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【石炭】

2017年の中国石炭市場をめぐる4つの疑問 (17/02/22)
2017/2/22
中国【石炭】

 2月10日、国家能源局は《2017年エネルギー工作指導意見》を交付したが、この文書の中の石炭関連データには疑問が多い。

 (1) 2017年の中国の石炭生産量は2億トン増加するのか?
 《2017年エネルギー工作指導意見》は2017年の石炭生産量を36.5億トンと予測している。一方、エネルギー消費については、「全国エネルギー消費総量を44億tce(標準炭換算トン)前後に抑制し、石炭消費の比重を60%前後に引き下げる」としている。5000kcalに換算した石炭消費量は44×0.6×7000/5000=37億トンになる。全国の炭質が年々低下している傾向を勘案し、4800kcalとして試算すると、石炭消費量は44×0.6×7000/4800=38.5億トンになる。一方、2016年の全国石炭生産量は34.5億トン、消費量は39.7億トンであった。2017年の石炭生産量は2億トン増加する一方で、消費量は1億トン下がる。市場に対して大きな影響が出るのではなかろうか。

 (2) 2017年の石炭輸入は20%下がるのか?
 生産と販売のバランスをもとに試算すると、2017年の年間石炭純輸入は38.5−36.5=2億トンになり、2016年の輸入量2.5億トンに比べ20%下がる。

 (3) 過剰生産能力解消任務は80%引き下げられるのか?
 《2017年エネルギー工作指導意見》は2017年に老朽化炭鉱を500ヵ所以上閉鎖し、約5,000万トンの生産能力を退出させることを打ち出している。2015年の過剰生産能力解消任務は2.5億トンであったが、実際には3億トンの生産能力を撤去した。2017年の過剰生産能力解消任務5,000万トンは2016年に比べ80%引き下げられたとするのが大方の理解であるが、これはどうやら誤解のようである。

 過剰生産能力解消は老朽化生産能力の撤去だけでなく、経営難で黒字転換の見込みがなく、資源が枯渇し、開発エリアが特殊な保護を要する炭鉱も対象になる。また、公示生産能力を超えて生産している炭鉱や違法に建設開発を行った炭鉱も含まれる。

 5,000万トンとは平均生産能力10万トンの炭鉱500ヵ所のことであり、閉鎖の重点は15万トン以下の小炭鉱であることが分かる。2016年に閉鎖した炭鉱は1,688ヵ所、生産能力は2億5,114万トン/年であり、平均生産能力は15万トン/年になる。閉鎖した炭鉱の中で100万トン以上の大型炭鉱は少ない。

 現時点で各省と中央企業が発表した2017年の過剰生産能力解消任務を合計すると、2017年の過剰生産能力解消は2億トンに達すると予想される。

 但し、撤去する生産能力にはその他の大型炭鉱(違法建設のものも含む)の減量置換に当てられるものも多く、こうした生産能力が形を変えて供給に含まれる可能性もある。

 (4) 生産能力はどのくらいあるのか?
 特筆しなければならないのは、中国の石炭生産能力は、基準とデータがいずれも一様でないという点である。60億トンという説もあれば、57億トンという説もある。また、50億トン足らずとする説もある。これでは国の政策策定に混乱を招く。炭鉱の生産と建設秩序を規範化するためには、許認可を得ないまま先に建設したり、公告生産能力を超えて生産を行ったりするなどの違法行為に対し、取り締まりを強化しなければならない。炭鉱生産能力登録公告制度の完備については、《2017年エネルギー工作指導意》見は、登録公告の範囲を生産中の炭鉱だけでなく建設中の炭鉱にも広げ、全規格の生産能力公告を実現することを特に強調している。
 
 全規格生産能力公告の生産能力こそが供給可能な生産能力であり、この部分の生産能力こそが市場分析における有効供給能力になる。全規格生産能力の公告を待たねばならないが、50億トンを超えることはあるまい。

  (中国煤炭新聞網 2月22日)