ゴールドマンサックスは最近発表した《市場の予想を上回る中国低炭素経済の成長速度》と題するレポートによると、中国政府は2014年11月、米中気候変動共同声明の中で2030年頃を炭素排出のピークとする計画を発表したが、中国の炭素排出目標はそれよりも早く実現することになり、しかも主要炭素排出源である石炭火力発電設備から、水力発電、ソーラー、風力発電及び原子力発電などクリーン・エネルギーへの転換がさらに進むことになる。 ゴールドマンサックスのこうした判断は、中国の経済成長とエネルギー需要のさらなる鈍化に基づくものである。中国の2016年のGDP成長率は6.6%になり、2017年は6.4%になる。2015〜2030年の長期予測では複合成長率は5%でしかない。また、2030年までのエネルギー需要の年間複合成長率はわずか1%で、市場の予想を下回り、2015〜2030年のGDP年平均複合成長率の5分の1に止まる。2020年のエネルギー需要は政府の予想値を5%下回る(石炭は政府の設定した目標を4億トン下回り、天然ガスは740億m3下回る)。一方、水力発電、風力発電、ソーラー発電及び原子力発電も含む非化石エネルギーは2020年の中国の一次エネルギー構造の18%を占めることになる。これに対し、政府の目標は最低15%である。
ゴールドマンサックスの判断は、石炭消費が2014年にピークに達したことをもう一つの根拠としている。石炭消費がピークを迎えるのは2016〜2020年というのが政府の従来の予想であった。石炭は中国で消費量が最も大きい一次エネルギー(ゴールドマンサックスの推計では2015年の総発電量の中で石炭火力発電が70%)であり、したがって化石燃料の炭素排出も2014年にピークに達していたという結論が導き出される。ゴールドマンサックスの予測によると、中国の石炭火力発電設備容量は2019年から低下が始まり、2020年の設備容量は政府目標を12%下回ることになる。また、中国の発電設備容量は2015年の1,507GWから2020年には1,873GWに増えるが、その中で石炭火力発電設備は2020年には963GWになって、政府部門の予測値の1,100GWを下回る。石炭火力発電設備の増加幅は年平均1%に過ぎず、しかも総発電量に占める石炭火力発電の比率は2015年の70%から2020年には58%に下がる。
国家発展改革委員会の発表によると、石炭火力発電企業の収益は大きい下降圧力に直面しており、ここ数年、火力発電設備の利用時間数の低下が続き、2015年は4,329時間にまで下がって、1969年以来の最低を記録した。今年上半期の火力発電利用時間数は前年同期に比べ194時間減り、通年の利用時間数は4,000時間かもしくはさらにそれを下回ると予想される。
今回のレポートの執筆者の一人であるゴールドマンサックスアジア太平洋地区エネルギー・化学工業・公共事業研究グループ責任者の周剛氏は、石炭火力発電の設備投資は政策レベルにおいても実際の運用レベルにおいてもすでに規制を受け始めていると見ている。「全国的に電力供給が需要を上回っているだけでなく、クリーン・エネルギー電力の直接供給も含めて国の政策は火力発電以外に傾斜している。電力過剰を背景に、電力消費の増加規模も基本的に毎年1〜2%になり、電力企業には新たに電力設備を増やす意欲はあまりない」と周剛氏は言う。 ゴールドマンサックスのレポートは、2020年のクリーン・エネルギーについて、水力発電400GW、風力発電225GW、原子力発電54GW、ソーラー130GWとする予測値を示している。うち水力発電が一次エネルギーに占める比重は21%になり、風力発電は7%、ソーラーは3%、原子力発電は6%になる。
電力過剰の下では、電力網の再生可能エネルギー電力の受入れが課題になる。周剛氏は、戦略面から見て、電力網はクリーン・エネルギーを優先的に受け入れるべきであると指摘するが、電力需要が大幅に反発しない限り、電力供給の過剰は火力発電に影響するだけでなく、クリーン・エネルギーの利用時間数の面でも不利に働く。
中国政府は火力発電建設のスピードを落とすよう通達するとともに、一部の電力制限地区では新規風力発電事業も停止させている。周剛氏によると、発電企業の資本投下が下がると、今後の減価償却のコストの伸びも鈍化し、負債が下がり、利払いも減少するというポジティブな側面もある。
天然ガス発電については、ゴールドマンサックスは、設備容量が2015年の約66GWから2020年には100GWになるとの予想を示している。天然ガス発電の優位として、発電所の設備規模がソーラーや風力発電よりも大きいこと、自然条件や地理的な位置による制約が相対的に小さいこと、そして多数の長期LNG契約が結ばれており、供給面で充足していることが挙げられる。しかしながら、周剛氏によると、天然ガス発電の電力価格はまだまだ低く、しかも政府は天然ガスの利用時間をあまり高くすることを奨励しておらず、天然ガス発電は依然としてピーク調整が主である。利用時間数があまりにも低いと、天然ガス設備建設の積極性も低くなる。「風力発電とソーラーの利用問題を解決した上で、もしもっと多くの発電設備を建設する必要があるなら、ガス発電がもっと増えることになる」と周剛氏は言う。
(財新網 8月12日)
