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中国
【石油・天然ガス】

【論説】製油コスト引き下げの道 (08/02/27)
2008/2/28
中国【石油・天然ガス】

 原油価格と石油製品価格の逆さや状況の中、製油企業は、原油調達コストを引き下げるとともに、製油構造を改善することで、製油コストを一定程度引き下げることが可能になる。国内の石油製品の長期安定供給を確保し、石油製品価格システムを合理化することは焦眉の急である。

 国際油価の高騰が続く状況で、中国石油化工(SINOPEC)と中国石油天然ガス(CNPC)の製油部門の2008年第1四半期における赤字は、控えめに見ても100億元を超えることになる。

 2007年末時点の中国の製油能力は約3.74億トンに上り、2007年の原油精製量は前年比6.4%増の3億2,679万トンに達した。ガソリン、灯油、軽油の生産量は1億8,209万トン、前年比7.2%増であった。赤字が拡大する中でも、SINOPECとCNPCは国内の石油製品供給を確保し、エネルギー企業として社会責任を果たしている。また、精製能力を拡大して供給を確保しつつ、製油コストを引き下げ、赤字を減らすよう努力している。

 充実する製油能力

 2007年の中国の石油製品消費量は約1億8,560億トンに上り、前年比6.4%増となった。経済成長の動向から見て、2010年には石油製品需要は2.2〜2.3億トンに達すると予想される。

 「製油工業中長期発展専門計画」に従って、CNPCとSINOPECは関連する製油プロジェクトの建設を積極的に推進している。現在の進捗度から見て、2010年頃には、広西石化の年産1,000万トン、四川石化の1,000万トンの各製油プロジェクト、独山子石化の高硫黄原油精製のための改造など次々と竣工して操業を開始し、2010年のCNPCの製油能力は2007年よりも3,000万トン多い年間1.7億トンに達する。SINOPECは、青島の1,000万トン製油プロジェクトや、福建煉化、天津石化、武漢石化等の改造プロジェクトを次々に完成させ、2010年の製油能力は、2007年よりも4,000万トン多い年間2.26億トンになる。また、中国海洋石油(CNOOC)の恵州1,200万トン製油プロジェクトも2010年までに完成する。2010年の全国の製油能力は約4.4億トンに達し、2.2〜2.3億トンの石油製品を供給できるようになる。

 原油調達コストの引き下げ

 製油所のコストの中で、原油調達コストは総コストの約90%を占める。したがって、製油所のコストを引き下げる上で、原油調達コストを削減することは最も主要な手段に当たる。現在、中国の原油供給源の約60%が国内生産、約40%が輸入である。調達コストを引き下げるには、まず国産原油の増産に着手すべきである。国内の探査と開発を拡大して、国内の原油生産量の安定的な上昇を図るのである。2007年は南堡油田の発見もあって、CNPCの原油供給能力は高まった。東部の旧油田群の生産量は低下傾向にあるが、西部、華北や海上油田の生産量は上昇段階にある。技術の向上や探査領域の拡大によって、中国の石油可採資源量はさらに増加し、今後10〜20年は1.7〜1.8億トンの水準が確保できる。

 一方、CNPC、SINOPEC、CNOOCの3大手は、海外の石油・天然ガス探査開発にも積極的に参加し、海外権益原油生産量が増えている。3大手は、資金、人材、管理能力や世界先端の油田開発能力を武器に、海外のエネルギー開発に乗り出している。

 CNPCの海外事業はすでに70件に上り、26の国や地区に広がっている。アフリカ、中東、中央アジア・ロシア、アジア太平洋、南米の5つの石油・天然ガス共同開発エリアが形成され、石油・天然ガス開発生産事業は31件になる。2007年の海外原油生産量は前年比10%増の6,023万トンに達した。権益生産量は約3,000万トンになる。海外生産の主力は年産1,000万トン超の大型油田である。うちスーダンの1/2/4鉱区の生産量は1,350万トン、スーダンの3/7鉱区が1,002万トン、カザフスタンのPK(ペトロカザフスタン)事業は1,000万トンになる。

 SINOPECは海外に74の油田鉱区を有し、石油残存可採埋蔵量は1.23億トンに上る。2007年の権益生産量は700万トンになると見られる。SINOPECは現在、イランに20億ドルを投資するよう計画している。このプロジェクトの見通しがつけば、SINOPECの海外権益原油生産量は1,000万トンの大台に乗る。

 CNOOCの海外業務は10カ国に及んでおり、探査鉱区は25ヵ所、主にアジア・太平洋、アフリカ、北米に分布している。インドネシアには5つの油田を有し、現地では最大の海上原油生産企業となっている。CNOOCが有する海外権益埋蔵量は約8億toe(石油換算トン)、総生産量は4,000万toe以上、権益生産量は580万トンに上る。

 ENIグループの調査によると、世界的に見て、軽質原油が原油総生産量の占める比率は10年前に比べ1ポイント低下し、中質原油は2ポイント低下したが、重質原油の比率は3ポイント上昇した。また、世界の原油生産量の中で、高硫黄原油が55.3%を占める。原油の重質化、低質化が進んでいることは次第に顕著になりつつある。しかし、重質原油、低質原油の精製能力が十分でない上、軽質石油製品の需要が増えているため、軽質原油と重質原油の価格差は徐々に拡大している。試算によると、その価格差が1バレル当たり4ドルを超えると、重質原油精製の経済性が高まる。したがって、製油企業は重質原油の調達と精製を最大限進めることで、原油調達コストを削減し、収益を増やすことが可能になる。

 製油構造の調整

 製油構造を調整して製油水準を高めることは製油コストを引き下げる上で重要な措置に当たる。

 第1に、製油産業の配置を改善して、輸送コストを減らす必要がある。中国の東北地区と西北地区の製油能力は過剰であるが、経済の発展している東南沿海部の製油能力は不足している。西南地区は現在製油産業が基本的に欠如している。国内の石油製品の「北油南運・西油東調」(北方の石油を南方に輸送し、西部の石油を東部に送る)という構造はすでに長きにわたっている。石油製品の輸送コストを引き下げるため、3大手は新規の製油能力を東南沿海部や西南地区に配置して、石油製品供給の安定性と信頼性を高めるととともに、石油製品輸送過程のコスト引き下げを図っている。

 第2に、製油プラントの構造と工程を高度化し、重質油の精製能力を高める。各企業は原油調達コストを下げるため、重質油の処理能力向上に着目し、残油水添処理、接触分解、ディレード・コーキング等の処理プラント建設を計画している。

 第3に、新規プラントの大規模化を実現し、製油の操業水準を高める。プラントの大型化はコスト引き下げの重要な措置である。試算によると、年産1,200万トンの製油所は600万トンの製油所に比べ、投資コストを25%節約することができ、用地や資材も減らすことができる。

 既存の企業については、先進的な技術や管理方法を適用することで、省エネと排出削減をさらに進め、生産コストを下げることができる。

 但し、以上のような措置を取ったとしても、石油製品価格の逆サヤが続く中では、製油企業は依然として収益を確保する術がない。石油製品の長期安定供給を確保するためには、石油製品価格システムの合理化が焦眉の急である。

 (中国石油石化 2月27日)