こそが無視できない存在である。世界のメディアはブレクジットから目が離せないが、多くの証拠からも明らかなように、中国の原油市場と燃料市場のエンジンの転変はグローバルエネルギー市場に対してさらに大きい影響を及ぼす。
表面上は世界第2位の原油消費国である中国の原油輸入量は健全である。今年1〜5月の中国の原油輸入は前年同期比で16.5%増加した。しかしながら、実際には、それは次のような要素が作用した結果である。
(1) 国内原油生産量が初めて低下
公式統計によると、5月の中国の国内石油生産量は前年同期比7.3%下がり、1〜5月は3.7%下がった。
1〜5月の国内原油生産量は8,500トン/日、408万B/Dに相当し、2015年同期に比べ約17万B/D下がった。つまり、100万B/D近くの原油輸入の増加分の中で国内生産量の低下分を補ったのはわずか17万B/Dに過ぎないということになる。
(2) 中国が引き続き速いペースで原油戦略備蓄を増加
中国政府当局は原油備蓄量を発表していないが、どのくらいの原油を備蓄タンクに入れたかを確定する最も優れた方法は原油総量から製油所の処理量を差し引くことである。
今年1〜5月の原油輸入量に国内生産量を加えると合計2.409億トンになり、一方、製油所の処理量は2.273億トンである。つまり、1,960万トン、約94.1万B/Dが商業備蓄または戦略備蓄に加わったことになる。これは2015年の数字をはるかに上回る。2015年の原油輸入量並びに国内生産の合計と製油所の処理量の差は56万B/Dであった。
(3) 中国の石油製品、特にガソリン・軽油・灯油の輸出増加
今年1〜5月の中国の軽油輸出は322%急増して約21.7万B/Dになり、ジェット燃料は8%増加して約24.5万B/Dに、ガソリンは63.5%増加して約18.7万B/Dになった。
以上の3つの要素を総合すると、中国の堅調な原油輸入は中国の原油需要の堅調を反映しているわけではないことが明瞭になる。実際、中国の実際の石油製品消費量に増加が発生しているわけではないと見られる。
こうした見方は、製油所の処理量をさらに分析することでも裏付けられる。製油所の処理量に対する分析によると、今年1〜5月の中国の軽油生産量は2.2%のマイナスになっている。
軽油の生産量の低下と輸出の大幅な増加や、軽油が主にトラック輸送や施工に用いられることを勘案すると、中国経済が苦しい状況にあることが示される。
一方、今年1〜5月のガソリン生産量は9%増加したが、このことは中国経済が消費型経済に転換しつつあることを示している。
総じて言えば、中国の石油輸入は今後とも引き続き堅調を維持する公算であり、特に国内の戦略備蓄を支えることになる。一方、アジアの燃料輸出市場において中国はますます大きい役割を発揮することになり、こうした傾向は今後も続くだろう。
(中金網 6月29日)
原油市場にとっては、当面のグローバルリスクを押し上げている英国のEU離脱よりも、むしろ中国こそが無視できない存在である。世界のメディアはブレクジットから目が離せないが、多くの証拠からも明らかなように、中国の原油市場と燃料市場のエンジンの転変はグローバルエネルギー市場に対してさらに大きい影響を及ぼす。
表面上は世界第2位の原油消費国である中国の原油輸入量は健全である。今年1〜5月の中国の原油輸入は前年同期比で16.5%増加した。しかしながら、実際には、それは次のような要素が作用した結果である。
(1) 国内原油生産量が初めて低下
公式統計によると、5月の中国の国内石油生産量は前年同期比7.3%下がり、1〜5月は3.7%下がった。
1〜5月の国内原油生産量は8,500トン/日、408万B/Dに相当し、2015年同期に比べ約17万B/D下がった。つまり、100万B/D近くの原油輸入の増加分の中で国内生産量の低下分を補ったのはわずか17万B/Dに過ぎないということになる。
(2) 中国が引き続き速いペースで原油戦略備蓄を増加
中国政府当局は原油備蓄量を発表していないが、どのくらいの原油を備蓄タンクに入れたかを確定する最も優れた方法は原油総量から製油所の処理量を差し引くことである。
今年1〜5月の原油輸入量に国内生産量を加えると合計2.409億トンになり、一方、製油所の処理量は2.273億トンである。つまり、1,960万トン、約94.1万B/Dが商業備蓄または戦略備蓄に加わったことになる。これは2015年の数字をはるかに上回る。2015年の原油輸入量並びに国内生産の合計と製油所の処理量の差は56万B/Dであった。
(3) 中国の石油製品、特にガソリン・軽油・灯油の輸出増加
今年1〜5月の中国の軽油輸出は322%急増して約21.7万B/Dになり、ジェット燃料は8%増加して約24.5万B/Dに、ガソリンは63.5%増加して約18.7万B/Dになった。
以上の3つの要素を総合すると、中国の堅調な原油輸入は中国の原油需要の堅調を反映しているわけではないことが明瞭になる。実際、中国の実際の石油製品消費量に増加が発生しているわけではないと見られる。
こうした見方は、製油所の処理量をさらに分析することでも裏付けられる。製油所の処理量に対する分析によると、今年1〜5月の中国の軽油生産量は2.2%のマイナスになっている。
軽油の生産量の低下と輸出の大幅な増加や、軽油が主にトラック輸送や施工に用いられることを勘案すると、中国経済が苦しい状況にあることが示される。
一方、今年1〜5月のガソリン生産量は9%増加したが、このことは中国経済が消費型経済に転換しつつあることを示している。
総じて言えば、中国の石油輸入は今後とも引き続き堅調を維持する公算であり、特に国内の戦略備蓄を支えることになる。一方、アジアの燃料輸出市場において中国はますます大きい役割を発揮することになり、こうした傾向は今後も続くだろう。
(中金網 6月29日)