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【石油・天然ガス】

中国の自動車「脱石油」は「一刀両断」の絶対命令にあらず (17/09/29)
2017/9/29
中国【石油・天然ガス】

 中国が燃油車(エンジン車)販売禁止の日程表を策定するとの情報は石油産業と自動車産業を大きく震撼させた。「サービスステーションは倒産し、中国石油『御三家』は苦しい時代を迎え、新エネ車は爆発的に発展する」といった風説が次々に生まれている。燃油車販売禁止政策が本当に実施され、燃油車の時代が完全に終了し、新エネ車が躍り出ると、必然的に産業チェーンに連鎖反応を引き起こす。燃油車販売禁止は趨勢になるが、今のところ、立法化されているわけではなく、強制的な拘束でもなく、全て「一刀両断」の絶対命令ではない。

 燃油車の販売禁止はまずサービスステーションに直接的な衝撃を与える。

 しかし、実際にはサービスステーションと「石油御三家」は早くから単純な「油売り」に甘んじることがなくなっている。サービスステーションは単一業務の範疇を超え、インターネットを運用して総合運営業者に向けて発展しているのである。燃油車販売禁止が大きな流れになれば、サービスステーションに及ぼす衝撃は相当大きいものになるが、しかしながら、今のところ、燃油車の時代が終わると言うのは性急過ぎる。

 業界関係者が言うように、サービスステーションにとって、今後数年、給油・物販・自動車アフターサービスの総合商業へのイノベーションが打開の方向性の1つになる。サービスステーションはネットワーク化のチェーン経営に向かい、多様なエネルギー補給プランを揃え、給油と水素補給の混合モデルや充電パイルも含むサービスなどカスタマイゼーションがさらに進む。

 加えて、燃油車の販売が禁止されたとしても、それまで購入した燃油車が一夜ににして走行を禁じられるわけではない。自動車保有量の持続的増加に伴い、燃油車の絶対数は今後も相当長期にわたって増加傾向が続くに違いない。現在、石油消費の3分の1は自動車用であるが、残りの3分の2は発電所用燃料、化学原料、大型動力設備の燃料やジェット燃料等である。自動車の「脱石油」は石油が使用されなくなることを意味するわけではない。サービスステーションは「お先真っ暗」というわけではないのである。

 燃油車の販売禁止は環境保護に一定の貢献を果たすことになる。もっとも、環境保護問題を本当に解決しようとするのなら、最も重要なことはエネルギー構造を改善し、天然ガス等のクリーン・エネルギー消費の比重を高めることである。そのためには「石油御三家」の役割は欠かせない。

 我々の日常の衣食住においても石油化学品は欠くことが出来ない。さらに重要なことは。「石油御三家」も早くからクリーン・エネルギーの発展に着手し、非在来型ガス、バイオディーゼル、地熱エネルギー、バイオジェット燃料など様々な領域を手掛けていることである。足が多ければ多いほど、安定的に走ることが出来るのである。

 燃油車の販売禁止によって、エンジンは「博物館」送りになるのだろうか。業界関係者はエンジンは衰退するとしているが、実際にはエンジンが完全に取って代わられることは不可能であり、商用車が正にそうである。

 国家統計局の統計によると、中国の貨物輸送量全体の77%、旅客輸送量全体の81%が道路輸送によるものである。エンジンは燃料の多元化や燃焼効率の向上によって150年以上存続してきた。省エネ・排出削減のポテンシャルが大きいことや即効性が高いことは世界的にも公認されている。

 電気自動車の父である陳清泉氏も、燃油車は給油時間が短く、航続距離が長く、重積載や物流の領域でかけがえのない強みがあると指摘する、確かに電気自動車はエネルギー転化効率が高く、動力性能に優れるが、電池のエネルギー密度はバイオエネルギーをもはるかに下回り、航続距離には限りがある。長距離を走ろうとする場合、電池モジュールを追加しなければならず、車重が増える。急速充電であっても、数十分を要し、商用車の経済性を下げることになる。

 中国自動車工業協会の董揚常務副会長によると、コストパフォーマンスを分析したところでは、電気自動車は燃油車に追い付こうとしている段階であり、燃油車を全面的に越えるには到っていない。こうしたところから、今後数十年間は電気駆動と内燃機関の並存の段階が続く。

 さらに、電気自動車は燃油車にはない致命的な欠点がある。すなわち、航続距離が短く、製造コストが高く、充電に時間がかかる。電気自動車への全面的な転換を進めるには、充電パイル等のインフラを大規模に建設することが必要になる。電池の製造や廃棄に起因する環境汚染も処理が難しい問題になる。新エネ車が燃油車に取って代わるのは時代の流れになるにせよ、急速に進むことはない。

 新エネ車への転換を「蚕食」に例えることも出来る。転換は秩序立った漸進的なプロセスになり、しかも相当長期間持続する。短期的には中国のガソリン消費の主体的地位は動揺しないが、新しい需要の支えがない限り、ガソリン消費が徐々に縮小するのも現実になるだろう。従来型燃油車企業は正に転換を図っているが、従来型燃油の生産・販売企業も早めに対策を取る必要がある。

 新エネ車市場は未成熟であり、燃油車からの移行には極めて長い時間がかかる。政策の面から企業に代わって技術路線を選択すべきではなく、またその必要もない。最良の方法は、石油消費の上限値と炭素排出についてルールを明確にした上で、エンジンを改良するのか、それともピュアEVやハイブリッドを発展させるのか、具体的な選択は企業が自らの状況に応じて決定することである。

 (中国能源報 9月29日)