国連事務総長・潘基文は、「中国がダルフール問題において発揮している役割には非常に満足している」と述べたが、しかし、米下院は6月6日、「ダルフール問題対中国決議案」を採択し、中国がスーダンのダルフールにおける破壊活動を擁護しているとして非難した。この決議は、ダルフール問題を北京オリンピックとリンクさせようと企図しているものでもある。すなわち、西側の一部の国は2008年のオリンピックの政治化を進め、中国の外交空間を圧迫しようとしているのである。 ダルフール問題の由来 ダルフールはスーダン西部にあり、アフリカの中央部に位置する。スーダンの国土の5分の1を占め、人口約600万、多部族・多文化を特徴とする。ダルフールでは古くから部族間の土地問題が政治の中心問題であったが、この数年は、生態や人口の変化が部族間の関係に大きな影響を与えた。すなわち、70年代から80年代にかけての旱魃と砂漠化によって、農民と遊牧民の関係が悪化し、乏しい資源をめぐって争奪戦が激化した。2003年、ダルフール地区の黒人グループは、解放や正義、平等を求めて反政府運動を組織し、政府が土着の黒人の権利を保護できないことを理由に自治を求めたが、やがて運動は反政府武装活動に発展した。各武装グループは政府軍のみならず、現地の一般市民に対して襲撃、略奪を行い、多くの死傷者が出た。さらに、アラブ系部族間の衝突も含め、部族間の衝突が多発し、状況は錯綜を極めることになった。 国連の統計によると、2003年の時点で100万人が避難民になったとされるが、西側諸国のメディアは内情を把握していないにも関わらず、ダルフール問題を人権侵害の象徴として喧伝した。 中国とスーダン 中国とスーダンの関係は、中華人民共和国建国以降の対アフリカ援助活動の一環であったが、90年代中期になって、両国の経済協力は密接になり、政治面の友好交流も推進された。 スーダンのインフラは脆弱であり、技術や資金の深刻な欠乏に悩まされていた。そのため、石油も含め多くの資源の開発が遅れ、そのことがまた貧困と内部衝突を激化させた。スーダン政府の要請を受け、中国企業は、1995年以降、スーダンに対する投資を拡大、インフラ建設投資を強化し、750kmに及ぶ送油パイプラインを敷設し、スーダン港に30万トン級タンカーが接岸できるターミナルを建設しただけでなく、自動車道路や一般市民の生活に密着したインフラも整備した。また、多数の技術要員を派遣して、スーダンの農業生産や鉱業開発を援助した。こうした措置は短期間で大きな効果を上げ、スーダン並びにダルフール地区の人民に多くの雇用をもたらすとともに、現地住民の生活環境を大幅に改善した。 中国政府は政府レベルにおいても出来る限りの援助を行い、スーダン人民から歓迎された。特筆すべき点は、中国政府や企業が提供する援助にはいかなる政治条件も付帯せず、完全に平等互恵と領土・主権の相互尊重に立脚したものであるということである。国際社会においても、中国はスーダンの独立と主権を擁護することに努めており、このことはダルフール問題への対処の面でも顕著である。中国は、スーダンの封じ込めや、スーダン政府の承認のないまま国連平和維持軍がダルフール地区に入ることには反対し、武力ではなく政治的方法による問題解決を主張してきた。 中国が人権を無視していると言うのか? 下心のある西側の国やメディアは、中国がダルフールにおけるスーダンの人権破壊活動を擁護しているとして非難し、さらに、オリンピックの平和精神に悖るとして、国際社会に対し北京オリンピックのボイコットを呼びかけ、中国政府に圧力を加えようとしている。 しかし、中国はダルフールの人権を破壊しているわけでは決してない。スーダンからの独立を求める反政府組織は、スーダン政府を絶えず挑発するだけでなく、現地の一般市民の財産を略奪して、市民に極めて大きな苦痛をもたらしている。