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【エネルギー全般・政治経済】

石炭脱生産能力の影響は予想を超える 火力発電事業のコストが1,000億元以上上昇する恐れも (16/08/25)
2016/8/25
中国【エネルギー全般・政治経済】

 今年上半期の石炭脱生産能力は所定の要求を満たせなかったが、石炭の減産による石炭価格の上昇は市場の予想を超えている。その影響を最も受けるのは火力発電企業である。火力発電のコストの中で石炭が半分以上を占める。今年下半期には脱生産能力がさらに強化され、スピードも上がることを考えると、火力発電の収益はますます厳しいチャレンジに直面することになる。もし石炭価格が500元/トンに上昇して高水準を維持した場合、概算では中国の火力発電のコストは1,000億元上昇することになる。

 8月24日の最新データによると、石炭産業のバロメーターとされる環渤海一般炭価格指数(BSPI)は476元/トンに上昇し、年初の371元/トンに比べ105元/トン、28.3%上昇した。そのため、石炭企業も一息つき、上場石炭企業が発表した中期業績報告を見ると、一部の石炭企業は収益を上げ始めている。特に2015年上半期に9.65億元を赤字を出した中煤能源は黒字転換を果たし、上半期は3億元の利益を上げた。

 一方、火力発電企業は憂いを強め始めた。華東地区の某火力発電所の総経理によると、火力発電企業の全コストの中で石炭が約半分以上を占め、石炭価格の上昇は火力発電所のコストに極めて大きい影響を及ぼす。発電時間数の多い火力発電所はなお持ちこたえているが、発電時間数の少ない火力発電所はすでに赤字が出ていると見られる。

 ICISの石炭産業アナリストである鄧舜氏によると、当面の石炭価格上昇のスピードは市場の予想を超えている。これは脱生産能力が関係しているとともに、今年夏の酷暑も関係している。秋の到来に伴って発電用石炭需要も鈍化するが、しかしながら、下半期には通年の脱生産能力任務の残された62%を完成させる必要があり、そのため供給側は引き続きタイトになる。このことは下半期の石炭価格を押し上げる作用を発揮し、火力発電所にとっては泣きっ面に蜂になるに違いない。

 2015年に中国で発電に使用された石炭は約18.4億トンに上り、石炭価格がトン当たり10元上昇すると、発電企業のコストは180億元増えることになる。現時点でBSPIは年初に比べ103元/トン上昇し、さらに、業界関係者の予想よると、今年末には500元/トンを超える。もし脱生産能力政策が引き続き厳格に適用されると、今後1〜2年で石炭価格は50〜100元/トン上昇する。そうなれば、火力発電企業のコストは1,000〜2,000億元増える。

 従来通りだと、売電価格を調整して発電企業の圧力を緩和する可能性があるが、今年は石炭価格が石炭と電力価格の連動のポイントにまで上昇しても、売電価格が調整されるとは限らない。中国経済は目下低迷期にあり、国は実体経済の梃入れを強化している。最近は実体経済企業のコストを引き下げる対策案を通達したが、その中で電力体制改革を推進して、企業の電力使用コストを合理的に引き下げることを打ち出している。つまり、売電価格は当面のところ調整される可能性はないと考えられる。

 ICISによると、国の関係政府部門は石炭脱生産能力推進の決心を変えることはあり得ないが、最近の石炭価格の急過ぎる上昇については、大手石炭企業を集めて会議を開き研究を進めており、もし上昇幅が余りにも大きく、在庫が低すぎる場合は、一部の生産能力を再稼働させて、価格変動を抑えることになる。下半期には石炭価格の上昇はやや鈍化するものの、上昇の基調は依然変わらないと予想される。

 (中国能源網 8月25日)