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【エネルギー全般・政治経済】

中国のエネルギー第13次5ヵ年計画 脱生産能力が最優先政策 (16/07/11)
2016/7/11
中国【エネルギー全般・政治経済】

 意見公募を重ねた上でエネルギー第13次5ヵ年計画が間もなく公布される。第13次5ヵ年計画期にはエネルギー消費総量を50億tce(標準炭換算トン)以内に抑える計画であり、特に石炭消費は基本的にピークに達するようにし、総量を41億トン以内に抑え、比率を58%以下にする。一方、非化石エネルギーの比率は15%以上に高める。

 エネルギー第13次5ヵ年計画が第12次と最も異なるのは、過剰生産能力の解消を最優先政策としている点である。第13次5ヵ年計画期の最初の3年間は原則として石炭と製油の新規事業を行なわず、また2年間は石炭火力発電と石炭化学工業の「凍結期」とする。同時に風力発電と太陽光発電の開発ペースを引き下げ、2年間かけて電力機会損失の比率を合理的な水準に抑制する。こうした中、水力発電と原子力発電は構造的不足を補う新たな力点とし、計画を前倒しして、着工規模を適度に拡大する。

 石炭火力発電の生産能力過剰が激化している。中国電力企業聯合会が発表した《2016年1〜5月期の電力事業運行簡況》によると、1〜5月の全国の一定規模以上の火力発電所の発電電量は1兆7,122億kWh、前年同期比3.6%下がり、低下幅は前年同期を0.5ポイント上回った。設備の平均利用時間数は1,635時間、前年同期に比べ178時間下がり、10年来の最低水準になった。さらに深刻なことに、建設中及び建設予定の石炭火力発電事業はなお膨大であり、1〜5月の火力発電新規設備規模は2,425万kWに上り、過去最高を記録した。

 石炭化学工業にも同じようなリスクがある。中国石油化工・化学工業聯合会が発表した《2016年度石油化学産業生産能力予警報告》によると、油価が下落する中で、2015年の石炭液化の生産能力平均利用率は2014年に比べ26%低下した。深刻な赤字に陥っている企業もあり、エチレングリコール価格は40%、ポリオレフィン価格は30%下落して、石炭由来のエチレングリコールとポリオレフィンの収益能力は大幅に縮小した。2016年は生産能力の過剰がますます突出する。

 こうした状況を受けて、エネルギー第13次5ヵ年計画は、最初の2年間は石炭火力発電の新規事業の許認可を遅らせるとともに強力な措置を講じて既存設備の利用率を高めることで全国の石炭火力発電の平均利用時間数を合理的な水準にまで回復させることを打ち出している。そして後半3年は全国の総量規制の要求に従って、省毎に新規石炭火力発電設備規模を合理的に部署し、今後5年間の石炭火力発電の新規稼動設備を約10.5億kWに抑える。一方、石炭化学工業については、前半2年間は主に承認済みの高度化実証事業の建設を推進し、第13次5ヵ年計画期の石炭液化の生産能力を約1,300万トンに、SNG(石炭由来代替天然ガス)生産能力を約180億m3に抑制する。

 エネルギー第13次5ヵ年計画の起草に参加している関係者は「石炭や製油など深刻な生産能力過剰が発生している産業に対しては政策要求はさらに厳しいものになる。原則として前半3年は新規建設事業の許認可を停止し、後半2年は過剰生産能力の解消成果と市況に応じて、減量置換を原則に新規建設事業を精細に部署する」と述べた。同氏によると、現在、中国国内の製油能力利用率は70%足らずであり、世界平均水準を15ポイント下回っているにも関わらず、高品質のクリーン石油製品の生産能力は十分でない。

 石炭については、第13次5ヵ年計画期に生産能力5億トンを退出させ、減量型再編によって約5億トン減らして、生産能力を40億トン以下に抑制する。大型石炭生産基地14ヵ所の生産能力が全国の95%を占めるようにする。石炭の過剰生産能力解消はすでに本格化しており、今年の脱生産能力の任務は第13次5ヵ年計画期の全体目標の約半分を占める。関係する省・直轄市・自治区はすでに「軍令状」(目標責任書)にサインしている。

 在来型エネルギーだけでなく、急成長を遂げた新エネルギーもますます深刻化する電力機会損失問題に直面している。国家能源局によると2015年の全国の風力発電の機会損失率は15%に達し、過去最高になった。2016年第1四半期も引き続き上昇して26%にまで到った。一方、第1四半期の太陽光発電の発電制限は約19億kWhに上り、甘粛省の機会損失率は2015年の31%から39%に、同じく新疆自治区は26%から52%にまで上昇した。

 そのため、第13次5ヵ年計画期は分散型風力発電と分散型太陽光発電の開発を優先しつつ、「三北(西北・東北・華北)」地区の風力発電基地と太陽光発電所の建設を穏当に推進して、2年間かけて風力発電と太陽光発電の機会損失を合理的な水準に抑え、後半3年は建設規模を適度に拡大する。2020年には風力発電の設備規模を約2.5億kWとし、発電コストを石炭火力発電並みにする。太陽光発電設備規模は1.5億kW前後とし、ユーザーサイドの廉価な系統連系を実現する。

 こうした中で、水力発電と原子力発電を、2030年の非化石エネルギー発展目標の達成に向けて強力に推進する道筋として位置付ける。エネルギー第13次5ヵ年計画は、金沙江、瀾滄江、雅礱江、大渡河など大型水力発電基地建設のスケジュールを科学的に配置すること、黄河上流と雅魯蔵布江中流の水力発電基地開発を合理的に進めること、怒江中下流と雅魯蔵布江下流の水力発電基地建設を適時始動することを打ち出している。第13次5ヵ年計画期には在来型水力発電6,000万kW以上に着工し、在来型水力発電の規模を3.4億kWとする。一方、原子力発電については、AP1000、CAP1400、華龍一号を主力原子炉として、沿海原子力発電所事業を積極的に推進すると同時に、内陸部の原子力発電事業のプレスタディを展開し、論証と立地先の保護を適正に進める。また、高温ガス実証炉を建設し、スマート小型炉、商業高速炉や原子力による熱供給、スチーム供給、水素製造、海水淡水化等の実証事業を適時始動する。2020年には稼動中の原子力発電設備を5,800万kWとし、建設中を3,000万kW以上とする。

 (経済参考報 7月11日)