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中国
【石炭】

米国炭が25%の追加関税を課されると中国市場から退場も (18/06/18)
2018/6/18
中国【石炭】

 6月15日、米国政府は追加関税の品目リストを発表し、中国から輸入する約500億ドルの商品に25%の追加関税を課すことになった。うち約340億ドルの商品については7月6日から追加関税を適用する。

 これを受けて、中国の国務院関税税則委員会は米国原産の輸入商品659品目、約500億ドルに対し25%の関税を課すことになった。うち545品目、約340億ドルの商品に対しては7月6日から追加関税を適用する。化学品、医療機器、エネルギーなど114品目の商品については、追加関税適用時期を別途公告する。

 中国の石炭輸入先国の分析

 中国の主要な石炭輸入先はインドネシア並びにオーストラリアであり、モンゴルとロシアがこれに次ぐ。モンゴルとロシアの石炭資源は豊かであるが、中国の鉄道輸送コストが高すぎるため、対中輸出は経済性が低い。一方、オーストラリアとインドネシアの石炭は海運によって中国東南沿海部の港湾に輸送されるので、コスト面で優位を占める。そのため、東南沿海地区の発電所はインドネシアとオーストラリアから大量の発電用石炭を調達している。うちインドネシアから輸入する一般炭は基本的に褐炭であり、カロリーが相対的に低い。

 2017年の中国の石炭輸入量は2億7,112.17万トン、炭種別では一般炭の輸入量は1億8,781.36万トン、原料炭が6,989.93万トン、無煙炭が1,340.88万トンになる。輸入先上位5ヵ国は、インドネシア1億900万トン、オーストラリア8,005万トン、モンゴル3,398.84万トン、モンゴル2,807.45万トン、フィリピン554.3万トン。

 インドネシア、オーストラリア、モンゴルからの石炭輸入需要は今後とも大きく、これら諸国からの輸入炭は国内の石炭市場供給を有効に補完することになる。

 中国の米国輸入量は限定的

 中国の主要石炭輸入先はオーストラリア、インドネシア、モンゴル、ロシア、カナダ、米国等の諸国であるが、米国炭の輸入量はわずかであり、中国が米国から輸入しているのは主に原料炭である。それ以外の瀝青炭は取るに足らない。

 中国の主要な原料炭輸入先はオーストラリア、モンゴル、カナダ、ロシアであり、米国から輸入する原料炭が中国の原料炭総輸入量に占める割合は5%前後、2017年の場合、中国の原料炭総輸入量6,990万トンのうち、米国からの輸入は281.76万トンであった。

 米国の石炭は中国市場から退場も

 米国の石炭に対する関税がこれまでの3%の場合でも、米国炭のコストパフォーマンスは決して高いものではないが、追加関税が適用されると、米国炭の需要はますます低くなる。

 (1) 関税面
 中国はこれまで米国の冶金用石炭に3%の関税を課し、一方、インドネシアとオーストラリア炭はゼロ関税である。その他の瀝青炭の関税は5%であるが、インドネシアとオーストラリアはいずれもゼロである。米国から輸入する一般炭は他の関税ゼロの輸入先国に比べて優越性がない。

 (2) 輸送費
 中国が米国から輸入する石炭は運輸サイクルが長く、輸送費が高い。インドネシアから中国への輸送時間は概ね1週間であり、オーストラリアからは概ね2週間である。しかし、米国からは6週間を要する。ロシアからは0.5〜1週間である。海運費はインドネシア6ドル/トン、オーストラリア10ドル/トンに対し、米国からの海運費は30ドル/トンにも上る。

 (3) 炭質と価格
 米国の石炭の品質は相対的に低い。米国の原料炭は炭質が低く、硫黄含有分が高い。熱反応性に劣り、CSR(Coke Strength after Reaction)値は50以下、S(硫黄分)はほぼ1%である。発電用石炭の硫黄分は2%を超えている。《中国商品炭品質管理暫定弁法》第9条は北京・天津・河北及び周辺地区、長江デルタ、珠江デルタにおいて、灰分(Ad)16%以上、硫黄分(St,d)1%以上の民生用(分散燃焼)石炭の販売と使用を制限しており、このことは輸入に対しても大きな制約になる。加えて、米国の石炭価格は高く、インドネシアとオーストラリア炭の発電用石炭価格が700〜800元/トン前後であるのに対し、米国炭は30ドル/トンの海運費に新たな追加関税も加算されると、港湾価格は1,000元/トンを超える。

 総じて言えば、米国炭はもともと中国の石炭輸入総量の中でシェアは極めて小さく、コストパーフォーマンスは高くない。追加関税が課されると総合コストはますます高くなり、中国の他の輸入先国の一般炭及び原料炭との価格差が広がる。加えて、輸送時間が長いことや炭質が劣ることもあり、米国炭に追加関税が適用されると、米国炭は中国市場から徐々に退場すると予想される。

 (易煤 6月18日)