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【石油・天然ガス】

中国の石油製品輸出 地方製油所に対する輸出権付与から1年 再び少数国有企業の独占に回帰 (17/06/20)
2017/6/20
中国【石油・天然ガス】

 商務部と税関総署は今年第3期加工貿易石油製品(ガソリン・灯油・軽油)輸出枠を通達した。輸出枠の総量は906万トンに上り、前期に比べ大幅に回復し、前年同期に比べても48.9%の大幅増になった。また、今年は一般貿易石油製品輸出も再開された。

 今年第3期の加工貿易及び一般貿易の石油製品輸出枠は合計1,500万トンに上り、前期の「緊縮」(前年同期比50%以上削減)ぶりに比べると、第3期輸出枠は市場から爆増と呼ばれている。

 2016年の石油製品輸出枠は総計4,600万トン超になり、また、実際の純輸出量は初めて3,000万トンを突破し、前の年に比べ50%以上もの増加になった。ICISの統計によると、今年第1〜3期の累計石油製品輸出枠は3,300万トンを突破しており、うち加工貿易石油製品輸出枠が2,480.5万トン、一般貿易輸出枠(2017年から追加)が822.5万トンになる。

 実際の輸出量を見ると、1〜4月の石油製品輸出は1,544万トン、前年同期比15%増加した。国内石油製品需給の大幅な緩和に加え、石油製品輸出税還付政策の推進に伴い、ICISは今年通年の石油製品輸出枠と実際の輸出量はともに過去最高を記録すると予想している。

 生産能力過剰が輸出規模を押し上げ

 ここ2年、中国の製油能力は持続的に上昇し、生産能力過剰がますます激化している。石油化学工業規画院の白頤院長は先日「第3回中国石油化学工業持続可能発展フォーラム」において、中国の現行の製油能力を7.48億トン/年として計算すると、過剰製油能力は1.38億トン/年に上ると指摘した。また、CNPC経済技術研究院の《2016年国内石油ガス産業発展報告》によると、今年末には中国の製油能力は約7.9億トンに達し、3,500万トンの純増になると予想される。

 そのため、中国の石油製品供給量はさらに増加する。金聯創の統計によると、今年1〜4月の中国の石油製品総生産量は1.16億トンに達し、前年同期比2.72%増加したが、経済成長の鈍化による制約を受けて、末端需要は頭打ちになり、1〜4月の石油製品見掛け消費量は1.05億トン、前年同期に比べわずか0.78%の増加に止まり、中でもガソリンと軽油消費の伸び率はいすれもマイナスになった。国内の石油製品市場の需給ギャップはさらに拡大して、1,101.63万トンに達した。前年同期に比べると26%の増加になり、過剰現象はますます鮮明になっている。

 ICIS中国エネルギー研究総監の李莉氏によると、商務部は、第1期と第2期に製油所のメンテナンスが集中するとともに国内の石油製品の季節的需給状況を勘案して、石油製品の輸出を引き締め、第1期と第2期の輸出枠を前年同期に比べ50%以上引き下げた。しかし、当面の市況を見る限りでは、主要企業の輸出性向は全く減退しておらず、輸出枠の増加によって国内の石油製品販売圧力を緩和することが必然の措置になった。商務部が5月中旬・下旬に合計629万トンの一般貿易輸出枠を追加発給したのもそのためである。

 李莉氏によると、主要製油所の稼動率が高止まりし、加えてCNPCの雲南石化とCNOOCの恵州製油所第2期が今年下半期に操業を開始するため、今年の通年の石油製品輸出枠と実際の輸出量はいずれも過去最高を記録する見通しである。

 CNPC経済技術研究院が依然予測したところでは、中国の2017年の石油製品純輸出は4,000万トンを突破し、前年比の伸び率は24%を超える。また、今後の中国の石油製品輸出は常態化と大規模化の特徴を呈することになる。

 仇花に終わった地方製油所の輸出

 この2年、地方製油所に対する輸入原油使用権と原油輸入権の付与によって国内製油市場は活性化した。中国の石油製品(ガソリン・灯油・軽油等)の輸出は国有石油企業が長年支配してきた。過剰生産能力を解消するため、商務部、発展改革委員会及び税関総署は2015年11月、連名で《条件に適合する製油企業の輸入原油加工と石油製品再輸出業務展開の暫定的許可関連問題に関する通達》を示達し、条件に適合する製油企業に対して石油製品輸出権を正式に付与し、2016年には石油製品輸出を地方製油企業に開放した。

 商務部の資料によると、2016年には地方製油企業12社が合計152.5万トンの石油製品輸出枠を獲得したが、石油製品輸出枠全体に占める割合はわずか3.3%であった。

 財政部は昨年11月、財税[2016]113号文書を通達し、石油製品輸出に課せられる増値税の全額還付を推進した。また、2017年には中国は一般貿易方式による石油製品輸出を再開した。これは地方製油企業にとって石油製品輸出のチャンネルになるはずであった。

 しかしながら、意外なことに、今年に入ってから第1〜3期の石油製品加工貿易輸出枠には地方製油企業は姿も影も見られず、CNPC、シノペック、CNOOC、中化集団(SINOCHEM)に限られた。一般貿易輸出枠についても、東明石化、中化弘潤も含む山東省の地方製油企業は現時点で未だ枠を獲得していない。

 つまり、地方製油企業に対する石油製品輸出の開放はわずか1年で停止になり、石油製品輸出は再び少数の国有企業の独占に戻った。

 「石油・天然ガス市場化改革の大きな背景から見ると、公平な参入を実現することは必要だ」と国家発展改革委員会国際協力センター国際エネルギー研究所の白俊副所長は言う。

 多数の専門家の一致した見方によると、現在の国内石油製品需要の軟調や製油能力の過剰状況の下では、輸出枠管理政策は中国の柔軟な石油製品輸出を制約し、製油所の経済性のある稼動率の維持や石油製品需給ギャップの面でもためにならない。

 「現代的石油・天然ガス市場システムの確立を目標にして石油貿易体制改革を進め、資源配置における市場の決定的な役割を発揮させつつ、政府のより良い役割の発揮を互いに統一することを堅持しなければならない。現段階では中国は石油製品輸出枠管理を適切に緩和し、統一的で厳正な参入条件によって、国営貿易による石油輸出入の独占を逐次打破し、国営貿易と非国営貿易が適正な競争を行う石油輸出入の構造を形成、維持しなければならない。同時に石油製品非国営貿易の輸出入品目に対する制限を適当な時機に緩和すべきだ」と白俊氏は提言する。

 (中国能源報 6月20日)