ゴールドマンサックスは最近発表した《市場の予想を上回る中国低炭素経済の成長速度》と題するレポートによると、中国政府は2014年11月、米中気候変動共同声明の中で2030年頃を炭素排出のピークとする計画を発表したが、中国の炭素排出目標はそれよりも早く実現することになり、しかも主要炭素排出源である石炭火力発電設備から、水力発電、ソーラー、風力発電及び原子力発電などクリーン・エネルギーへの転換がさらに進むことになる。
ゴールドマンサックスのこうした判断は、中国の経済成長とエネルギー需要のさらなる鈍化に基づくものである。中国の2016年のGDP成長率は6.6%になり、2017年は6.4%になる。2015〜2030年の長期予測では複合成長率は5%でしかない。また、2030年までのエネルギー需要の年間複合成長率はわずか1%で、市場の予想を下回り、2015〜2030年のGDP年平均複合成長率の5分の1に止まる。2020年のエネルギー需要は政府の予想値を5%下回る(石炭は政府の設定した目標を4億トン下回り、天然ガスは740億m3下回る)。一方、水力発電、風力発電、ソーラー発電及び原子力発電も含む非化石エネルギーは2020年の中国の一次エネルギー構造の18%を占めることになる。これに対し、政府の目標は最低15%である。
ゴールドマンサックスの判断は、石炭消費が2014年にピークに達したことをもう一つの根拠としている。石炭消費がピークを迎えるのは2016〜2020年というのが政府の従来の予想であった。石炭は中国で消費量が最も大きい一次エネルギー(ゴールドマンサックスの推計では2015年の総発電量の中で石炭火力発電が70%)であり、したがって化石燃料の炭素排出も2014年にピークに達していたという結論が導き出される。ゴールドマンサックスの予測によると、中国の石炭火力発電設備容量は2019年から低下が始まり、2020年の設備容量は政府目標を12%下回ることになる。また、中国の発電設備容量は2015年の1,507GWから2020年には1,873GWに増えるが、その中で石炭火力発電設備は2020年には963GWになって、政府部門の予測値の1,100GWを下回る。石炭火力発電設備の増加幅は年平均1%に過ぎず、しかも総発電量に占める石炭火力発電の比率は2015年の70%から2020年には58%に下がる。
国家発展改革委員会の発表によると、石炭火力発電企業の収益は大きい下降圧力に直面しており、ここ数年、火力発電設備の利用時間数の低下が続き、2015年は4,329時間にまで下がって、1969年以来の最低を記録した。今年上半期の火力発電利用時間数は前年同期に比べ194時間減り、通年の利用時間数は4,000時間かもしくはさらにそれを下回ると予想される。
今回のレポートの執筆者の一人であるゴールドマンサックスアジア太平洋地区エネルギー・化学工業・公共事業研究グループ責任者の周剛氏は、石炭火力発電の設備投資は政策レベルにおいても実際の運用レベルにおいてもすでに規制を受け始めていると見ている。「全国的に電力供給が需要を上回っているだけでなく、クリーン・エネルギー電力の直接供給も含めて国の政策は火力発電以外に傾斜している。電力過剰を背景に、電力消費の増加規模も基本的に毎年1〜2%になり、電力企業には新たに電力設備を増やす意欲はあまりない」と周剛氏は言う。
ゴールドマンサックスのレポートは、2020年のクリーン・エネルギーについて、水力発電400GW、風力発電225GW、原子力発電54GW、ソーラー130GWとする予測値を示している。うち水力発電が一次エネルギーに占める比重は21%になり、風力発電は7%、ソーラーは3%、原子力発電は6%になる。
電力過剰の下では、電力網の再生可能エネルギー電力の受入れが課題になる。周剛氏は、戦略面から見て、電力網はクリーン・エネルギーを優先的に受け入れるべきであると指摘するが、電力需要が大幅に反発しない限り、電力供給の過剰は火力発電に影響するだけでなく、クリーン・エネルギーの利用時間数の面でも不利に働く。
中国政府は火力発電建設のスピードを落とすよう通達するとともに、一部の電力制限地区では新規風力発電事業も停止させている。周剛氏によると、発電企業の資本投下が下がると、今後の減価償却のコストの伸びも鈍化し、負債が下がり、利払いも減少するというポジティブな側面もある。
天然ガス発電については、ゴールドマンサックスは、設備容量が2015年の約66GWから2020年には100GWになるとの予想を示している。天然ガス発電の優位として、発電所の設備規模がソーラーや風力発電よりも大きいこと、自然条件や地理的な位置による制約が相対的に小さいこと、そして多数の長期LNG契約が結ばれており、供給面で充足していることが挙げられる。しかしながら、周剛氏によると、天然ガス発電の電力価格はまだまだ低く、しかも政府は天然ガスの利用時間をあまり高くすることを奨励しておらず、天然ガス発電は依然としてピーク調整が主である。利用時間数があまりにも低いと、天然ガス設備建設の積極性も低くなる。「風力発電とソーラーの利用問題を解決した上で、もしもっと多くの発電設備を建設する必要があるなら、ガス発電がもっと増えることになる」と周剛氏は言う。
(財新網 8月12日)