スーダン政府がダルフールの主権統一を維持するために反政府勢力の挑発に対処するのは主権国家としての内部行為である。中国は一貫して他国の領土と主権を尊重するよう主張しており、スーダンの内政に干渉したことはなく、スーダン政府と人民の選択を尊重してきた。中国政府のスーダンにおける援助活動はもとより、中国企業の経済活動においても現地の法規を厳格に遵守しており、現地の人権を破壊するいかなる活動も行ったことはない。 それどころか、中国の政府と企業の活動は、ダルフール地区の人権保護対策を効果的に促進しているのである。人権とは何よりも生存権と発展権であり、中国の政府と企業は現地の経済発展と生存権の面で大きな役割を発揮している。今年2月、中国政府は同地区に4,000万元に相当する物資援助を行った。その他にも北ダルフール州の大型ダム建設事業に約3,000万ドルを投資した。今後も同地区に対してもっと多くの援助を提供することになる。 中国はダルフールの人権を破壊するどころか、同地区の人権を保護し促進するために、最大限の努力を払っているのである。 オリンピックとダルフール問題 オリンピックとダルフールには何の関係もない。ただ、2008年のオリンピックの開催国が、ますます繁栄に向かっている最大の発展途上国・中国であるということが、問題視されているのである。 オリンピックはその誕生以来、政治闘争から常に距離を置くことで高潔を保ってきた。オリンピックを政治化する企図はいかなるものであれ、オリンピック精神を汚し、全世界の人民から唾棄されるだろう。オリンピックの開催国に中国が選ばれたのは、この国と人々が常に自我を超越しようと努力し、常に向上する気持ちを持っているからである。中国がオリンピックを選んだのは、オリンピックという絶好の舞台で中国人民の熱情と友好を表現できるからである。 背後にある深層の要因 アメリカはオリンピックを利用して中国に圧力を加えようとしている。なぜなら、アメリカはダルフール及びアフリカに巨大な戦略的利益を有しているからである。 外交レベルで見ると、アメリカはこの数年、欧州、中東、東アジアに勢力を注ぎこみ、アフリカを顧みる余裕はなかった。そのため、アフリカにおけるアメリカの地位はますます低下することになった。それとは対照的に、中国はスーダンなどアフリカ地区への援助に力を入れ、アフリカの発展に参与して、極めて大きな成果を上げた。とりわけ、中国の技術援助により大量の石油資源が発見された。こうした力の逆転はアメリカの世界戦略にとって巨大な挑戦であり、アメリカにとっては決して座視できないものである。そこで、アフリカのダルフール問題と2008年の北京オリンピックを強引にこじつけて、中国の同地区における影響力に圧迫を加えようとしたのである。 アメリカのこうしたやり方は国内政治の産物でもある。大統領選挙のたびに、中国問題批判は有効な得票のタネになる。2008年の大統領選が近づき、候補者は中国の人権問題とやらを探し出している。しかし、これまで中国人権問題に非難を加えたものの、いずれも根拠に乏しく、最終的には国際社会からの笑いものになるのが常であった。2008年はちょうど北京オリンピックの年に当たり、この機会にオリンピックを俎上にして、中国のいわゆる人権問題を非難しているに過ぎない。 アメリカの中国人権問題に対する非難は、実際には政治カードであり、目的を帯びたものである。つまり、中国のいわゆるダルフール人権干渉問題とオリンピックとをリンクさせ、オリンピックと人権問題を口実に、アフリカにおける中国の影響力を圧殺することができると考えているのである。 中国は経済発展に伴い、人権の面でも目覚しい進歩を遂げた。中国は自国の人権面での成果を固めるだけでなく、他国の人権領域における発展の現状を尊重する必要がある。とりわけ、発展から取り残された地区の人民が、生存と発展の質を高めることができるよう援助しなければならない。2008年のオリンピック開催地に北京が選ばれたのは、中国社会の発展と進歩が国際社会から公認されたからに他ならない。オリンピックに名を借りて中国の人権の進歩を否定するような言論は、国際社会からの支持を到底得られないのである。 (中国青年雑誌 8月20日) 編集者注記:このページは中国の代表的又は個別的な論説を紹介したものであり、エイジアム研究所の見解を表明するものではありません
国連事務総長・潘基文は、「中国がダルフール問題において発揮している役割には非常に満足している」と述べたが、しかし、米下院は6月6日、「ダルフール問題対中国決議案」を採択し、中国がスーダンのダルフールにおける破壊活動を擁護しているとして非難した。この決議は、ダルフール問題を北京オリンピックとリンクさせようと企図しているものでもある。すなわち、西側の一部の国は2008年のオリンピックの政治化を進め、中国の外交空間を圧迫しようとしているのである。
ダルフール問題の由来
ダルフールはスーダン西部にあり、アフリカの中央部に位置する。スーダンの国土の5分の1を占め、人口約600万、多部族・多文化を特徴とする。ダルフールでは古くから部族間の土地問題が政治の中心問題であったが、この数年は、生態や人口の変化が部族間の関係に大きな影響を与えた。すなわち、70年代から80年代にかけての旱魃と砂漠化によって、農民と遊牧民の関係が悪化し、乏しい資源をめぐって争奪戦が激化した。2003年、ダルフール地区の黒人グループは、解放や正義、平等を求めて反政府運動を組織し、政府が土着の黒人の権利を保護できないことを理由に自治を求めたが、やがて運動は反政府武装活動に発展した。各武装グループは政府軍のみならず、現地の一般市民に対して襲撃、略奪を行い、多くの死傷者が出た。さらに、アラブ系部族間の衝突も含め、部族間の衝突が多発し、状況は錯綜を極めることになった。
国連の統計によると、2003年の時点で100万人が避難民になったとされるが、西側諸国のメディアは内情を把握していないにも関わらず、ダルフール問題を人権侵害の象徴として喧伝した。
中国とスーダン
中国とスーダンの関係は、中華人民共和国建国以降の対アフリカ援助活動の一環であったが、90年代中期になって、両国の経済協力は密接になり、政治面の友好交流も推進された。
スーダンのインフラは脆弱であり、技術や資金の深刻な欠乏に悩まされていた。そのため、石油も含め多くの資源の開発が遅れ、そのことがまた貧困と内部衝突を激化させた。スーダン政府の要請を受け、中国企業は、1995年以降、スーダンに対する投資を拡大、インフラ建設投資を強化し、750kmに及ぶ送油パイプラインを敷設し、スーダン港に30万トン級タンカーが接岸できるターミナルを建設しただけでなく、自動車道路や一般市民の生活に密着したインフラも整備した。また、多数の技術要員を派遣して、スーダンの農業生産や鉱業開発を援助した。こうした措置は短期間で大きな効果を上げ、スーダン並びにダルフール地区の人民に多くの雇用をもたらすとともに、現地住民の生活環境を大幅に改善した。
中国政府は政府レベルにおいても出来る限りの援助を行い、スーダン人民から歓迎された。特筆すべき点は、中国政府や企業が提供する援助にはいかなる政治条件も付帯せず、完全に平等互恵と領土・主権の相互尊重に立脚したものであるということである。国際社会においても、中国はスーダンの独立と主権を擁護することに努めており、このことはダルフール問題への対処の面でも顕著である。中国は、スーダンの封じ込めや、スーダン政府の承認のないまま国連平和維持軍がダルフール地区に入ることには反対し、武力ではなく政治的方法による問題解決を主張してきた。
中国が人権を無視していると言うのか?
下心のある西側の国やメディアは、中国がダルフールにおけるスーダンの人権破壊活動を擁護しているとして非難し、さらに、オリンピックの平和精神に悖るとして、国際社会に対し北京オリンピックのボイコットを呼びかけ、中国政府に圧力を加えようとしている。
しかし、中国はダルフールの人権を破壊しているわけでは決してない。スーダンからの独立を求める反政府組織は、スーダン政府を絶えず挑発するだけでなく、現地の一般市民の財産を略奪して、市民に極めて大きな苦痛をもたらしている。スーダン政府がダルフールの主権統一を維持するために反政府勢力の挑発に対処するのは主権国家としての内部行為である。中国は一貫して他国の領土と主権を尊重するよう主張しており、スーダンの内政に干渉したことはなく、スーダン政府と人民の選択を尊重してきた。中国政府のスーダンにおける援助活動はもとより、中国企業の経済活動においても現地の法規を厳格に遵守しており、現地の人権を破壊するいかなる活動も行ったことはない。
それどころか、中国の政府と企業の活動は、ダルフール地区の人権保護対策を効果的に促進しているのである。人権とは何よりも生存権と発展権であり、中国の政府と企業は現地の経済発展と生存権の面で大きな役割を発揮している。今年2月、中国政府は同地区に4,000万元に相当する物資援助を行った。その他にも北ダルフール州の大型ダム建設事業に約3,000万ドルを投資した。今後も同地区に対してもっと多くの援助を提供することになる。
中国はダルフールの人権を破壊するどころか、同地区の人権を保護し促進するために、最大限の努力を払っているのである。
オリンピックとダルフール問題
オリンピックとダルフールには何の関係もない。ただ、2008年のオリンピックの開催国が、ますます繁栄に向かっている最大の発展途上国・中国であるということが、問題視されているのである。
オリンピックはその誕生以来、政治闘争から常に距離を置くことで高潔を保ってきた。オリンピックを政治化する企図はいかなるものであれ、オリンピック精神を汚し、全世界の人民から唾棄されるだろう。オリンピックの開催国に中国が選ばれたのは、この国と人々が常に自我を超越しようと努力し、常に向上する気持ちを持っているからである。中国がオリンピックを選んだのは、オリンピックという絶好の舞台で中国人民の熱情と友好を表現できるからである。
背後にある深層の要因
アメリカはオリンピックを利用して中国に圧力を加えようとしている。なぜなら、アメリカはダルフール及びアフリカに巨大な戦略的利益を有しているからである。
外交レベルで見ると、アメリカはこの数年、欧州、中東、東アジアに勢力を注ぎこみ、アフリカを顧みる余裕はなかった。そのため、アフリカにおけるアメリカの地位はますます低下することになった。それとは対照的に、中国はスーダンなどアフリカ地区への援助に力を入れ、アフリカの発展に参与して、極めて大きな成果を上げた。とりわけ、中国の技術援助により大量の石油資源が発見された。こうした力の逆転はアメリカの世界戦略にとって巨大な挑戦であり、アメリカにとっては決して座視できないものである。そこで、アフリカのダルフール問題と2008年の北京オリンピックを強引にこじつけて、中国の同地区における影響力に圧迫を加えようとしたのである。
アメリカのこうしたやり方は国内政治の産物でもある。大統領選挙のたびに、中国問題批判は有効な得票のタネになる。2008年の大統領選が近づき、候補者は中国の人権問題とやらを探し出している。しかし、これまで中国人権問題に非難を加えたものの、いずれも根拠に乏しく、最終的には国際社会からの笑いものになるのが常であった。2008年はちょうど北京オリンピックの年に当たり、この機会にオリンピックを俎上にして、中国のいわゆる人権問題を非難しているに過ぎない。
アメリカの中国人権問題に対する非難は、実際には政治カードであり、目的を帯びたものである。つまり、中国のいわゆるダルフール人権干渉問題とオリンピックとをリンクさせ、オリンピックと人権問題を口実に、アフリカにおける中国の影響力を圧殺することができると考えているのである。
中国は経済発展に伴い、人権の面でも目覚しい進歩を遂げた。中国は自国の人権面での成果を固めるだけでなく、他国の人権領域における発展の現状を尊重する必要がある。とりわけ、発展から取り残された地区の人民が、生存と発展の質を高めることができるよう援助しなければならない。2008年のオリンピック開催地に北京が選ばれたのは、中国社会の発展と進歩が国際社会から公認されたからに他ならない。オリンピックに名を借りて中国の人権の進歩を否定するような言論は、国際社会からの支持を到底得られないのである。
(中国青年雑誌 8月20日)
編集者注記:このページは中国の代表的又は個別的な論説を紹介したものであり、エイジアム研究所の見解を表明するものではありません